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初めてのおつか…捜査 2

 皆がちゃんと絵を見て、熟考してからの「知らない」であればあればまだしも、絵を出された瞬間わざと目を逸らしてんじゃないか? と思うくらい愛想が無い。

「警戒、されてるかな?」

「え~、あたしたちってそんな怪しそうな顔してんのかな~?」

「当然だけど、おれたちって異世界(ここ)じゃ全くの新参者だし、しかもこの界隈に来るのも初めてだし……」

日本(あたしたち)と一緒にしちゃダメ、か~……じゃあ、この先どう動くか、よね? シオンさんにでもこの辺の流儀、聞きに行く?」

「あまり他人(ひと)に頼ってばかりなのもなぁ。この街で生きていくって決めたからには、おれたちはもっとここの空気を吸い込まなきゃいけないよな」

「何か、いい方法でも~?」

 言われるまでも無く、光一は今、自分の記憶を総動員していた。

 それはたかだか18年分程度の記憶でしかないが、なんとかこの状況に合った方法、またはヒントのようなモノを見つけたい。そんな感じで足し無い経験・記憶を思いっきり(まさぐ)って最適解を模索する。

「……試してみよう。由美、あの果物屋でオレンジ買ってくれよ。金はおれが出すからさ」

「なによ? お腹空いたんなら果物じゃなくて……ん?」

「やってみる」

「ん? ん~?」

 光一からの提案。最初はよく飲みこめない由美だったが、

「おっけー、わかったわ」

光一の顔つきからして何らかの思惑があるのだろうと感じ、乗ってみる事にした。

「おばちゃーん、このオレンジ二個おねが~い」

 目標の青果店で由美が、お胸よりお腹が前に出ている、文字通り恰幅の良いおかみさんに注文。

「はい、まいど~。銅貨二枚ね~」

 右手で二個纏めて差し出すおかみさん。

 光一は彼女の左手に、銅貨二枚と()()()()()を乗せた。

「?」

 多すぎる払いにキョトンとするおかみさん。同時に例の似顔絵がさりげなく差し出される。

「この娘、最近この辺りで見なかったかな?」

 代金に、プラス小銀貨一枚の意味を理解したおかみさんはちょいと訝し気な目線を光一にくれた後、改めて似顔絵を覗いてみた。

「あら、上手な絵。狐っ子? かわいいコねぇ。だいたい狐族は目があんたみたいにキツめが多いんだけど、この娘は柔らかいね」

 ――おばさん、周りから「一言多い」って言われてねぇか?

 と、喉まで出た言葉を飲み込みつつ、光一は初めて応じてくれたおかみさんの返答を待った。

 当てずっぽうに近い、思いつきの「袖の下戦法」が功を奏しそうなのだ。私情・感情は押えねば。

「う~ん、見かけないねぇ。狐族はここいらでも見るけど、これくらい器量よしなら話題に昇りそうなもんだけど……悪いね、知らないよ」

「そっかぁ……」

「でもヒト族(ヒューマン)のあんたらが、なんでまた狐っ子を?」

「ん? うんまあ、ちょいと頼まれごとでね、当てが外れたかな? キュウビィから流れてきたはずだから、ここに居るかと……」

「ワケ有りかい? かわいい子だし若いしねぇ、ん~」

 おかみさんはちょいと考えると、目だけを動かして周りを警戒。そして、

「あまり言いたくはないけど……」

声量を小声に切り替えてボソッと。

()()()系の連中絡みなら西のザーラ・ファミリーの方が可能性高いよ? ここいらのドミノ親分は子供に()()はやらせないからね」

 と銀貨分の情報はくれるおかみさん。軽くウィンク。

「ありがとおばさん。じゃ、このリンゴも貰っておくわね」

 そう言うと由美はリンゴ一個を掴んで、おかみさんに銅貨二枚を渡した。光一のやり方が飲みこめたので、自分も一丁噛みしてみる。

「まいど! またいつでもおいでよ!」

 おかみさんは思いっきり上機嫌に光一と由美を見送った。

 二人は手を振ってそれに応え、その場を離れた。


「う~。な、なんか緊張って言うかドキドキッて言うか。テンション上がったわ~」

「ああ。映画や小説のシチュ思い出してさ。物は試しでやってみたんだけど」

 通りから外れた小路で、初めて情報を引き出すことに成功した光一と由美の胸内は高揚していた。

 ミステリーやサスペンス物など、いわゆる情報屋やら情報通から有料(袖の下)で情報を得るのは定番の演出だが、実際にそんな手段を使うなど、当然の事ながら光一は初めてであった。

 平蔵あたりだと営業職でもあり、そう言った贈収賄的方法や逆に取引先担当から密かに「裏金(リベート)を作ってくれ」と頼まれることも珍しくは無い。

 もしも光一らにバイト等の経験があったとしても、そう言った腹芸やウラ工作とは果たして縁が有ったろうか?

 そんな二人にとって、ぶっつけ本番ではあった手法だったが思いのほか上首尾に事が運び、光一としてもちょいと毛色の変わった高揚感に浸っていた。

「ヘイさんやリョウさんの言ってた通り、ここで店構える人たちって結構カツカツでやってんだろうな。馴染みはともかく、おれたちみたいな新顔に情報を流すにはそれなりの体裁が必要だし、商売として成り立つなら話すのもやぶさかじゃない、ってぇコトなんだろう」

「それにファミリーだの親分さんだの言ってたもんね~。ここらの人って反社の連中と距離が近いのかしら?」

「地回りとか言うんだっけ? だから地元の情報を新参や余所者に流すのには、商売としての建前が必要になるのかな?」

「その辺も慣れなきゃいけないのかな? テレビの少年探偵団の様に気軽には行かないわよね~」

 さっき得られた情報は、現段階ではそれほど重度な価値を持つものでは無かった。

 ただ光一としては、懸命に頭を巡らせて出した策が功を奏したことで、ちょいと窓が開いた気がして嬉しかったのだ。その辺は由美も同様であった。

 初めて千円・二千円の申告漏れを見つけて喜ぶ新米税務署員レベルの実績であろうと、その積み重ねがやがて自信となっていく。

 とりあえず今回の手法・結果がベースになり「新たに西側の街も調べてみよう」となる訳で、首尾よく手に入れたきっかけで新しく道が開く――ゲームで行き詰まり、眠い目を擦りながらようやくフラグを立てて突破し、新展開に突入するが如き達成感を感じざるを得なかった。

 とは言うものの、

「おい、そこの二人!」

新しい展開には今まで無かった有象無象が湧いてくるのも定番である。

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