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蠢くタンテイ 3

 王都ほどでは無いが、この町の表通りも、それなりの人が行きかっていた。

 そんな中、真鈴は裏道に入る道角に置かれた木箱に腰かけて、帳面に魔導国軍のソネット中尉向けに送るBL本のネームを描いていた。


 既に15~6頁の作を2本届けているが(いず)れも好評らしく、2本目に添付された感想はソネット以外にも書き込まれており、真鈴の頬をほっこり緩めることになった。

 日本では同人サークルで活動していた彼女にとって、自分の作品を楽しんでくれている人がいるというのは何より嬉しい事であった。

 まだまだヒヨッコである真鈴にとって、例えばストーリーにしてもオリジナルが中々創作できず、似通った模倣的なモノやパロなどに走ってしまい、それが指摘されるとヘコんでしまったりしていたのだが、ここではその辺りを気にする必要は無い。

 パクりであろうが盗作だろうが文句を言う者はいない。自分の絵柄に合わせてのリメイク、アレンジ、なんでもやりたいようにやればいいワケで、真鈴の頭の中はこれからの構想が渦を巻いて飛び交っていた。

 そう言った二次創作も楽しいが、出来れば自分ならではのオリジナルもいつか描いてみたいとも思う。それでより多くの読者に楽しんでほしい。こちらの世界でもそんな夢が追えそうだと、二度と日本の家族や友人・知人らと会えない未練を引き摺っていた真鈴はこの世界で生きていくことに光明すら感じるくらいだった。機会をくれたソネットにはホント感謝である。


 とは言え、やはり今の自分はアーリウム探偵事務所に籍を置く探偵の一員だ。

 こちらが本業。趣味は趣味だからこそ自由気ままに、自分らしさで楽しむことが出る訳であるし、と。

 当初は使い道がないと判定された特殊スキル毒探知。だがこの稼業に於いてはそれによる人命救助や、それを応用した今回の様な検査・検死など、その方面で役に立てられるというのも同様に嬉しく思う真鈴である。


 スス……ススス……

 傍らに畳んでおいたチュニックやズボンが動き出した。

 真鈴は通りの人眼から、それを遮るような位置に自分の身体をずらした。小さい身体ではあるが、通行人が着眼するほどの動きは遮断出来ている。

 自然に(いや、むしろ不自然)動き出した衣類は、やがて人の形を作り、何者かがしゃがんでいる様相となった。そして、

「おかえりなさい……」

真鈴が言うと、

「お、ただいま」

光一は自分の魔法能力、透過を解いた。


「どう、だった?」

「残念だけど、これは! てな決定的な話は聞けなかったな。連中の警戒心もなかなかでさ。いつも誰かに聞かれているかも、見られてるかも? って姿勢は崩さなかったよ」


 良介からの連絡を受け、ヘンリーの後継である倉庫支配人コルシが現れたのを確認するや、光一は透過を発動させ、姿・気配を消して後を付け、彼奴と一緒に事務所に侵入したのであった。

 思惑通り、コルシにしろキリオにしろ、光一の存在には全く気付かずに話を進めていた。


「でも全く空振りでも無かった。明日入って来る荷物は、どうやらヘンリーさんの一件にも関係が有りそうな話をしていたからな」

「関係……?」

「ああ、その荷の入庫は元々、ヘンリーさんの生前に行われる予定だったみたいでさ。しかも今回、支店長が直々に出向いて調整してたらしいんだ」

「じゃあ……リョウさんたちと、合流して……この先の……」

「ああ」


 二人は立ち上がると、事務所側の目を憚るように裏路地側から回り込んで、これからを良介たちと相談するべく宿屋に向かった。




 コルシやキリオがそうであったように、光一や由美らもまた、壁の耳や障子(は無いか?)の目を気を付けねばならないだろう。コルシらに顔が割れている由美や良介は、ぼちぼち尾行が付けられていてもおかしくない状況になりつつある。他の場所でヘンリーの評判や普段の言動を聞き込んでいた光一や真鈴とて同様だろう。

 もっともそうなれば、ドレン商会のクロ度はどんどん上がるわけだが。


(予想は出来てたけど……キナ臭くなって来たねぇ)


 食堂での食事中の会話は、食や町の物産を話題にした雑談程度に押さえた。

 本番は、宿の部屋に入ってから。王都の平蔵もフォン経由で参加して、これまでの情報の検討、そしてこれからの指針を決めるべく全員での合議が開かれていた。


「自殺が偽装されたのは確定さ。で、だれが何の目的で偽装したのか……てか、なぜ偽装しなければならなかったのか? て事だよな」

「誰か、てのはドレン商会で決まりだと思うけど~」

「新支配人や副支店長の反応からして、由美さんの言う通りだと思うっす。本店ぐるみか、ラマント支店だけなのかは、今のところ不明っすね」

「マズい事、を……知った、ヘンリーさん……口封じ……」

(そのセンが濃厚だねぇ。しかしながら……)

「動機……よね~」

「ヘンリーさんを消さなけりゃいけないほどの理由。倉庫支配人辺りでは知ってはいけない事を知った?」

「それを警吏とかに告発しようとした……そんなところじゃないっすか? 単なる自殺なら人間関係のトラブルや不倫も有り得るっすけど」


(一緒に亡くなった、ルーチェさんだっけ? 実際、彼女とヘンリーはどんな関係だったんだろ?)

「聞き込んだら、彼女……倉庫事務所での、事務・雑務係……みたい」

「不倫に関しては、近所や行きつけの酒場とか、その辺の話では"意外に思った”って声が多かったよ。ヴィータさんとは鴛鴦夫婦で通っていたみたいでね。でもまあ、同じ職場だと不倫じゃなくてもコイバナは良くある話だし、オバサン連中は『魔が刺したかも~』とか噂してるね」

(なるほど。で、いい仲になったって説も信じられちゃったかな? 腐るほど有りがちな話だもんねぇ)


 なにせ、探偵事務所の仕事の半分以上が、その手の調査だし?


「明日入荷される荷物ってのが、キーになりそうっすね。ヘンリーさん事件で計画がズレたってのは副支店長らが言ってましたっし」

(調べてみるか……フォンくん?)

(おうよ)

()()はラマントに着いたかい?)

(夕暮れ前には到着したぞ。近くに龍脈が届いとって助かったわ。あそこ通れば魔力の消耗が極端に減るでの)

「楽そうね~、ほとんどテレポートじゃん?」

(そう気軽なもんでもないわ、全ては魔力次第だからの。魔素の薄いところで枯渇でもしたら、お主らに念話も送れず魔力が貯まるまで身動き取れんくなるでな)

(じゃあ、現地で憑依使えるね? リョウくん、倉庫の夜間の警備は?)

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