ユハとケルナ①
一晩明けていつものようにケルナのこしらえた朝食を頂いているとロッタが眠そうに下りてきて俺の隣の席に着いた。
「おはようロッタ」
「んーおはようタケゾウ……ふわぁぁぁぁ」
ロッタは大きなあくびをしながら唇をたたいた。
「眠そうだな……ロッタ」
「んむ、ケルナに魔法を教えるのでな……ひとまず座学で、と思ったのじゃが……」
「難儀なのか……?」
「んー何というかな……出来ておるのにまるで理解しておらんという……かのう」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃ……糸口さえ見つかればこんなものは一気に理解出来るものよ……しかし」
ロッタはまた唇をたたく。
「ふわ……わしも少し本気にならねばなるまいな」
「ははは……そうか、まあ無理はしないようにしてくれよ」
ロッタはふんと鼻で笑った。
「……して、そっちはどうなのじゃ」
そう言ってロッタはカペラが持ってきた茶を受け取り口を付ける。
「ここの砦の構造と、いままでの戦いのことを教えてもらった」
「……ほう」
「これまでは通常の兵力で五千から七千程度の敵を撃退してきたそうだ」
「千七百の兵でか?」
「ああ」
「それはなかなかじゃの、士気も高そうじゃし噂に違わぬ屈強な自警団とみえる」
ロッタは茶を置くとふうと息を吐く。
「それでな、ここをあの木人形二万で攻めるならどう攻めるかと俺が問いを投げるとこれが白熱してな、こっちもかなり遅くなった……」
ロッタは俺を見てにやりと笑った。
「やつらの兵力はあの二万だけではないぞ」
「ああ、俺なら他に何人か手練れを雇う」
ロッタは頷くとルーチェとカペラの運んできた朝食に手を付けた。
玄関の戸が開く音がして、見るとユハが入ってきた。
「よう、早いなユハ」
「おはようございます、旦那」
ユハはそう言って俺の隣へとやってきた。
「あ、おはようございますユハさん」
台所からケルナが飛んできた。が、ユハは目も合わさず「ああ」と返事をしただけだった。
「何かお出ししましょうか? 朝食は食べてきましたか?」
ユハは俯いたまま「いや……いい」とだけ返事をする。
ケルナは続けて何かを言おうとしたが、言葉を飲み込み台所へと引き返していく。戸をくぐる前に一度だけこちらを振り返ったがすぐに向き直り台所の奥へと消えていった。
俺はこのやりとりを見ながら何とも言いがたい違和感を感じたが深く考えることはなかった。
「こんな早くにどうした?」
俺はユハに聞いてみた。
「旦那、これからエルボーゲンを見に行きましょう。マンソンさんもここに来る前に行って呼んでおきました」
エルボーゲンとは一度だけ敵の侵入を許したことのある土塁の部分をそう呼称しているそうだ。
「そうだな、実際に行ってみたほうがいい、すぐに支度しよう」
「じゃあ表で待ってます」
ユハはそういうと立ち上がり出て行った。
ふと見ると台所へと続く戸からケルナが見送っていたが心なしか寂しそうに見えた。




