コリーンのイセッタ婆さん⑥
一階にある職務室と呼ばれる部屋へと俺たちは移動した。ここは教員が雑務などの仕事をするための部屋で、先ほど俺たちを案内してくれたジルバの他教員らしき人が三人ばかり机に着いて何やら書きものをしている。
「ロズにはここで少しの間教員をやって欲しいのだ」
先輩が唐突に切り出すがロッタは少し困ったような顔で返答を渋った。
「ロズよ、わしは出来ない者は切り捨てる今までの魔法使いの教え方は変えていきたいのじゃ。出来ない者も出来るまで教える、それがここのやり方じゃ」
ロッタは何やら少し興味を持ったようだ。
「魔法というものは持って生まれた才能が全て、こうすればこんなことが出来ると感覚的に理解出来ねば魔法は使えず、そしてほとんどの場合水術なら水術、火術なら火術とひとつの術系統しか公使することは出来ぬ。しかしロズやわしのようにあらゆる術系統でも行使出来る魔法使いもおる。その違いはなんじゃ?」
ロッタは少し考えた。
「改めて考えてみるが、よう分からん」
先輩はくすりと笑った。
「皆はわしやロズのような者を天才と言う。天才とは凡人が理解の及ばぬ者を形容するときに用いる便利な言葉じゃ。その実、違いなどありはせんのじゃ。違うとすれば、たまたまわしらは火の言葉も水の言葉も風の言葉も知っていたというだけじゃ。つまり感覚的な理解の部分を紐解いて言語として人に伝えることが出来れば半人前の水術使いが半人前なりに水術と火術を使うようになれるかも知れぬ」
ロッタは頷いた。
「なるほどのう、儂は弟子を取っても使える術を極限まで究めることのみを教えてきたが他の術系統を使ってみるようには教えなんだのう」
「どうじゃ? 面白そうじゃろ、やってみたくなったか? ジルバの講義を手伝ってやってくれ、わしの孫じゃから有能じゃぞ」
先輩の言葉が聞こえたらしくジルバが困惑の顔を向けた。
「校長、孫ではなくて曾孫ですよ」
「おお、そうじゃったそうじゃった」
ロッタはジルバに驚きの顔を向けた。
「なんと、リズ先輩の曾孫とな……ほお、なんとなく先輩の若い頃の面影が見える……!!」
ロッタは慌てた様子で先輩を見た。
「ちょ、ちょっと待て、先輩……こここ、子供を産んだのか?!」
「ん? 当たり前じゃろうが、わしの娘の娘の娘がわしの曾孫じゃ」




