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魔法遣いローテアウゼンのキセキ  作者: 福山 晃
第四章 決戦! スツーカ砦
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北の魔法使い②

 ワサロヴラーシェはくすりと笑って答えた。

「こちらはローテアウゼン様と護衛の騎士様です」

「……ほう、ローテアウゼンとは伝承に聞いた名だな」

 ワサロヴラーシェはまたくすくすと笑う。

「ご本人様ですよ」

「………………なに?……あ……あの十歳にして三大禁忌の行使に成功したという黒い森の神童と呼ばれた、あのローテアウゼン様か?」

 ワサロヴラーシェは頷いた。

「これは失礼致しました、私はスケベ・ニールゲン、ここより遙か北、砂の王国の魔法使いであります。お会い出来て光栄です」

 スケベはそう言って深く頭を下げた。

「そう(かしこ)まることはない、昔のことであって今の儂は平凡な魔法使いじゃ。その名は聞いたことがある、たしかオーランドの商業都市にその名があったような……」

 スケベは嬉しそうに目を輝かせた。

「はい、私は街の筆頭魔導士の位を賜り、街の名を冠する名を名乗ることを許されたのであります。ローテアウゼン様にその名を呼ばれることは大変光栄であります」

 ロッタはやはり多くの伝説を持つ魔法使いらしく、今でもこうしてその名を知る者が多いのは今さらながらに驚かされる。

「ところでローテアウゼン様はここ数百年、ずっとブルーノに居られたと聞いていました。ブルーノへ行くことがあれば面会させていただこうと思っておりましたが、今日は何故にこのような所へ……?」

「……うむ、弟子に後を任せたでな、里帰りをしておる途中に寄ったまでじゃ」

「里帰り……? ですか……?」

 そう言ってスケベはタケゾウを見た。

「……ああ、そういうことでありましたか」

 ロッタは苦笑いを浮かべた。

「何が……そういうことなのかは知らぬが、違うぞ」

 ロッタとの話も終わったようなので、俺はちょっとした質問をしたい衝動にかられている。

「ちょっといいか? 俺はこのロッタの護衛をしている剣士でタケゾウという者なのだが……すまぬがちょっと名前がうまく聞き取れなくてな、もう一度いいだろうか?」

 スケベはタケゾウに向き直ると頭を下げる。

「ローテアウゼン様を護衛されておるとはさぞ高名な剣士様なのでしょう、お聞き苦しい紹介をしてしまったようで申し訳ありません、私の名はスケベ・ニールゲンであります」

 そう言うと再び頭を下げた。

「ええと……そのスケベというのが君の名だろうか」

 スケベは怪訝な顔をする。

「ええ、スケベは私の名ですが」

「すると、君はスケベなのか?」

「はあ……私はスケベですが?」

「つまり君はスケベと呼ばれて……あだっ!」

 突然に向こう脛を蹴られた、蹴ったのは……もちろんロッタだ。

「やめんか! 馬鹿たれが! (ふう)の悪い!」

「なんだよ、ちょっと確認をしただけじゃないか」

「何回もしつこいのじゃ! まったくもって風の悪い」

 ロッタはそう言ってさらに俺の脛を蹴った。

「すまんのスケベ殿、この男の無礼を許してやってくれ。後で儂がよく言っておくでな」

「無礼などととんでもない、スケベは我が故郷の名、スケベと呼ばれることは我が誉れであります」

「……だ、そうだが?」

 そう言ってロッタを見ると凶悪な顔で俺を睨んだ。直後にまた脛に激痛がはしる。

「いてえっ!」

 ロッタはぷいとそっぽを向いて大きなため息を吐く。

「まったく風の悪い……もうよいわ、スケベ殿、儂と挨拶に行ってみんか?」

 スケベは笑った。

「ツヴァイク魔導団のやつらにですか? やめておきます、私が行けばいきなり荒事になってしまうでしょう」

「そうか、では一人で行ってこよう」

「おい、俺も連れて行け」

 ロッタは俺を一瞥すると

「い、や、じゃ!」

 そう言って舌を出した。

「はあ? 何言ってんだよ、一人で敵陣になど行かせられんぞ」

「……行ってくる」

 そう言った直後、ロッタの体は弾けるように消えた。

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