コリーンのイセッタ婆さん⑤
ロッタに置いて行かれてしまった俺は皆が飛び立っていった床の縁から遠くに見えるホウキに乗った生徒達やロッタの姿を眺めていた。
ここへ来るまでに見たのもここの生徒だったのだろう。
何やら特別な意味があるとかで俺を乗せることは出来ないそうだ。どんな理由かは分からないが俺はこの地の魔法使いについてはほんとに何も知らない。ロッタやオウカから聞いた僅かな情報だけが俺の知る知識の全てだ。
なんにせよ郷に入っては郷に従えがヒノモトの流儀だ、ここは黙って待つとしよう。
しばらく待っていると皆がこちらに向いて飛んできた。もう戻ってくるのだろう、俺は部屋の隅により着地の場所を空けた。
生徒たちは競争するように先を競って飛び込んできた。奇声を発したり躓いて転んだりする者もいればおしとやかに着地する者もいるし、そこに制御不能なまま突っ込んでくる者もいる。
ロッタと先輩も戻ってきた。
「よーし、ホウキを片付けたら二階の講義室へ移動! 次の講義の準備をして待つように!」
先輩が劇を飛ばすと生徒たちは一斉に大きな返事で答えた。
片付けをする生徒たちを見ていると俺の前に一人の生徒がやってきた。
ロッタと同じような黒いローブを羽織り亜麻色の綺麗な長い髪、優しく愛嬌のある顔立ちの可愛らしい娘だ。見た目の年頃はロッタと同じくらい、ここでは恐らく見た目通りの年齢なのだろう。
俺を見て微笑むと俺の剣をまじまじと覗き込んだ。
「その剣、かっこいいですね! 剣士の方ですか?」
「ん? ああ、そうだ。ずっと東の国からやってきた剣士だ」
「そうですか、素敵ですね」
そう言うと手を振って皆の後を追って駆けていった。
「またねー!」
振り返るとそう言ってまた手を振った。
俺も一応手を振って応えた。
ふと殺気を感じて横を見るとロッタがこちらを見ている。
「おお、ロッタか、急な教義お疲れ様だったな」
ロッタは何やら不満そうな顔で俺を見続けている。
「……その剣、かっこいいですね」
それだけ言うと扉を開けて部屋を出て行った。
「お、おう。まあな……」
先輩が俺に歩み寄って肩を叩く。
「さ、タケゾウ君も一緒に職務室へ行こう。君にもいろいろと話を聞きたい」




