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達成率999%のゲームに転生した俺の選択が、シナリオを崩壊させていく 〜攻略者の因果律〜  作者: 波動犬
王都にて

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第23話 世界の強者たち

食卓に着くと、恰幅のいい男性が、すでに席についていた。スルギの父だ。

一般的な鬼を想起させるように、額から角が二つ生えており、白髪と相まって、見た目は非常に厳めしい。

ゴツゴツした体格に、一瞬で首の骨をへし折られそうな眼光。

気を抜けば気圧されそうな、当主の威厳があった。

 

「初めまして、当主のシウ・ゼルバーキン・オーガストだ。よろしく」

 

見た目とは裏腹に、声色はとても柔らかかった。

教師をしているというだけあって、纏う空気には落ち着いた知性も感じられる。

 

「スルギから話を聞いたが、大変だったようだね。まずはご飯を食べよう」

 

席に促されていると、追って二人の少女も入ってきた。

 

「紹介しよう、娘のサランとヨルワだ」

 

「こんばんは、サランです」「ヨルワです」

 

(……この二人はゲームでも登場している。

王都学園の特待生として、将来的にサランは兵を率い、ヨルワは「氷雷殿」から一緒に行動することになるキャラクターだ)

 

妹たちに何か言われて、スルギが困ったように笑っている。

父が窘め、センカが取りなし、また笑いが起きる。

どこにでもある、家族の食卓の風景だった。

 

(……この人たちは、まだ知らない)

 

この席に座っている青年が、そう遠くない先で、いなくなることを。

 

何度プレイしても、どの選択肢を選んでも、そこだけは動かなかった。

攻略サイトの誰も、条件を見つけられなかった。

 

(……本当に、変えられるのか)

 

分からない。何の当てもないままだ。

それでも、笑っているスルギから、リツはどうしても目を逸らせなかった。

 

食事が終わり、女性陣が風呂へ向かうと、シウ、リツ、スルギの三人で談話室へ移動し、スルギが改まってルアの事情を切り出した。

 

「……それで父上。こちらの紹介状を王国騎士団のどなたかに渡し、ガーランドに繋いでもらうようにと、ダリオさんから預かっています」

 

「なるほど、バーサーカー化か……わかった。明日、手続きを取ろう。

その件なら、恐らくすぐに会ってくれると思う。

ただ、神聖教会の武力部門、神聖騎士団には気をつけるようにな。バーサーカー化関連は特に目の敵にしている」

 

「ありがとうございます」

 

シウの頼もしい言葉に深く安堵し、その日はお開きとなった。

心身ともに限界だったリツは、スルギの部屋に用意してもらったベッドに倒れ込み、泥のように眠った。

 

*

 

翌朝。

 

カァ〜ッ! という奇妙な鳴き声がして、窓の外を鳥のようなものが通り過ぎていった。

 

「お坊ちゃん、ギルドから『カートリッジ』が参りました」

 

執事が受け取ってきたのは、鳥の形をした魔法の郵便物だった。

届け先の近くになると鳴いて知らせる仕組みらしい。

 

ギルドからの届けは「昨日の精算があるからギルドまで来たれし」とのことだった。

 

改めて三人でギルドに向かうことにした。

 

ギルドは朝一だからか、昨日よりも人が多く、四、五十人程度はいるように見えた。

 

「おぉ、おはよう、リツ。オイ、これが昨日の坊主たちだ」

 

「あらぁ〜おはよう〜可愛い坊やたちね〜〜」

 

声をかけてきたビルノードンとゲイル・ミントの他に、かなり身軽な格好をした、微色の、グラマラスな女性がいた。

 

「昨日不在だった、道具士のハーティだ。こっちは左からリツ・ルア・スルギだな」

 

「よろしくお願いします」

 

「俺等はこれからクエストだからな、またよろしく。たくさん稼げてよかったな!」

 

そう言って、ビルノードンたち一行は颯爽と出ていった。

 

そのまま受付に行くと、昨日の報告書とベルクの入った袋を渡された。

 

「荷運びの一般クエストが260万ベルクに、集落除去の作業40万ベルクで、合計ちょうど300万ベルクになります」

 

