竜の咆哮。
ごめんノワ。
あたし。
高次の空間にありながら地上に落ちたノワを抱き抱えながら、あたしは彼の瞳に滲んだ涙? 汗? どっちかわかんないけどそんなまなじりに口づけをした。
びっくりしているノワ。
唇に、ちょっと涙の味がして。
さっきまで。
もしかしてこの戦いはノワに任せておいた方がいいのかも?
そんな気分になっていた。
あのレヒトの台詞に答えるノワに、そう感じて。
でもやっぱりさ。
「あたし、やっぱりノワが大好きだよ。だから」
振り返り、左手を空に浮かぶレヒトに向ける。
「ドラゴン・ノバ!!」
あたしの周囲に浮かんであたしを守護していた六体のドラゴン、竜の鱗が全てあたしの左腕に集まった。
円筒形に並ぶその鱗。
そして。
光の渦がその筒の中に浮かぶ。
呼び出され顕現する正の粒子と虚数の粒子。
それぞれが円筒の中で嵐のように加速し、そしてそれはエネルギーの塊となって放たれた。
空間というものはZEROでは無い。
そこにはたまたまエネルギーの釣り合いがとれた膜が存在するだけ。
ああ。あたしには量子力学もディラックの海もわからないけど、少なくともマギアクエストの世界ではそうだった。
そこに大量のマナを落としてあげることで生み出される素粒子は、マナのエネルギー量の分だけの力をもつ。
もしかして。
ってそう思ったけど、この高次の空間でも竜の咆哮が起動できたってことは。
意味がないかもしれない。効かないかもしれない。さっきはそんなふうにも考えたけど、でも。
うん。この空間でも、マギアクエストの常識が生きている証拠だ!
これなら!
精神世界、真那の世界でも!
「いっけーーーーーー!!!」
バリバリと弾ける光の奔流がレヒトに向かって放たれ、そして。
「うぐぐぐぐっ」
レヒトに直撃したその光の奔流。
ああでも。
あれに耐えるのか。レヒトは。
ダメージは通ってる。精神生命体といえどその形をかたどる魔の組成自体を拡散させうるエネルギーであれば、少しは!!
もはや人や魔獣、そして魔人をも超えた魂の存在であるのだろう、そんなレヒト。
でも。
空の彼方までその光の奔流が飛び去った後。
鬼の形相でこちらを見る、そんなレヒトの姿が残されていた。
「許さん! 許さんぞ! このワタシにここまでダメージを与えるとは! 絶対に許さない!」
そう叫ぶレヒトの姿が。
「いこう、ノワ。あたしたち二人でレヒトを倒すの!」
「ああ。そうだな」
「そして。まだ残っているかもしれない本当のレヒトさんの魂を救ってあげよう」
「え?」
「ちゃんと倒して、それでもってちゃんと円環に還してあげなきゃ。きっと救われないから」
「ああ。そうだな。うん。きっと、そうだ」
あたしはノワの手をそっと握って。
起き上がったノワ。
あたしの手をぎゅっと握り返してくれた。




