壁
「ハァ、ハァ」
ゲイルは緊張で息が詰まりそうだった。
普段のような雑魚相手だとそこまで緊張はしないが、今回の敵は明らかに格上。もう何度も敗北を経験している。
荒い息のせいでリンクスーツのバイザーが白く曇る。もう周りに味方は唯の一機もいない。
すべて奴に落とされ、残ったのはゲイル一人だった。
今は何とかアステロイドベルトに敵のレーダーをごまかして身を隠せているが、時間が経てば肉眼で見つけ出されてしまうだろう。
うっとおしくなった曇りを拭うため、リンクスーツのメット部分を外してゴシゴシと布で拭き、頭を振って汗を散らす。
その時を狙ってたかの様にアラートが喧しく鳴り響いた。
「何ぃっ⁉後ろだって⁉いつの間に背後を取られたんだ!」
検討をつけられてるのか敵の弾幕はゲイルとその周りにあるアステロイドを吹き飛ばしていった。
「グアァー」
これでもかというおびただしい量の弾幕が晴れたあとに残ってるのは、砕かれたアステロイドと細切れになった鉄くずのみであった。
yourdide
◆◇◆
「フッフーン。まーた、あたしの勝ちねー。ちょっと見ない間に皆腕を落としたんじゃないかしら?」
「何言ってんすか。宗美隊長は今まで負け知らずでしょうが。実戦でもシミュレーションでも」
先程ゲイルを撃墜したのはサジタリウスリーダーを駆る成瀬宗美。今の戦いは宗美対全員による戦闘訓練なのだった。
結果は二十分で全滅。
開始五分で隊員たちがやられ、十分間隊長たちが粘り、残り五分はゲイルが死ぬ気で逃げていた。
「あっらー?一ヶ月前のゲイルたちならキャット小隊だけで三十分は持たせていたわ。全員でかかってきてそれよりも短いってのはどういうことなのかしらねー?」
「ぐっ」
勝者が敗者を煽りまくる。しかし以前の敗戦結果に目を通してあったゲイルは、それが嘘ではないと分かるためぐうの音も出なかった。
「でもさぁ……」
「確かに宗美の言うことは最もだ。今回は我々も十分に連携が取れたとは言えなかった」
「さっきのでサジタリウスリーダーの動きもある程度掴めてきたから、次はもっと善戦できるはずよ」
「……」
やる気のないゲイルを残して次の作戦会議のためにクラスメイトたちは場所を移して行った。
「ゲイルどーしたのよ。いつものあなたなら真っ先にいくじゃないの」
「いやいや、俺が超慎重派なのは隊長なら分かるでしょ」
「その隊長ってのやめてくれないかしら。なんか壁みたいなの感じるのよ」
近くにあった椅子に腰掛けながら宗美はそう言った。