集落除去もザルヴァが監視者としてついて対応したので、後から給金対象になると聞いていたが、間違いなかった。

 

想定よりも多い、初めての報酬。

純粋に嬉しい——はずだった。

リツは改めて、櫓の中で死んでいた隻腕のゴブリンのことを思い出していた。

 

自分がダリオに無茶を言って村を出た。

そこで遭遇し、取り逃がしたゴブリンが、あの集落を作ったのかもしれない。

 

気がつくとそう思考している自分がいて、改めてザルヴァに「思い上がりだ」と言われたことを思い出す。

抜けない棘は刺さったままだったが、どうにもできない状況で悔やみ続けていても仕方がないのも事実だ。

 

「それと、初クエストの達成で一人当たり100万ベルク到達のため、ご希望があれば群青(ルーブ)に昇級できますがいかがされますか?

受けられるクエストの幅が少し広がりますね」

 

振り返って、ルア・スルギと顔を見合わせた。

 

「ぜひお願いします!」

 

*

 

ギルドの受付でネームタグを加工してもらうと、うっすら青色になった。

 

「ねえねえ私たち最速じゃない??」

 

「完全にイレギュラーミッションだったもんねえ」

 

はしゃぐルアに、スルギが苦笑いで返す。

 

「まあ、無色から群青になっただけだしね。どんなクエストができるかなあ」

 

探索者ギルドのクエストは、保証金が一人当たり100万ベルク必要らしい。

全財産をはたいて冒険に行くよりも、先に武器などを揃えなければならないので、まずは商業ギルドのクエストを受けようということになった。

 

「スルギ、おすすめの武器屋ってある?」

 

「うーん、僕も自分のお金で買いに行くのは初めてだからね。

聞いたことあるのだと、大軍隊団がやっているガラム商工会の店舗かな、高いと思うけど。

あとはセイレイユ通りに個人のお店もたくさんあったはずだけど……」

 

「大軍隊団って将軍イルの?」

 

「そう! リツって引きこもりは知らなかったけど、将軍イルは知ってるんだね!」

 

「ってことは、将軍イルも漆色の十一人ってやつなの?」

 

「うん、そうだよ! というか知らないの? 漆色(ノワール)の十一人も絶色(アビス)の三人も?」

 

「うん、そうなんだ。知識が偏ってて……」

 

「ふーん……じゃあ教えてあげよう!

大軍隊団は深淵大陸の攻略を目指す、大規模軍隊組織のことだよ。

王都とかの正統組織じゃないから、傭兵に近いかな。

戦闘員が五百人ほどで、非戦闘員も入れたら五千人くらいいるらしいよ。

そして、そこを率いているのが漆色の大軍隊団将軍イル。

商団も形成していて、商業ギルドとのつながりが最も強い組織だね。かっこいいからファンも多いよ」

 

「そして、ノワールの十一人からだけど——」

 

スルギがすらすらと名前を挙げ始める。

 

「引きこもりのザルヴァ。大軍隊団将軍のイル。勇者ハートレイン。擁立された人ニーヴァ。探究者メルメル。

最強のディランセフ。残虐なる遊び人ホーリー。不死身の七光りドルツ。竜殺の目。竜殺の杖。

そして秘匿の人。これで十一人と言われているね」

 

「……」

 

リツは内心で冷や汗を流していた。

 

「アビスの三人は、竜殺しの『竜殺』。

未踏地域を最も広げた『到達』。

王勅命騎士の『重圧』の三人だね。

ちなみに『到達』は、大軍隊団の元将軍で、今も特殊師団として大軍隊団にいるらしいよ。

もちろん見たことないけど」

 

(思った以上に、知らないことが多すぎる……!)

 

ゲームの知識だけではカバーしきれていない事実が多いことに、一抹の不安を覚える。

 

「じゃああれは? 死人の集会所(デスパレード)って知ってる?」

 

「えぇなにそれ、遺跡とかの話?」

 

「え……いや、武器屋……」


強者たちを書くのが楽しみです。

引き続き尻尾振っていきますので、ブックマーク・評価・コメントもらえたら嬉しいです。ワン。

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