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達成率999%のゲームに転生した俺の選択が、シナリオを崩壊させていく 〜攻略者の因果律〜  作者: 波動犬
初めての魔窟

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12/50

第12話 段超え試練

魔窟内には、人工的な宝箱のようなものはない。

アイテムの素材になるものを拾い、魔獣が持っているものがあれば奪う。それだけだ。

ガド山魔窟は初期魔窟のため、大した収穫もないまま、最奥の行き止まりに到着した。

 

薄っすらと霧が出ている裂け目がある。

 

「あれが識異点か」

 

達成感のこもった声で、スルギが言った。

 

「ようやくか……特に問題はなかったけど、戦闘を十数回こなすと、さすがに疲れるね」

 

ふぅ、と一息つこうとした瞬間、ルアが動いた。

 

「すごいね、どうなってるんだろう」

 

「「近づいちゃダメだ!」」

 

リツとスルギの声が重なった。

だが、遅かった。裂け目がパッと光り、周りの景色が一変する。

 

「あぁ……ごめん……」

 

ルアが、申し訳なさそうにこちらを見ている。

 

「……まあ、どうせすぐ入る予定だったんだから、いいんだけど」

 

「近づいた時点で転移するんだ。次から気をつけよう」

 

スルギの言葉を聞きながら、リツはすぐに切り替え、遠識を広げた。

 

周囲は白いモヤに囲まれている。気配はない。

中央に、巨大な岩がひとつ、鎮座している。

 

「あれが識異点魔獣だろうね」

 

「そうだね」

 

「岩の魔獣か。弓矢は通らなそうだけど……スルギの硬斬りなら、切れるんじゃないかな」

 

「一度、斬ってみようか」

 

スルギが近づいていくと、岩がゆっくりと、逃げるように転がり始めた。

ゴロゴロと転がるだけで、スピードはない。

追いかけていったスルギが、思い切り刀を振り下ろす。

 

ドンッ。

 

想像とは違う鈍い音。

岩は斬れることなく、ボールのように弾んで、囲むモヤの壁へ飛んでいった。

 

「なんか違う! ただの回転岩じゃない!」

 

モヤの壁にぶつかり、一瞬張りついたかと思うと、勢いをつけて、今度はこちらへ飛んでくる。

壁と壁のあいだを跳ね返り続ける球のような動きだ。

 

リツは咄嗟に地を蹴り、飛来する岩を躱した。

壁に張りつく一瞬の「ため」が、かろうじて軌道を読ませてくれる。

そのおかげで避けられてはいるが、連続で飛んでくるとなると厳しい。

質量とスピードからして、一度でも当たれば致命傷だ。長期戦は避けたい。

 

(なんだこれ!? 斬れなくて、弾む。

岩じゃない。壁に張りついて——ゴムか?)

 

回避しながら、そこまで考えて、ハッとした。

確かめる手段を持ち合わせていたことを思い出し、自分の手札を見失っていたことに、内心で舌打ちする。

まだ、戦いというものに頭が馴染んでいない。

リツは息を整え、意識を眼へ集めた。

 

真識——より深く見通す権能。いわば、分析の眼だ。

転がる岩へ焦点を合わせると、目の前に青白いウィンドウが立ち上がった。

 

◆――――――――――――◆

 

【 回転ゴム岩 】

外殻:ゴム質 ※斬撃・打撃を弾く

弱点:高熱

 

◆――――――――――――◆

 

「……回転ゴム岩!」

 

「とりあえず避けて、体勢を立て直そう!」

 

リツとスルギが交互に叫ぶ。

 

「ゴムだから火に弱い! ルア、発火の温度を上げてぶつけてみて!」

 

確かに、ゴムは高温で溶ける。暇潰しに見ていた動画でも、そう言っていた。

 

「わかった、やってみる!」

 

発火は、集中して時間をかければ、温度を調整できる。

リツが回転ゴム岩に近づいてヘイトを集め、飛ぶ方向をコントロールする。

スルギはルアのそばで待機し、ルアが炎に集中する——そういう構図になった。

 

「準備できた、飛ばしてみる!」

 

「うん、壁に張りつくタイミングを狙って!」

 

狙い通り、壁に張りついた回転ゴム岩へ、ルアの炎が当たる。

岩は炎に包まれ、もくもくと煙を上げ始めた。

 

