↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
達成率999%のゲームに転生した俺の選択が、シナリオを崩壊させていく 〜攻略者の因果律〜  作者: 波動犬
修行の旅

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/50

第39話 バトラー&メイド

中央国は、住居が非常に多い国だった。

片側が山になっているせいもあるのかもしれない。

洞窟をそのまま住居にしたような家もあり、斜面にびっしりと人の暮らしが張りついているのが見えた。

 

そして翌朝、宿の一室で。

 

「ステラ!! 頼む!! お前しかいないんだ!!」

 

「リツ様、私はナビゲーションキャラクターです。介入はできかねます」

 

「そこをなんとかあああ、その姿でいてくれるだけでいいからあああ」

 

「難しいです」

 

「フフ……このネチェの実で作られた最高級のスイーツを、ご用意したのに……?」

 

ステラが一瞬だけ好奇に満ちた目をしたあと、キッと冷静を装って向き直った。

 

「はい。シナリオに影響を及ぼすことを、助長できません」

 

「シナリオに影響って言っても、そんな大したことじゃないだろーーーミノタウロスの時も助けてくれたし?

どうしてもほしいんだよおおお。やり方は全部説明するからああああ」

 

伝家の宝刀、土下座スタイル。

床に頭をこすりつけたまま何度も願い続けると、ついにステラが折れた。

 

「はあ……分かりました。

では、こちらの姿で、参加の届け出はしていただいても結構です」

 

「やったあああああ」

 

*

 

中央国といえば、ゲーム内でもミニゲームとして最高の人気を博したイベントがある。

 

『超高級カジノの「給仕係(バトラー&メイド)」潜入ミニゲーム』だ。

 

中央国には、大陸一番のカジノ「パラパラパラダイス」がある。

このカジノには目玉景品として「キンピカカード」という傾国級のアイテムがあった。

名義人の財産保有量に応じて一定額の支払いが自由にできる、いわばクレジットカードのようなものだ。

手に入れられれば、実質的に金策で困ることがなくなる。

 

これを通常の方法で入手するには、カジノで1億パラパラ——カジノ通貨だ——を貯めなければならない。

だがそれとは別に、ミニゲームイベントを最後までクリアすることでも手に入る。

ただし、男性・女性混合の合計三人でなければ参加自体ができない仕様のため、ステラに懇願していたわけだ。

 

ちなみに、このイベント自体は本筋とは関係ない。

にもかかわらず異様に作り込まれたゲーム性があり、大変な人気だった。

いわゆる配膳ゲームで、新米アルバイターから十段階。

最後の十段階目は、裏社会のボスたちが集うフロアである。

一つのミスも許されない緊迫感とスピードを求められるというものなのであった。

 

「レイアさん〜、一人見つけました!

一人で探索者をやっている、え〜タマという子です。

ちょうどお金にも困っていたみたいなので、ぜひ!」

 

こういうときに咄嗟に出てきたのが、実家で飼っていた猫の名前で、なんとなく小っ恥ずかしくなる。

 

「よろしくお願いします」

 

「よろしく! 可愛らしい子ね!

あら、獣人族? 猫かしら?」

 

「はい、そうです」

 

「リツは猫に好かれるわね」

 

バレたのかとドキッとしたが、レイアはそれ以上追及するでもなく、さっそくステラと何やら楽しげに話し始めていた。

女同士で仲良くやりましょう、ということらしい。

 

「それではやりますか。題して『パラパラパラダイスでイケイケ給仕大作戦』」

 

「なんかダサいかも」

 

*

 

翌日。

 

「君たちがアルバイトかい。

ここはたくさんの給仕が働いているからね。よろしく頼むよ。

ではこれに着替えて」

 

ガチムチの、社員のような人に案内された。

タキシード姿に着替えてフロアに出て、少し待っていると、恥ずかしそうなレイアと、無表情なステラが出てきた。

 

バニーガールの姿で。

 

「可愛いけど、恥ずかしいわね」

 

「レイアさん可愛いです!!」

 

「ありがと。タマちゃんも見てあげて」

 

言われて、リツは視線を移した。

 

「タマも……おお、とてもいいと思う……」

 

猫耳、尻尾、そこにバニーガールの衣装。

なかなかの破壊力だ。

 

「遊びじゃないんだ、行くぞ」

 

ガチムチに促され、まずは一つのポーカーテーブルを担当することになった。

この辺りは余裕だ。

リツがディーラーとして場を回し、レイアとステラが配膳などを担当する形になった。

 

しばらくすると声がかかった。

横のテーブルも、さらにフロア全体もと、任される範囲が広がっていく。

レイアは持ち前の明るさと素早さで場を沸かせ、ステラは機械のように正確に手を動かしてくれている。

進行は上々だ。

 

