魔力特性値の概念。
あたしとノワは同時に飛び上がり、レヒトに迫った。
あたしの白いふわふわな天使の羽と、ノワの黒いやっぱりふわふわな毛で覆われた羽が重なるように開いて。
レヒトは右手に黒い剣、左手に黒い棍棒のようなものを掴んで振り回す。そこからやはり黒い霧のようなものが広がり、あたしたちに襲い掛かった。
「マギア・ウォール!!」
あたしはその霧を阻む次元の壁を展開。
右手を伸ばしてあたしとノワを覆うよう、球状に張り巡らせた。
バリバリと弾けるように襲い掛かるその霧。ううん、細かい砂の礫みたい?
「紫香蓬莱!!」
あたしは左手の盾のうち、黄竜の権能を解放!
マナをも砕く、その咆哮を放つ!
あたしの左目のドラゴンズアイが黄金に輝きその権能を完全にコントロールする。
砂の礫のように見えるその黒い霧、一粒一粒を砕き、昇華させていった。
鬼のような形相のそのレヒトにノワが迫り、聖剣を振り下ろす。
レヒトは黒い剣と棍棒で相対しているけれど。
うん。ちょっと変。
レヒトの魔力量が桁外れなのはわかる。
感じるプレッシャーが半端ない。それはもう激昂してからはもっと顕著になっている。
だけど?
レヒトが放つ圧をノワに影響しないようあたしが受け流す。
その分、ノワの攻撃が押している感じで。
あたしはノワが攻撃をする隙にライラック・ミラージュを連射する。
あの大きい魂を削りながら、少しずつダメージを与えていく。
それにしても。
もしかして。
レヒトの魔法は、力まかせ?
大量の魔、マナ頼り?
あれだけの魔力量、もっとちゃんとした魔法陣を展開し、しっかりと聖霊ギアと連携しさえすればあたしたちなんか圧倒する力を発揮できるだろうに。
まさか。
魔力特性値の概念が彼には無い?
ああ。
可能性、あるかもだ。
元々のレヒトは魔法にはあまり縁がなかった。だとしたら。
やっぱり歪なのだ。
力だけを追い求めた結果の歪。
あたしの紫香蓬莱が効いているようで、だんだんと肩で息をするような仕草にかわるレヒト。
疲れている?
うん。
顔色もずいぶんと青くなって。
精神生命体であるレヒト。
そんな人間臭い疲れとかとは無縁な気がしていたけど、ううん、これは。
イメージなのか。
ダメージを受け、だんだんとその存在値が薄くなってきたそんなイメージがこういう姿になって現れているのかも。
「ノワ! 離れて!」
もう、いいだろう。
彼を楽にしてあげなくちゃ。
レヒトを浄化する。
ううん、彼を、本当のレヒトの心を何とか円環に返してあげる。
でなければ、悲しい。
このまま悲しいままは嫌だ。
ここはマギアクエストの世界だった。
でも。
人が悲しみと幸福に生きる現実の世界だ。
ゲームなんかじゃない。
お遊びなんかじゃない。
だから。
あたしは両手を組んで前に突き出すようにして唱えた。
「円環の昇華!!!」
サークレットリンカネーション
円環に、レヒトの魂を還すのだ。




