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達成率999%のゲームに転生した俺の選択が、シナリオを崩壊させていく 〜攻略者の因果律〜  作者: 波動犬
因果について

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第48話 卒業試験

信じられない光景が、目の前にあった。

地下から二体のセーステスが這い上がり、上空にも、同じく二体のセーステスが飛来している。

 

ゲームでは、五体すべてが突如地下から上がってくる。

その五体のセーステスは、不意打ちの形で街じゅうに散らばり、それをガーランドが一体ずつ追って撃ち落とす間に、王都は甚大な被害を受ける。

だが、リツの助言を受けたガーランドは念のため地下を調べ、一体見つけて撃破した。

そして、それで終わりだと思ったのだろう。

 

ガーランドは口元から血を流していたが、その表情は冷静だった。

 

「……ほう」

 

赤い瞳が、かっと見開かれる。

ドミネーター化しているのが、ひと目で分かった。

 

「ルア」

 

真っ青な顔で傍らに駆け寄ってきたルアに、ガーランドが短く言った。

 

「見ておれ」

 

そう言うと、ガーランドは四体のセーステスへ、単身で向かっていった。

 

そこからは、まさに台風同士の戦いだった。

 

炎蛇の精霊を宿した一体が轟炎を放つ。

ガーランドは全身を炎に包まれながら、魔法で大剣を生成し、炎ごと相手を斬り裂いた。

だが、切れ残った顔だけが、ものすごい速さで動き、ガーランドの肩にかぶりついた。

 

痛がる素振りもなく、噛みついた頭をぎりぎりと握り潰す。

そのまま、雷霆の精霊を宿した一体が放つ電撃を次々とはたき落とし、あたりに氷漬けの塊を作りながら追い込んでいく。

 

その隙に、大地の精霊を宿した一体が、全身を岩で覆い、あたりの地形を変えながら、ガーランドを近接戦へと引きずり込む。

ガーランドは氷を生成し、その巨体を押し潰す形で動きを止めた。

 

だが、疾風の精霊を宿した一体が素早く回り込み、風の刃を放つ。

ガーランドは不意を突かれ、それでもギリギリで躱すが、動きが一瞬止まる。

その隙に雷霆のセーステスからの電撃が走り、さらに身動きが封じられた。

 

魔法の緩んだ瞬間を見計らって、大地のセーステスが地面から岩を生成し、ガーランドの左腕をがっちりと捉える。

そこへ、雷霆のセーステスの音を立てる光線と、疾風のセーステスの空気を揺らす振動が、一直線にガーランドの顔めがけて飛んだ。

 

ガーランドは、すぐさま右手で自らの左腕を切り落とした。

切り離された左腕が吹き飛ぶとともに、身体が自由になる。

 

今度はガーランドが一瞬の隙を突いた。

雷霆のセーステスを完全に捉え、一息に氷漬けにして砕く。

 

続けて大地のセーステスへ光線を乱射するが、相手が手で振り払うと、魔法は反射してガーランドへ跳ね返ってくる。

ガーランドも同じく、それを払い除けた。

 

その刹那、疾風のセーステスが瞬間移動し、目の前に現れて風の刃を振り下ろす。

ガーランドは身を捩って躱すと、カウンターで、めらめらと燃える右手の大ぶりのストレートを合わせた。

クリーンヒットした疾風のセーステスが、地面へ吹き飛ばされる。

 

地面から突き出す鋭利な岩を回避しながら、ガーランドは改めて、大きな黒い玉を大地のセーステスへ放った。

大地のセーステスは、それを手で振り払おうとする。

だが、払えなかった。

その手が、急に重量を増したように地面へ叩きつけられ、巨体がずぶずぶとのめり込んでいく。

ぎりぎりと軋みながら厚みをすり減らし、ついに、動かなくなった。

 

そして——背後に、残る疾風のセーステスが舞い戻る。

 

ガーランドは、その周囲に爆炎を巻き上げた。

セーステスは、簡単にはやられまいと、風の力で押し返そうともがいている。

それを見届けると、ガーランドはこちらへ引き返してきた。

 

「ガーランドさん……!」

 

ガーランドはまっすぐ歩いてくる。

だが、その体には大きな穴が空き、左腕が、なくなっていた。

 

「ガーランドさん! 回復を、誰か——!」

 

「いい」

 

静かな声だった。

 

ガーランドはルアの前まで歩いてくると、その場に、しっかりとした足で立った。

 

「ルア。卒業試験だ」

 

ルアは泣きながら、首を振った。

 

「嫌です……嫌……!」

 

「最後の弟子になったな」

 

「やだ! やだよ! 嫌だ! 嫌だ!」

 

「……いい娘だ」

 

ガーランドはルアを抱きしめると、その首にかかっていた静定石を掴み、砕いた。

 

乾いた音が、やけに大きく響いた。

 

ルアの瞳が、みるみる赤く染まっていく。

堰を切ったように、怒りが、悲しみが、恐怖が、一度に溢れ出していた。

その感情の奔流に呑まれるように、バーサーカー化が始まる。

 

ガーランドはルアの真正面に立ったまま、動かなかった。

 

「ルア。分かるだろう。もう、私は必ず死ぬ。ならば、この命を次につなげたい」

 

「ぐっ……ガァッ……し——師匠っ!!」

 

ルアが叫ぶと同時に、その瞳が、真っ赤に燃え上がった。

 

そして——轟音とともに、目の前の老人が、炎に包まれる。

 

リツは、動けなかった。

だが、目を離すこともできなかった。

 

最後のセーステスを封じていた爆炎が、ふっと消え去ると、老人を燃やし尽くしていた炎も収められた。

 

ルアは地面にへたり込み、自分の両手を見つめていた。

 

瞳は、赤いままだった。

だが、その目には、意識があった。

 

「……師匠」

 

リツは、何も言えなかった。

 

ガーランドは、自分の最期をルアの手に委ねることで、ルアをドミネーター化させた。

バーサーカー化した相手を、自らの力で討つ——その条件を、我が身をもって成立させたのだ。

死を悟った老人が、最後に選んだ願いだった。

 

「師匠……師匠……」

 

震えるルアの声が、響く。

リツもようやく声を振り絞った。

 

「ルア……大丈……夫……?」

 

反応はない。

大丈夫なわけがないと分かっているのに、それ以上の言葉が見つからなかった。

 

どれくらい経っただろうか。おそらく、数秒のことだ。

沈黙を破るように、ルアがゆっくりと立ち上がった。

 

爆炎の中に封じられていた最後のセーステスが、炎を失って動き出し、索敵を始めたところだった。

 

「やっつけよう」

 

赤い瞳のままのルアが、まっすぐにセーステスを見つめて、そう言った。

その声に、震えはなかった。

 

そこからは、あっという間だった。

ガーランドには及ばないものの、とても第二位階とは思えない魔法を次々と繰り出し、ルアは疾風のセーステスを、渦巻く炎で燃やし尽くしていく。

 

そうして、最後のセーステスは倒された。

そして——人類一の大魔道士を、失った。

 

戦火の音が遠くに退き、その一角だけが、しんと静まり返っていた。

リツは、灰になった老人がいたはずの場所を、ただ見つめることしかできなかった。

 

ピコン、とシステム音が鳴り響いた。

 

◆――――――――――――◆

 

メインストーリー達成率:14%

 

◆――――――――――――◆


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