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22話 変化

 変化があったのは、兄貴が魔術大学に入学した頃からだ。

 俺が中等部三年だったときのこと。



 

 兄貴は相変わらず家に帰るのはえらく遅かったが、表情がどこか柔らかかった。


 普段、音楽を聞かない兄貴がイヤホンを付けていた。


 兄貴の部屋から楽しそうに部屋の外に漏れるぐらいの声量で電話をしていた。

 そのとき、久しぶりに兄貴の笑った声を聞いた。


 いつも、休日は昼過ぎに起き、平日学校に行くときはいつもギリギリまで寝ていた。

 だったのに、休日に早く起き、身だしなみを整えて外出するようになった。

 平日も余裕をもって起き、以前よりも丹念に身だしなみを整えるようになった。

 

 母と俺は兄貴の変化にたいして、これは女性関係ではなかろうか。との結論をだした。

 この話をするとき、母は久しぶりに本当に嬉しそうに笑っていた。


 相変わらず、兄貴は大学でも「パーフェクト」の名に恥じない実績を上げまくっていたが、以前と違い家では明るくなった。

 暗くなる以前と比べても、よく自分のことを話すようになったし、かなり丸くなった。


 そして、俺が高等部を卒業する年、兄貴も大学を卒業した。

 卒業後は、兄貴は大学の研究室に残り、研究を続ける。という話は聞いていた。

 しかし、その卒業後すぐに、兄貴は家に婚約者を連れてきた。

 卒業を機に結婚するそうだ。

 母は大歓迎のようだった。

 しかし、父は反対した。

 今まで家のことには無関心だった父が、だ。

 兄貴は聞いた。「何がいけないのか、教えて欲しい。年齢? それとも、まだ二人とも仕事を始めるばかりだから?」


 父は首を振った。


「お前には魔術界で由緒正しい家の人の結婚相手が決定しているからだ」


 その場の四人は固まった。


 始めて聞いたことだったから。


 父は家にたいして何もしないくせに、すでに兄貴の結婚相手も、後で分かったことだが、俺の結婚相手も決めていた。


 父はことの次第をとくとくと、表情一つ変えず話した。


 兄貴は憤った。


 ふざけるな、と。


「これまで、あんたは俺たち家族にたいして何もしてこなかったじゃないか! 自分の給料はほとんど、自分のことのために使って家にいれず! そのせいで俺も、紀文も、母さんも家のためにバイトをして生活費を稼いでいたのに! なんだ? 今さら父親面するなら、まだ許せる。それが、てめえ! 子供が自分の所有物だとでも思ってんのか!? まして、家族に何の相談もなしにそんな重要なことを決めたのか!? 今すぐ撤回しろ! 相手の家の人に謝って、その話、無かったことにしろ! 一介の魔術師なら責任を取るべきだ!」


 これほど兄貴が怒ったのは前にも後にもなかった。

  

 しかし、父は表情一つ変えず言った。


「わざわざ、俺が、子どもの、お前たちの為に、選んでやったんだ。感謝こそされ、恨まれる筋はないな。まして何だ。その女。

西川? そんなちっぽけな魔術家の魔術師と結婚するなど、有り得ん! そちらこそ、今すぐその婚約を取り消せ。今ならまだ、俺が無かったことにしてやる」


 母は青ざめ、わなわなと震えている。

 

 兄貴は顔を真っ赤にしてつかみかかった。


 この後、俺は怒る兄貴を必死でなだめ、止めた。父は魔術界において、それなりの地位を得ている。

 もし殴りでもすれば、この後どうなるか、分からなかった。

 最後まで読んでくださり、ありがとうございます!

 過去編パート2です。

 過去編はあと2、3話ぐらい続くと思います。


 次話も頑張ります!

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