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達成率999%のゲームに転生した俺の選択が、シナリオを崩壊させていく 〜攻略者の因果律〜  作者: 波動犬
王都にて

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18/50

第18話 初めての王都

門をくぐり抜けると、視界いっぱいに、極彩色の光景が飛び込んできた。

 

「うわあああ、すごーいっ!」

 

隣で、ルアが瞳をきらきらさせて声を上げる。

 

行き交う人々の熱気。通りに軒を連ねる露店の数。鼻をくすぐる、香ばしい匂い。

 

「……ああ、すごい活気だね」

 

ルアに相槌を打ちながら、リツも、自然と口元が緩むのを感じていた。

これが、ダークロの世界の日常だ。

画面越しでは決して味わえなかった熱気が、肌に直接、伝わってくる。

 

「どうするどうする? ちょっと見てきたくない!?」

 

はしゃぐルアをなだめつつ、どのみち都市区は抜けねばならないので、通りすがりに焼き鳥のようなものを買って、頬張りながら歩いた。

中央の広場、ギルドらしき建物に、教会。

武器屋もあれば、用途のわからない怪しげな店もある。

 

都市区を渡りきると、少し背の低い門が見えてきた。

こちらの門では憲兵がしっかり目を光らせていて、素通りしていく者と、呼び止められている業者らしき者とに、はっきり分かれている。

 

どうやって入れる人と入れない人を識別しているのだろうか、と考えていると、察したのか、スルギが教えてくれた。

 

「あの門には、魔法がかかっててね。

住んでる人は判別されて素通りできるけど、そうじゃない人は、憲兵に通行許可をもらわなきゃいけないんだ」

 

魔法でオートロックが成立しているわけである。

スルギの案内に従い、憲兵のところで魔法印を腕につけられると、特に問題なく通り抜けることができた。

 

門の先の通路を少し歩くと、打って変わって、静かで広々とした空間が現れた。

公園のような広場と、大きな屋敷が、いくつも建ち並んでいる。

奥には遠巻きに見えていた城が迫って見え、その大きさと迫力を持って、王都の盤石さを示しているようだった。

そこかしこを歩く人々も、ふわりとしたワンピースなどを身にまとったり、きれいなシャツを着ていたりと、丁寧な暮らしが窺われる。

 

ピコン、とシステム音が鳴った。

 

◆――――――――――――◆

王都へ到着!

メインストーリー達成率:6%

◆――――――――――――◆

 

「あそこの屋敷だよ。行こう」

 

案内されたスルギの屋敷は、驚くほど大きかった。

入口の門に近づくと、執事のような男が出迎える。

 

「坊っちゃん、おかえりなさいませ。お連れの皆様も、ようこそお越しくださいました。

お母様がいらっしゃいます。ぜひ、中広間へお越しください」

 

中へ入ると、見たこともない様式の装飾が、そこかしこに施されている。

まさに、ザ・お屋敷、といった風情だ。

リツからすると、さながら海外旅行か、遊園地に来たような心地である。

きょろきょろと見回していると、少しして、階段の上から一人の女性が現れた。

 

「スルギ、おかえりなさい。そちらは、お友達ね。スルギの母で、センカと申します」

 

黒い髪は頭の後ろで複雑に結われ、色白の肌に、豪華すぎず、それでいて品の良さを感じさせるドレスを纏っている。

背筋の伸びた佇まいは、いかにも厳格そうで、思わず居住まいを正したくなる。

 

(どこの出自とも知れない、俺やルアだ。無礼があっては、まずいよな……)

 

そう身構えながら、リツも挨拶を返す。

 

「初めまして、リツと言います。スルギさんとは段超え試練をご一緒させていただきました」

 

「ルアと言います。よろしくお願いします」

 

「ふふっ。そんなに畏まらないで。まずは、疲れたでしょう。とにかくお風呂に入って、それから食事にしましょう」

 

にっこりと微笑みながら、そう告げられる。

その、ふっと空気のほどけるような受け答えで、最初の張り詰めた印象は、あっけなく覆された。

ああ、この人は、見た目よりずっと、あたたかい人なのだ、と。

 

半ば押し込むように、全員が浴室へと案内された。

男女は別々の更衣室で、浴室こそ同じ空間ながら、天井から中央へ分厚い布が垂らされ、向こう側は見えないよう、きっちり仕切られていた。

 

「母様、おしゃべりでさ……。礼儀とか全然気にしない人だから、おかまいなく」

 

センカは、ゲームでは語られることはあったが、キャラクターとしては登場していない。

こんな人だったのか、と少し驚いたが——異世界だろうとどこだろうと、母親は母親なのだな、と、身も心も、じんわり温かくなった。

 

*

 

風呂から上がり、ルアが出てくるまでの間、センカに、騎士団に会いたいことを伝えた。

ハナが勤めている詰め所があるが、当のハナは調査のためまだ戻っていない。

急ぎ取り次いでもらいたいのであれば、スルギの父親に話を通してもらうのがよさそうだ、という話に落ち着いた。

ちなみに、スルギの妹二人は、今は学校で不在とのことだった。

 

話している途中でルアも戻ってきて、そのまま食事になった。

ルアもまた、すっかりセンカに懐いている。

スルギの父が戻るのは夜になるという。

食事を終えた一行は、それまで時間があるので、街の散策に出ることにした。

 

*

 

まずは探索者ギルドを覗いてみたい——その点で、三人の意見は一致していた。

 

比較的、都市区の中でも、冒険区に近いエリアに、探索者ギルドはあった。

商業施設の多い都市区の中心部からは少し離れている。

無骨な作りの、四角い大きな建物だった。

 

わくわくしながら扉を開けると、思い描いていた通りの、受付と掲示板がある。

その横側には立ち酒場のような様子で、いくつものテーブルが並べられている広間がある。

ただ、マンガで見たような、武器を提げた荒くれ者でごった返す光景は、見事に外れた。

奥のテーブルで話しているのが一組いるだけで、拍子抜けするほど閑散としている。

 

「全然、人がいないね」

 

「日とか時間によって、かなり違うみたいだよ。

昼過ぎは、依頼を受けた人がもう出払ってて、戻るには早い時間だから」

 

初心者たちである一行としては、人でごった返していないのは有り難い。

早速、ということで、受付で探索者になるための申請を行う。

 

一通り説明を受けたが、ほとんどはゲームで聞き知った通りだった。

まずは無色からということで、受付でネームタグを受け取る。

リツは、ゲームで聞いた手順を、今こうして現実に自分がなぞっており、ネームタグを首にぶら下げていることに、妙な感慨を覚えた。

 

続いて、商業ギルドにも顔を出してみるといい、と勧められる。

魔獣の退治や探索などではない依頼は、商業ギルドの方で取り扱われることも多いらしい。

礼を言って、ギルドを出ようとした——そのときだった。


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