魂の円環。
「ランプ!」
大広間のちょうど天井付近にランプの魔法を打ち上げる。
煌々と輝く光がその最奥の間の全体を隙間なく照らした。
漆黒の魔窟はそれでなくとも深淵と言っていいほどの暗闇をほこる。
マナや気配、そして少しの光でさえ感知して状況を視てきたあたしだったけど、念には念を入れなくちゃ、だ。
ここにいるのが本当にノワなのか、この目で見て確かめたかった。
それに、敵の魔獣が気配を消しこっそり隠れている可能性にだって警戒は必要だ。
聖なるランプのその灯りで全てを照らせば、そういった危険も察知しやすくなるのだった。
そこだけ真紅な魔法陣に彩られた絨毯が、まあるく敷き詰められ。
そのちょうど真ん中に真っ黒なボロボロの毛玉がうずくまっていた。
あたしは躊躇なくその毛玉を抱き抱える。
ああ、ああ、ああ。
かわいそうに、ノワール。
瀕死のそのボロボロは、黒い毛玉にしか見えない子猫だった。
敷き詰められた絨毯に描かれた魔法陣を鑑定魔法で調べると、どうやらそれは魔を増幅し魔獣を生み出すための魔具であるようで。
マギアクエストの世界では魔獣は自然と湧いて出てくるから、そういう可能性を考えても見なかったけど。
どうやらここがこのダンジョンの要。
魔獣を生み出している元であったらしい。
なるほどそういうことかと納得して。
でもそうしたら?
この魔法陣が作用することで瀕死のノワールの肉体は魔獣へと変換された?
そうか。
そうなのかもしれないな。
瀕死の肉体が魔獣のマナのガワによって置換され。
それによってノワールの魂は大霊に還ることなくこの世界に留まったのだ、と。
理解できた。
人は、生命は、死と共にその魂を大霊に還す。
そうしてまた混ざり合い、新しい魂として産まれ変わる。
魂の円環。
ああ、何かの宗教の知識で知ったんだろうけど、そんなセリフが頭の中に響く。
転生するってことはそうした魂の円環からは外れた行為ではあるけれど、
こうした魔獣への転生もまた、同じなんだろう。そう心の奥底で感じていた。
ああ。
ノワール。
かわいそうなノワール。
あたしはこの子を悪意の塊である黒獣にはしたくはない。
だから。
躊躇はしなかった。
あたしは自分の中のありったけのマナを彼に注ぎ。
彼の魂を元のままつなぎとめようと、そう願った。
魔獣となることで真っ赤に染まる魂を、
せめてその心だけでも浄化して救いたい、と、
あたしは命のキュアに、祈ったのだ。




