表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/9

残されたもの

教室は、妙に静かだった。


誰も、結城のことを口にしない。


机は、そのまま残っているのに。

椅子も、昨日と同じ場所にあるのに。


そこだけ、空気が違った。


ぽっかりと、穴が空いたみたいに。


視線を向けるやつもいない。


気づいていないふりをしているのか。

それとも、本当にどうでもいいのか。


分からない。


ただ——


「……」


教師は、何も言わなかった。


いつも通りに授業を始めて、

いつも通りに黒板に字を書く。


その背中が、少しだけ固く見えた。


チョークの音だけが、教室に響く。


カツ、カツ、と。


やけに大きく聞こえた。


言えばよかったのかもしれない。


あの時、もう少し。


違う言葉を選べていたら。


そんな考えが、頭をよぎる。


でも——


もう、遅い。


ふと、結城の机に目がいく。


中は、空だった。


ノートも、何もかも。


昨日まで、そこにあったはずなのに。


まるで最初から、何もなかったみたいに。


胸の奥が、わずかに軋む。


ふと、黒板の端に目がいく。


消しきれていない白い跡。


昨日の授業の名残か、

それとも、もっと前のものか。


分からない。


ただ、その場所だけが気になった。


『誰かを、見捨てるな』


気づけば浮かんでいた。


書かれていたわけでもないのに。


手が、止まる。


ほんの一瞬だけ。


けれどすぐに、何事もなかったように動き出す。


授業は進む。


時間も、進む。


何も変わらないみたいに。


それでも——


何かが、確実に変わってしまっていた。


結城の席だけが、

ぽっかりと空いたままだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