ゲームでやり込んだおかげで、どこで加点され、どこで減点されるかは押さえている。

段階はみるみるうちに上がっていった。

 

あれよあれよという間に、一般フロア、VIPフロアと駆け巡り——

 

そして最後、裏VIPフロアの管理を任せられることになった。

 

*

 

「ゴンドー様、こちら当カジノでも非常に優秀な、バトラーとメイドの給仕係になります。

引き続き、ごゆっくりお楽しみください」

 

「おぉ、楽しませてもらうわい」

 

裏マフィアのゴンドーは、あるタイミングでイカサマを挟んでくる。

給仕を完璧にこなしながら、そのイカサマを止めることでオールクリアとなる。

一度でもミスれば最初からやり直しというクソ仕様だが、リツは完璧に見抜いている。

 

完璧にディーラー業をこなしていくと、その時が来た。

 

「ゴンドー様。そちらの手を、開いていただいてもよろしいでしょうか」

 

「あぁ? 何の言いがかりだ?」

 

「おそらく、カードを隠し握られているかと。

確認させていただけますか」

 

「ほぅ。俺がイカサマしているってことかあ?

覚悟はできているんだろうな?」

 

「はい」

 

「あぁああん? ふざけるな! おい! こんなやつにディーラーをやらせてるんじゃねえ」

 

レイアが後ろからゴンドーに向けて銀のお盆を投げつける。

ゴンドーは防ごうとして、手から隠し持っていたカードがこぼれ落ちた。

 

「……ッチ、バレたか。

おい、逃げるぞ。やっちま……」

 

ドーン。

 

ガチムチの社員のような人が、ゴンドーの舎弟をグーでぶっ飛ばしていた。

 

(レベル六十五だもんな、なんでこんなところにいるんだか)

 

ゴンドーの方に向き直ると、近くにいたステラを人質に取り、叫んでいた。

 

「クッソ、おい、このバニー殺すぞ!!」

 

(しまった……)

 

人質は想定していなかった。

レイアが近くにあったグラスを投げつけるが、別の舎弟がガードしており、ジリジリと出口へ後ずさるゴンドー。

 

「そんな見え見えの攻撃が効くわけないだろう」

 

ゴンドーが吐き捨てる。

ステラの首に腕が食い込む。

どう動くか、考えあぐねていた——その時だった。

 

ステラが、明確にため息をついた。

 

次の瞬間には、目にも止まらぬ動きでゴンドーの手をひねり、足を払い、掌底で吹き飛ばしていた。

 

ゴンドーは壁に叩きつけられ、ボテッと落ちて、そのまま意識を失う。

合わせて、横にいた二人の舎弟も、いなして倒してしまった。

 

「えぇ……」

 

呆然とするリツとレイアをよそに、ステラは社員に向き直る。

 

「これでよろしいでしょうか?」

 

「あ、あぁ。大丈夫だったか? ありがとう。

イカサマの可能性は疑っていたが、バレなければ指摘もできないからな。

これまでのことを考えると、値千金だよ。助かった。よく見抜けたな」

 

バーンとドアが開き、金髪にピンクのスーツを着た、テカテカのおっさんが現れた。

社員が叫んで、お辞儀する。

 

「「「オーナー!」」」

 

「見ていたよーーー、ブラボーーー! ありがとうーーー!

私がオーナーのパラパラだ。

素晴らしい給仕係たちだね」

 

ふんふんと自分の世界でなにか考えている。

 

「よし、ご褒美をやろう。何がいい? 何がいいんだい?」

 

変わった圧のかけ方である。

 

「一番の景品になっている『キンピカカード』がほしいです!」

 

「ふぅむ……。もちろんさーーー! あれをやろう。

あとは、心配をかけてしまったその女性二人にも、プレゼントをしよう。ほれ」

 

従者に合図をすると、大きな箱が二つ運ばれてきた。

 

促されるままに、レイアとステラが箱を開く。

レイアには「灼熱のドレス」、ステラには「黒猫の踊装束」と、それぞれドレスが入っていた。

 

「良い装備だけど、明らかに露出が多すぎるわね……」

 

「これから君たちは私のお気に入りだ!!

いつでも来てもらえれば、……特に女性なら……服は見繕ってあげようーーー!」

 

「ありがとうございます……」

 

変態オーナーに引きつつも、目当てのものは手に入った。

 

*

 

カジノを出ると、外はもう夜だった。

冬が近づいてきており、少し肌寒い。

タマは丁寧に頭を下げると、人混みの向こうへ消えていき、レイアは見えなくなるまで手を振っていた。

 

(……ステラって、あんなに強かったのか)

 

長かった旅も一段落し、ようやく、王都に戻るだけとなった。

戻れば、西ケレへの侵攻が始まる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。