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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
6話:道化師にも戦場はある
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その15・After

[クロノ]

槍と自分の魔力を駆使して上手いこと崖を登る。

クロノ「だぁっしょ‼︎よいっしょい‼︎っしゃあ‼︎」

マリア「クロノ!はい!」

縁のところで、マリアが手を伸ばす。

その手を掴んで引き上げてもらう。

クロノ「っはぁ‼︎助かった‼︎っはぁちくしょう‼︎」

地面に着いて速攻大の字に寝転ぶ。

地面に寝転がれることのありがたさを肌と心で感じた。

テラー「よくもまぁ生きてたもんだ。ほれ。」

槍を投げてくれたテラーが手を差し出す。

クロノ「あぁ、はいはい。」

持ってた槍をテラーに返す。

テラー「あ、いや…まぁ、いいか。ほれ立てるか。」

もう一度テラーが手を差し出す。

クロノ「あぁ、無理。今立てない。立ちたくない。」

テラー「あっそ。」

クロノ「サンキュー、テラー。あんたがいなかったら今頃グッチョリだわ。」

テラー「いいんだよ。カミヅキ・クロノさんよ。基本俺様はノリのいい奴は好きなんだ。」

クロノ「あれ?」

(なぜその名前を?)

テラー「緊急事態だっつってマリアが教えてくれたんだよ。」

マリアの方を見る。

すると、マリアが振りかぶっていた。

クロノ「え?」

マリアの強烈な右ストレートが顔面に突き刺さる。

唐突な出来事に体が動かなかった。

クロノ「グッボォ⁉︎」

地面に後頭部強打。

正直こっちの方が痛かったが、なぜ殴られたし。

クロノ「マリア⁉︎なにして」

マリア「何はこっちのセリフですよこのアホンダラ‼︎」

ものすごい剣幕で怒られる。

マリア「なんで私たちに言ってくれなかったんですか⁉︎なんで1人で行っちゃうんですか⁉︎」

クロノ「なんでって…これは俺とアリウスの問題で…」

マリア「えぇ、そうでしょうよ‼︎そうでしょうけどね‼︎私たちだって無関係ではないんですよ‼︎」

クロノ「無関係ってだって…」

マリア「だってもクソもねぇですよアホンダラ‼︎私だってまだ日が浅いですけど、仲間なんですよ‼︎もうちょっとくらい頼ってくださいよ‼︎そんなですか⁉︎そんな頼りないですか⁉︎」

クロノ「それは違う!断じて違う!ただ…その…」

マリア「その…なんですか?」

クロノ「危険じゃん?今回の事件…」

マリア「なおさらですよ‼︎何のために私らがいると思ってるんですか‼︎」

クロノ「無関係な人は巻き込まないようにって…」

マリア「んなのはそっちの都合でしょうが‼︎こっちには、巻き込まれたい人がいるんですよ‼︎大事な仲間や先輩が事件に突っ込んでいってるのを、ただ見てるだけなのは嫌なんですよ‼︎分かります⁉︎」

正直言うと、分からない。

そんなわざわさ危険な所に向かうことないじゃないか。

仲間の為とはいえ、自分の身を危険に晒すなんてどうかしてる。

(でもそれって、俺自身にブーメランなんだよなぁ…)

