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マギアクエスト!  作者: 友坂 悠
マギアクエスト!

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哀しみの勇者ノワ。

 哀しみの勇者ノワ。

 彼はここから少し離れた王国キシュガルドの第六王子だった。

 第六王子ではあったけれど他の王子に比べ母親の血統が優れていたせいか、腹違いの兄たちからは疎まれていた。


 あるとき、母であるフランソワーズ妃が大病を患った際、その薬を求めて旅をすることになったノワール・エレ・キシュガルド。

 その冒険の末、数々の功績をあげ勇者の称号を得るのだけれど。


 それがまた、兄たちの不興を買うこととなった。


 ある時、ダンジョン、漆黒の魔窟において魔獣のスタンビードがおこり、王都が危険に晒された。

 勇者としての名声を得ていたノワに兄たちは命ずる。

 漆黒の魔窟を攻略しスタンビードを収束させるように、と。


 それが兄たちの罠だとも知らず、ダンジョン攻略に向かうノワ。

 兄達より指名されパーティを組んだ仲間たち、彼らにはダンジョンの最下層においてノワールを暗殺するよう指令が出ていたのだった。


 勇者としての使命。

 王都を守ろうとする正義感。

 そして。

 兄達から好かれたい、と、そんな思いで魔窟に臨むノワだったが。


 ダンジョンボスにとどめを刺したその時だった。


 信じていた仲間達から一斉に攻撃を受けるノワ。


 そして。


 満身創痍になったノワを残し立ち去る仲間達。




 魔窟は、その最下層にノワを残したまま閉じられ。

 そして。





 魔。

 それは人の感情により増幅し、そのものの肉体を蝕む。

 特に、恐怖や欲望、恨みのような強い感情によって、より強くなり。

 最後には、人そのものを魔に変えるのだ。


 魔人、魔獣、その中にはかつて人であったものも含まれる。


 はうあう。

 このダンジョンはまだできたばっかりだろうし、ノワのイベントクエはまだ発生していないはず。

 だからこの扉の向こうにいるのはきっと初期ボスだとは思うのだけど。


 あたしはノワにはすごく同情して。

 おまけにあのビジュアル。


 マギアクエストで一番好きなキャラだった。


 だからね。


 できたらノワとは戦いたくはない。

 そう思ってて。


 扉を開ける勇気が出ない。


 もし出てくるボスがノワだったらどうしよう。

 あたしはもう二度とノワを傷つけたくない。そう思っていたのに。


 ノワは黒獣、大猫の魔獣になっていた。

 初期ボスはガーゴイル。

 悪魔のような魔獣だ。

 おまけにゴーストを二体従えているはず、で。


 扉の前で、あたしはドラコを撫でながら少し躊躇して立ちすくんでいた。

 時間にすればほんの数分であったろうけれど。

 なんだかものすごく長く感じた。



「ドラコ。ここまでありがとうね」


 あたしはドラコにハグをして、還す。

 っていうかエレメンタルクリスタルはあまり戦闘向きなドラゴンではないし。

 もしボス戦で使うのであれば、紅竜レッドクリムゾンの方が強い。


 彼女、レッドクリムゾンのアウラを召喚しようかどうしようか一瞬迷い。

 やめた。


 初期ボスであればそこまでしなくても十分勝てるはず。

 万一ノワがいたときにアウラを前面に出していたら、そのブレス一発で黒獣ノワは消し飛んでしまうだろうから。


 それは怖い。




 あたしは決意を固め、その大きな扉に手をかけた。


 きっと大丈夫、だってまだ昨日ノワにあったばっかりなんだもの。

 そう言い聞かせながら。






 ⭐︎⭐︎⭐︎



 果たして。



 漆黒の闇。

 そこには何も存在しなかった。


 え?

 まさか?


 そう目を凝らしてみるけれど。


 闇の気配は随分と薄れている。


 ガーゴイルはもうすでに霧散している?

 ゴーストなんかカケラも見えない。



 だ、と、すると。





 あたしはその大広間、本来であればダンジョンボスが立っていたであろうその場所に、黒い小さな塊がうずくまっているのに気がついた。


 って、あれって。

 まさかほんとに?


 ゆっくりと。

 カーペットのようなふかふかの床をゆっくりと踏みしめながら。

 あたしはその場所に近づいて行った。

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