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達成率999%のゲームに転生した俺の選択が、シナリオを崩壊させていく 〜攻略者の因果律〜  作者: 波動犬
西ケレ侵攻

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第41話 西ケレ遺跡

そして、十日間の行程を経て——サーザリーに到着した。

 

西ケレの都市サーザリーは、もともと鳥人族(オスカー)が多い場所だ。

大木の茂る広大な森であるため、木の上に家を設けることが多い。

とてもきれいなエリアだった——はずである。

 

だが、想定していた町並みの一部は魔放出の戦火に飲み込まれており、街全体が慌ただしくなっていた。

 

「そんな……」

 

大木の幹が、何本も黒く焼け落ちていた。

 

枝の途中で折れたまま、傾いだ床板が引っかかっている。

梯子だったらしい木の骨組みが、根元に散らばっていた。

上に家があったのだと、そう言われなければ分からない。

 

街のかたちそのものが、上から下へ落ちていた。

そして、人々は、地面に集まっていた。

 

広場に敷かれた布の上で、羽を焼かれた鳥人族が横になっている。

焦げた風切羽を膝に抱えたまま、じっと動かない者もいた。

 

自分の家があったはずの高さを、ただ見上げている老人がいる。

その隣で、子どもが同じように上を向いていた。

 

到着した百人あまりの隊列は、街の入口で一度止まった。

 

ケイジーが馬を降り、駆け寄ってきた地元の役人と短く言葉を交わすと、探索者は翌日に備えて休憩となった。

王国騎士たちは、負傷者の搬送へ回る者。焼け残りの見回りに向かう者に分かれる。

  

広場の一角には、布をかけられたものが並べられていた。

 

王国騎士団の団員が一人ずつしゃがみ込み、首元から何かを外して、木箱へ入れていく。

ネームタグだろう。

 

外し終えた者から、順に運ばれていく。

箱の中で、金属が触れ合う音がした。

 

「すぐに駆けつけてくれた、深紅(ドレー)以下の探索者はほとんどが死んだらしいぞ」

 

「微色(ティント)の大槌ゴルディフや、ジンのいた烈火旋風のパーティも、丸ごとやられたらしい」

 

すれ違う探索者たちが、口々に言葉を交わしている。

 

「完全に手数が足りていなかっただろうな……。あと数十人でもいたら違ったんだろうけど」

 

目の前に広がっているこの惨状は、ゲームにはなかった光景だ。

知っていたはずの世界が、知らない形で壊れている。

 

「なんなんだよ……どうして、こんなにシナリオが変わっていくんだ」

 

黒猫姿のステラが、静かに顔を背けた。

 

*

 

その夜、リツはステラに声をかけた。

 

「ステラ。ゲームでは魔放出があるのって、到着後だったよな。

これも、シナリオが変わってるってことだよな……?」

 

ゲームのシナリオ通りであれば、主人公たちが到着した直後に魔放出が発生する。

そして、確かにサーザリーには被害が出るが、到着していた騎士団や探索者によって、死傷者は出ないギリギリで事なきを得たという認識だった。

 

少しのタイミング差だが、結果は大きく変わっているように感じる。

 

「……はい。

世界は少しずつ、状況が変わっています。

できる限りストーリーに忠実になさるのが良いと、そう申し上げてきました」

 

遠回しに言っているが、ステラは、『リツが選んだことでシナリオが変わった』と言っているのだろうか。

 

(俺の選択が……? これを……?)

 

どこまでが自分のせいなのか、わからなかった。

 

ダリオを説得して村を出たこと?

魔女の家の扉を開けたこと?

センテの店に足を踏み入れたこと?

——ガーランドに、この先で起こることを話したこと?

 

ザルヴァの言葉を思い出す。

 

*

 

「世界は、そんなに単純じゃない。無数の偶然が絡み合ってできている。

きみ一人の行いが、その引き金になった、なんてことは……思い上がりだよ。

だから、気に病むだけ無駄さ」

 

*

 

繋がっているのか、いないのか、確かめる方法がない。

何もしなくてもこうなっていたかもしれない。

 

——そのはずだ。

 

だが、もしかしたら。という逃げ道は、目の前で焼け落ちた木を見ていると、ひどく都合よく思えた。

どうしたらいい?

 

全部シナリオに忠実に? それで俺は死なないのか?

スルギはどうなる? ゲームみたいに見殺しにするのか?

 

「今からでも遅くありません、できる限りシナリオの通りに……」

 

「もう取り返しがつかないくらい変わってるじゃないか!」

 

無自覚に大きな声が出る。

ステラは目を伏せたまま、黙っている。

 

何か言おうとして、口が動きかけたが、そのまま閉じられた。

言えることが何もないのか、それとも、言わないと決めているのか。

リツには、どちらとも分からなかった。

 

しばらく、沈黙が続いた。

さっきまで考えていたことが頭の中をぐるぐる回る。

自分はこれからどうしたら良いのだろう。

 

焼けた木の匂いが、まだ空気の中に残っている。

 

「……ごめん」

 

リツは、ステラではなく、暗闇の向こうを見ながら言った。

 

「俺が変えてしまったのかもしれない。

……でも、ゲームのままのシナリオで、仲間が死ぬのも見過ごせない。

そのために判断してきたんだ。

その選択は変えられない。絶対に死なせない」

 

ステラは、否定も肯定もしなかった。

ただ、顔を上げて、こちらをじっと見ている。

 

ピコン、とシステム音が鳴り響いた。

 

◆――――――――――――◆

 

メインストーリー達成率:11%

 

◆――――――――――――◆



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