だから反論はしない。

かといって、討論放棄してマリアの言っていることをその辺にポイってのもしたくはない。

そうされたい人もいるんだろう。

ミランダやモニカやらにも言われた。

もう少し周りを頼れと。

俺はそんなに周りを頼っていないか。

クロノ「そうだな。悪かった。でもアレだ。俺だって、あんたらが心配なんだってことも分かってくれ。」

マリア「それはまぁ、私だって分かってますけど…」

クロノ「ありがとう。んで、テラー。俺の名前あんまり言いふらしてほしくはないんだが…」

テラー「しねぇよ。お前も俺の本名言いふらさないんならな。」

クロノ「いや、知らねぇよ。」

テラー「あれ?そうだっけ?」

ロナルド「あの〜…」

ロナルドが割って入ってくる。

クロノ「ん?あぁ。」

アリウスが膝をついてガックリと座っている。

クロノ「で?どうなの、アリウス?まだやる?俺は別に構わんが…」

アリウス「なんで助けたの…?」

クロノ「は?」

アリウス「不老不死なんだから助けなくても死なないのに…あのまま落っこちてた方が好都合だったのに…」

クロノ「アーホ。落っこちてたら話の続きができねぇだろうが。それに、俺は人が崖から落っこちるのが嫌いなんだ。」

アリウス「だけど…」

クロノ「落っこちた方がお前を倒しやすいってか?言ったろ?効率じゃねぇって。効率厨はゲームの中だけで十分だ。嫌いな奴でも、ゲスい奴でも、クズでもゴミでも、とりあえず対等だ。対等だから、しっかり話し合う。相手が悪かどうか決める。あんたはまだその途中だ。確かにあんたは恋の為にと人の命を弄んだ。俺からしたら最低クズ野郎の生きる価値無しだ。殺したいほどにな。改心しても許す気が起きん。だが目的がな、やはり悪ではねぇんだ。手段は圧倒的にひどい。圧倒的すぎる。だがその目的は、ただ好きな人に向かって頑張る恋する乙女のそれだ。殺す云々はともかくな。そこは人の趣味の話でしかねぇから善悪の区別はつけられない。そう考えると、殺すんじゃなくて死ぬほどぶん殴って反省させる方が正しい方法なんじゃないのかってな。あともう一個言うことがあるとすれば、だ…」

アリウス「?」

クロノ「俺だって男だからな。女が傷つくのは見たくないんだ。女に限らず、人間は皆笑顔であるべきだ。笑ってる人の顔を見てみろ。自分が1人で笑ってるより、誰かと一緒の方がより長く笑えるだろ?変な友人と遊んで、何かを拍子にそいつらと一緒に笑ってみろ。お互いの笑いが笑いを呼ぶぜ。」

そういう日々を向こうの世界で送りたかったんだが。

アリウス「私は…お前を殺そうとしたのに…」

クロノ「知るかよ。俺はな、博愛主義の自己犠牲精神の塊だぜ?」

テラー「博愛って誰でも等しく愛すって意味だろ?悪人を嫌うとか言ってる時点で…」

クロノ「おいおい、勘違いするなよ?確かに嫌いだがよ。好きな上で嫌いなんだ。基本的に好きじゃない奴はいない。好きな上で、そいつの行動や精神が嫌いってなだけだ。」

テラー「それって普通のことなんじゃ…」

クロノ「ある街に人を殺すのが大好きな殺人犯がいて、そいつは毎晩街を出歩いては獲物を探し、見つからなければ民家に押し入ってまで殺しをする悪魔のような男だった。どう思う?」

テラー「許しておけるわけねぇだろ、そんなクソ野郎。」

クロノ「あんたのそのクソ野郎に、ちょっとでも好きの成分はあるか?」

テラー「…いや、ないな。絶対ない。」

クロノ「普通はそうだ。町民からしたら、次は自分が殺されるかもしれない。もしくは、あんたのような正義漢なら、そんな悪行許しておけるわけがない。完全な悪人だ。好きになれる奴なんていない。でもな、そいつにだって何か好きになれる何かがあるかもしれない。実はそいつは花が好きで、家には可愛らしい小さな花がたくさんあったり。一個デカすぎる悪があると、そういう小さな可愛らしさは消えちまうもんだ。そこまでしっかり吟味する。すると、もしかしたらこいつってこうなんじゃないかっていう推測が生まれる。推測ってことは可能性だ。そいつが悪人、善人。それ以外にも、色んな可能性が生まれる。だから、大事なんだよ、人を好きになるってのは。」

