20話 遭遇
さて、山に入っていくが道はない。
頼りは松島さんの位置特定魔術。
松島さんを先頭に、間に杖をついて登る明音、後ろが僕。
助かるのは、僕が通るときには既に二人が通っているので、少し歩きやすいこと。
だが、山は樹木が整備されていない為か所狭しと乱立しており、地面には日光がほとんどはいらず、暗く、鬱蒼としている。
日光が地面まで届かないせいか、季節のためか、草はたいして成長していない。
歩いている間、特に何事もなくかった。
しかし、杖をついて山を登る明音がつまずくたびに、僕がカバーするという構図ができあがっていた。
さて、到着した。
その場所は今までと違い、木が伐採されており、日光が地面まで届いている。
明るい。
そんな場所に、小さな畑と一軒家。
ウッドハウス、そんな表現がぴったりくる家だ。
高さ的に一階建てだろう。
壁、屋根共に木。
質素な雰囲気が漂う。
窓が一つ。カーテンが開いているので少し中の様子が窺える。
窓際で、一人、読書をする少女が見えた。
見た目に関して言えば、律そっくりだ。おそらく、彼女が紀文の娘なのだろう。
彼女は読書に集中しているようで、こちらには気づかない。
しばらくすると、カーテンが閉められた。
読書をしている少女が閉めたのではなかった。となると、おそらく紀文か。
「まったく、アポなしで突撃してくるなんて、失礼だなあ」
紀文はニヤニヤしながらドアを開けて現れた。
左肩が明らかに膨らんでいる。
魔術の治療ができないのは本当のようだ。
「ええ、しかし、どうやってアポを取れば良かったのかしら?」
負けじと明音も応酬する。
「確かに! ここには電話とか、そういう類が一切ないからな。伝書鳩もないしな!」
はっはっはっと快活に笑う紀文だが、これも挑発の一種なのだろうか。
だが、明音は冷静そのものだ。
「そう、まあいいわ。そんなことは今は関係無い。重要な話をしましょう、弓木 紀文」
明音は単刀直入に本題に入るつもりだ。
紀文はニヤニヤしていたのを、ピタリと止め、真顔になった。
「話とは何のことかな?」
「この戦争を終わらせるために、協力して欲しい」
紀文はキョトンとしていたが、突然笑い出した。
「ありえない! この戦争を起こしたのは俺だぜ!? 終わらせるわけないだろう? こいつは傑作だ!」
ここまでは明音の予想の範囲内。
問題は、戦争を起こしたのが一時的な感情のためかどうかだ。
「そうね。確かに戦争を起こしたのは、あなたなのは薄々こっちも気づいていたわ。重要なのは、あなたが魔術界の戦争の危険性を理解しているかどうか」
「そうだな。俺も魔術界の戦争の危険性は重々承知だ」
「だったら、私たちと戦争をーー!」
「だが、だからこそ、この戦争は俺たち兄弟の目的のためには必要なことさ」
目的。
前回も紀文は目的という言葉を使った。
魔術界の危険より、重要な目的なんて一介の魔術師にあるはずがない。
兄弟?
父さんのことか?
「丁度いいことに、紀彦君もいるな。そう、兄弟ってのは俺と紀彦君の父さん、紀隆のことだ。紀彦君、教えてやる。俺たち兄弟の目的は」
「この魔術界をぶっ潰すことだ」
20話です。
21話もがんばります!




