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達成率999%のゲームに転生した俺の選択が、シナリオを崩壊させていく 〜攻略者の因果律〜  作者: 波動犬
転生と出会い

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第6話 位階

「リツ。座れ」

 

朝起きて、一階に降りると、ダリオが椅子に腰掛けて待っていた。

促されるまま向かいに座ると、ダリオはおもむろに口を開いた。

 

「ったく……ルアから聞いたぞ。

あいつと探索者(シーカー)仲間として一緒に動いて、バーサーカー化の解除も目指すつもりだった、ってことだろう。

まったく、紛らわしい言い方しやがって」

 

(……それ、俺のせいなのか。脳筋め)

 

「まあいい。まず、状況を三つ、整理しておくぞ」

 

ダリオが、太い指を一本ずつ立てながら続ける。

 

「一つ目。俺はもともと、リオネス王国の騎士だ。実はそこそこ強い。

バーサーカー化のことも、その治し方も知っている。

ただし、俺自身は、この村を長く離れられん。

……妻が、腹に子を宿しててな。どうにかしてやりたいが、そばを離れるわけにいかんのだ」

 

「二つ目。ルアには『静定石』っていう、感情の昂りを抑える道具を持たせてある。

バーサーカー化は、感情が昂ぶったときに起きる。

この石が鎮めているうちは、引き金が引かれることはない。だから当面、心配はいらん」

 

「三つ目。ルアは、もともと探索者になるつもりだった。

五年くらい前かな、魔女のバアさんに連れられて、この村に来たんだ。

村に住みながら、定期的にバアさんのところで魔法の基礎を習ってな。

今年十六になったら村を出る、って約束になっていた。

だから、お前の申し出は、ルアにとっても悪い話じゃない」

 

そこで一度言葉を切り、ダリオは表情を引き締めた。

 

「ただ——すぐに二人でリオネス王国へ向かうのは、認められん。

第一位階を超えるまでの死亡率は、五割を超えるからだ」

 

五割。

ただの数字じゃない。二人に一人が死ぬという、現実の確率だ。

 

「そこで、だ。第一位階を超えるまでは、俺が修行をつけてやる。どうだ?」

 

「ありがとうございます。ぜひ、お願いします。

……ただ、すみません。位階というのは、何ですか?」

 

ダリオが、軽く眉をひそめた。

 

「探索者を目指してるってのに、位階も知らんのか……。強さの、おおまかな基準だ。

これを上げると——なんと言うか、一気に強くなれる幅が広がる。

だが、ただ魔獣を倒すだけじゃ上がらん。何らかの困難を乗り越える必要がある。

これを『段超え試練(ディグニタス)』と言う」

 

「もしかして、第一位階の段超え試練は、魔窟をひとつクリアすることですか?」

 

「そうだ。……知ってるじゃないか」

 

ダリオが、少し意外そうな顔をした。

 

「低い位階は、決まった試練さえクリアすれば超えられる。第一位階なら、魔窟をひとつ攻略すればいい。

そして、もっと高い位階になると、決まった試練じゃなく——『心臓の音(エクシード)』と呼ばれる、その者ごとの転機ってやつを迎えなきゃならんがな」

 

(……なるほど。これはゲームシステムだ。

レベル十ごとに段超え試練や心臓の音を越えないと、それ以上のレベルに上がれなかった。

つまりレベル十を第一位階って呼んでるってことか)

 

「……わかりました。ちなみに、それって——レベル、とは言わないんですか?」

 

「レベル? なんだ、それは」

 

「ええと……強さを測る、指標みたいなもので……。ウィンドウって、開けますか?」

 

「ウイン堂……? なんだそりゃ。なにかの店か?」

 

「……あ、いえ。なんでもないです。私の村では、位階のことを違う名前で呼んでいたのかもしれません」

 

どうやら、レベルもウィンドウも、この世界の住人の概念には存在しないらしい。

ステータスボードを覗けて、システムにアクセスできるのは——どうやら、自分だけ。

だからこの世界の住人にレベルという概念はなく、代わりに位階で強さを測っている。

そういうことなのだろう。

 

「む……。リツは、言葉が下手なのか?」

 

「ははは……。遠い田舎の出身だからですかね」

 

脳筋マンに頭の出来を心配されるのは業腹だったが、おくびにも出さず、適当にごまかしておいた。

 

「まあいい。ヴルドを倒す前に矢を当てたんだろう? 本来なら、もっと成長を実感できるはずなんだがな。

第一位階に上がらん限り、お前たちはそれ以上、強くなる実感は得られづらいし、スキルなども覚えるのに苦労する」

 

ステータスボードの表示は、「Lv:9」。

中位魔獣のヴルドに矢を当て、ルアがとどめを刺した。その経験は二人で分け合われる。

おかげで、いきなり九まで跳ね上がっていた。

だが——第一位階に上がるための魔窟攻略、つまり段超え試練を越えない限り、これ以上は上がらない。成長は、ここで頭打ちになる。

 

ゲームの正規ルートでは、ダリオから餞別を受け取ってしまうと、リツはいったん単身で王都を目指すことになる。

そして、どうにか王都にたどり着いた後に、改めてルアと再会する——それが本来の流れだ。

つまり、レベルが上がらないまま、たった一人であの道中を越えなければならない。

この区間の死亡率の高さには、ゲームでも何度泣かされたかわからない。

 

その点、最初からルアと組める今の状況は、格段に安定する。

基本的な難易度が高すぎるのだ。

こういう裏技的な選択肢を取ることが、死なないための最低限の方法になっている。

 

*

 

それから、ダリオによる修行が始まった。

 

修行といっても、メインは座学だった。

探索者や王国についての基礎知識、それに、一般的な武器や魔法の扱い方。

 

脳筋仁義マンとはいえ、さすが元騎士。教養はきちんと備わっているらしい。

 

ゲームで見知った情報も多かったが、実際に武器を握る感触や、野営の手順など、知らないことも山ほどあった。

一つひとつ、確かな基礎が身についていく実感がある。

 

中位魔獣の出没を警戒して、村が見える範囲より遠くへ行くことはなかったが、その範囲でも、最弱クラスのツノウサギやスライムを相手に、実戦の練習を重ねた。

 

ゲームで何百回と見た不思議な生き物が、目の前で本当に動いている。

そこへ矢を放ち、手応えとともに倒す。

画面越しでは決して味わえなかった、生身の感触。

ゲームの世界を、自分の身体で体験しているという興奮が、日に日に高まっていった。


読んでいただきありがとうございます。

ワンと言うのは一日一回と決めています。ブックマークお願いします。ワン。

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