テラー「難しい話だなぁ。」

クロノ「俺なりの哲学みたいなもんだ。」

テラー「哲学?」

クロノ「俺もよく知らん。そんでアリウス。どうなんだ?」

アリウスが花畑の真ん中に落ちている剣を見る。

アリウス「私の負けだ。」

ロナルド「アリウス…」

アリウス「私だって1人の戦士。戦いの最中に剣を奪われ、使われるなんて戦士として敗北だ。」

クロノ「あらら。意外とそういうとこ律儀なのな。」

アリウス「あぁ。私はクロノのことを諦めるよ。もう関わらない。せめて、今回の事件のことを誰にも言わないでほしいな。もう君に関わらないと約束するから。」

クロノ「言いふらさないってのは別にいいけどよ。関わらない必要はないんだぞ?」

アリウス「え?」

テラー「おいおいクロノ、あんたどういうつもりよ?」

クロノ「俺は別に自分の命が狙われるのが嫌なんじゃないんだよ。なんだったら始めから俺を殺す為に俺を呼ぶなり俺に会いに来るなりすればいいんだ。それで嫌がりはするだろうが、嫌いになるつもりはない。俺はその辺の関係さえ除けば、アリウスとはいい友達になれそうだと思うけどね。」

アリウス「クロノ…!」

クロノ「ただの一般市民が英雄神に対して言うのは身の程知らずかも知れんが、俺と友達になってくれたら嬉しいな。会いたい時に会いに来ればいいしさ。」

握手のつもりで手を差し出す。

アリウス「クロノ…手…」

クロノ「手?」

アリウス「折れてる。」

クロノ「え?」

差し出した自分の左手を見る。

真っ直ぐ伸びているはずの左手は異様な方向に曲がっている。

クロノ「いっだあああああああああああああああ‼︎‼︎」

折れていると頭で理解した瞬間、全身を物凄い痛みが覆う。

テラー「クロノ⁉︎なにどうした⁉︎」

マリア「これあちこち骨が折れてます‼︎全身ほとんどイッちゃってます‼︎」

アリウス「カウンターだ‼︎私の偽装詠唱をカウンターした影響で…」

ってことはあの時点で体のほとんどが折れていた可能性がある。

アドレナリンというやつか、物事に集中しすぎていると痛みを感じなくなり後になって痛みに気付くということが、例えば交通事故の時なんかにあるらしい。

これがそれか。




マリアの素晴らしい治癒魔法により、たった5時間で怪我は完治した。

まだ痛みのせいでできた疲れなんかは抜け切れてはいないが。

数時間ほど医務室のベッドで大人しくしていた所にマリアとテラーが入ってくる。

テラー「調子はどうだい?」

クロノ「悪くはないかな。」

テラー「そ。俺様は今日でもう帰ろうかと思う。」

クロノ「あれ、そうなの?」

テラー「大会が中止になった以上ここにいる理由はねぇし、嫁と娘を無駄に置いてきたまんまにするわけにもいかねぇしな。」

クロノ「嫁…?」

テラー「言ってなかったっけ?俺既婚者だよ?」

クロノ「ウッソだぁ‼︎お前絶対独身だよ‼︎」

テラー「失礼だなお前。2人の子を持つお父様だぞ?」

クロノ「なん…だと…⁉︎おま…」

絶対結婚できないと思ってたのに。

テラー「お前もさっさと結婚しな。意外と悪くないぜ?」

クロノ「なぁ。お前のその俺様だとかちょいナルシスト入った性格って…」

テラー「あぁ、演技だ。」

やっぱりか。

子持ちのお父さんが俺様だとか言うはずがないもんな。

テラー「身バレを防ぐいい方法だぜ?」

クロノ「くそぉ…」

テラー「それじゃあな。」

クロノ「なぁ、もう二個いいか?」

テラー「どうした?」

クロノ「キッドはどうなってるんだ?」

テラー「あぁ、あいつはもう少しかかるそうだ。なんでも、ロナルドがちょっとやそっとじゃあ催眠が解けないように割とめんどい手法でやったらしく、それの解除もめんどくさいんだそうだ。」

そんな理由が。

テラー「お前が村に戻るのには間に合わんさ。で、2個目は?」

クロノ「本名教えて。」

テラー「………却下。それじゃ。」

医務室のドアを開けて出て行った。

マリア「仲いいですねぇ。」

クロノ「そうか?」

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