「あっつい!!」

 

だが、回転ゴム岩は止まらない。

地面を転がり続けるうち、炎はすぐに消えてしまった。

 

「だめだ! ダメージは入ってるけど、もっと強くないと火が消える!」

 

「私も、何発も撃てるかわからないよ! どうしよう!」

 

黒い煙を上げながら転がってくる岩を避け続けながら、リツは頭を動かした。

 

(発火を当て続けることはできない。

一発の威力を上げるか、別の手を使うか……)

 

思考が止まりかけたとき、スルギが叫んだ。

 

「いい方法がある! リツ、もう少し頑張ってくれ!」

 

スルギがルアに何かを指示している。

だが、黒い煙を吐きながら転がってくる回転ゴム岩を避けるリツも、疲労と焦りで限界が近い。

 

「どうしたらいい!」

 

「その岩を、こっちに向かわせてくれ!」

 

「わかった! 任せる!」

 

リツは方向をコントロールし、スルギのほうへ岩が飛ぶよう仕向けた。

すぐに振り返ると、スルギが刀を構えて待ち構えている。

 

その刃が、赤く煌々と灯っていた。

 

「おぉぉぉぉぉぉ!」

 

気合の声とともに、刀が回転ゴム岩を捉える。

先ほどとは違い、ほとんど音もなかった。

赤熱した刃が、抵抗する間も与えず岩を通り抜け——回転ゴム岩は、真っ二つに切り分かれた。

 

断面から、じゅうっと白い煙が上がる。

焦げたゴムの匂いが、モヤの中に漂った。

二つに分かれた塊は、もう転がることも弾むこともなく、力を失ったように地面へ転がって、そのまま動かなくなった。

 

しん、と静寂が満ちる。

 

「……なるほど。刀を、熱して斬ったのか」

 

「そう。ハナを参考に、疑似魔剣士ってね」

 

スルギが額の汗を拭い、赤みの引いていく刀を、静かに鞘へ納めた。

 

「なんとか、なったぁ……」

 

ルアがその場にへたり込む。

リツも、詰めていた息をようやく吐き出した。全身が、鉛のように重い。

だが、その重さの奥から、確かな達成感が、じわりと滲み出してくる。

 

初めての、識異点魔獣。三人で、倒しきったのだ。

 

しばらくして、モヤの壁が、裂け目を形づくり始めた。

周囲のモヤが、徐々に薄まっていく。

 

「これが……戻り穴だね」

 

スルギとルアが回転ゴム岩の残骸から素材をかき集める間、リツはモヤの薄れた場所を探索した。

各自が見つけたものを、リツの開いた空間収納へポイポイと放り込み、戻り穴へ近づく。

 

来たときと同じように、一瞬光ったかと思うと、景色が元の洞窟へ戻っていた。

 

ピコン、とシステム音が鳴る。

 

目の前に、ウィンドウが立ち上がった。

表示は【Lv:10】。この世界の言い方でいえば、第一位階への到達だ。

これでようやく、死亡率五割の最弱の駆け出しを、脱したことになる。

 

深く息を吐き出すと、身体の底から、これまでにない確かな力が湧き上がってくるのを感じた。

指の先まで、熱が通う。

血の巡りひとつ、呼吸ひとつが、さっきまでとは別物のように鮮明だった。

 

「おぉ……」

「わぁ……」

 

スルギとルアも、感嘆の声を漏らしている。

二人も、第一位階を超えた手応えを、確かに感じ取っているのだろう。

 

「とりあえず、洞窟の外まで戻ろう。それから、いろいろ確認しよう」

 

スルギの言葉に頷いて、来た道を引き返した。

帰路にも魔獣が湧く可能性はあったが、一度掃討した直後だからか、ほとんど戦闘もないまま、洞窟の入口まで戻ることができた。

 

外の光が見えてくる。

 

その眩しさに目を細めながら、リツはふと、暗闇のほうを振り返った。

 

——ジジジ。

 

あの音が、まだ耳の奥に残っている。

何かを思い出しかけている気がするのに、その何かが、どうしても像を結ばない。

 

(……気のせいだ)

 

そう片付けて、リツは光のほうへ歩き出した。

 

ピコン、とシステム音が鳴り響いた。

 

◆――――――――――――◆

 

メインストーリー達成率:4%

 

◆――――――――――――◆



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