ロッタとツヴァイク魔導団①
櫓の上からツヴァイクはスツーカの砦を見つめていた。
木人形たちの配置は着々と終わりつつある。ツヴァイクは齢にして四十ほどの男であるがその実百歳を超える魔法使いである。たくわえた髭を撫でながら首尾を確認するように砦を見つめていた。
ツヴァイクはふと魔力の僅かな振動を感じた。次の瞬間何かが弾けるような音と共に一人の紅い髪の魔法使いが目の前に現れた。
すぐに護衛の木人形たちが弓を射る、矢の猛攻撃にさらされてもその魔法使いは動じることはなくすべての矢ははじき返された。
「木人形を止めろ!」
ツヴァイクが叫ぶと木人形を操る二人の魔法使いはその命に従った。
「あちらの魔法使いか?」
ツヴァイクの問いにロッタはにやりと笑って答える。
「なんの用だ、偵察にでも来たのか」
ロッタは少し驚いた。
「ふん、偵察とはもっとこそこそとするものじゃ。挨拶……いやどちらかといえば忠告に来たのじゃ」
ツヴァイクは怪訝な顔をした。
「忠告だと?」
ロッタは櫓の上の魔法使いたちを見た。若く細身の男と妖艶な女、この二人が木人形を操っているようだ。そして同じ顔の若い女、こちらは紅玉石の埋め込まれた魔杖を持っている。
「そこの二人は木人形を操ってはおらぬな……紅玉石の魔杖……戦場火焔術士か」
「やはり偵察ではないか、忠告とやらは聞かせては貰えないのか」
ツヴァイクは不満を露わに尋ねる。
「おお、すまんの……では忠告じゃ、この様な愚策ではスツーカは落とせぬ。すぐに撤退するなら追撃はせぬように儂が取り計らってやろう」
ツヴァイクは大きな声で笑った。
「うははははははは! 愚策だと? すでに二万の木人形が砦を包囲しておる、これを防ぎ切る方法があると?」
「じゃからそれが愚策じゃというに……」
ロッタはくすくすとせせら笑う声を聞いた。かすかに香る焦げ臭い匂い。ふと見るとローブの裾が焦げていた。すぐに魔法で氷結させて消す。
ロッタの苛立ちを現わすように激しい炸裂音も伴った。
ロッタは戦場火焔術士の二人を睨んだ。
「まあ怖い、睨んでいるわフラーム」
「本当、怖いわねフランメ」
二人が喋ると吐息に混じり炎が口許から漏れる。
「……ほう、炎の精霊を飲んだか……苦しかったじゃろう……」
「それがどうかしたのかしら……?」
ロッタは蔑むような冷たい視線を二人に投げる。
「……よかろう、お前達のその不敬な態度は儂が直々に行儀をしてやろう……覚悟しておけ小娘ども」
ロッタがそう言うと二人は笑った。
「小娘? 小娘ですってフラーム、聞いた?」
「聞いたわフランメ、私たち三百年以上生きてきてるのに、小娘ですって? あははははは」
ロッタは動じることなく睨み付ける。
「それがどうした? 小娘ども」
二人はロッタの気迫に思わず怯んで黙り込んだ。
「儂は水術使いじゃがお前ら程度の炎術は使える……じゃがの今回は行儀をしてやるでな、水術のみで相手をしてやろう。その意味をよく考えてくるのだぞ」




