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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
6話:道化師にも戦場はある
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その14・Arius

[クロノ]

寝ているマリアを起こさないように医務室を出る。

夜だからかあの事件の後だからか、街はとても静かだ。

(それもそうか。あんなのの後じゃあ誰だってお祭り騒ぎできるわけがない。)

それはそれで好都合だ。

人目を気にする必要がなくなる。

誰かに伝えるべきかと思ったが、アリウスに対する思いがそれを妨げたのか忘れさせたのかは分からない。

誰にも伝えずに街を出た。

外れの森に向かう。

魔獣には夜行性の種族もいたはずだが、遭遇しない。

その代わり、魔獣の死体とは何体も遭遇した。

(誰かが通ったのか?)

まぁ、想像はつく。

花畑に着いた。

リーが花畑の中心で座って空の月を見上げ、その横に剣が突き刺さっている。

その姿はまさしく幻想的で、これを写真にしたら売れそうだというくらいの図だ。

クロノ「リー。」

リー「…」

返事がない。

クロノ「…アリウス。」

アリウス「ねぇ。」

クロノ「なんだ?」

アリウス「運命ってあなたは信じるかしら?」

クロノ「運命?」

アリウス「そう。」

クロノ「さぁな。あるんじゃないのか?」

アリウス「私とあなたが出会えたのは運命なのかもね。」

クロノ「運命ね…」

(だとしたら、俺はもっとマシな会い方でも良かったと思うが。)

クロノ「なぁ、色々聞きたいことあんだけどさ。」

アリウス「なに?」

クロノ「今回の諸々のこと。初めから最後まで。洗いざらい。」

アリウス「気づいてたんだ。」

クロノ「俺は仲間に恵まれるタイプの人間でな。色んなやつが違和感感じてたんだと。」

アリウス「ふ〜ん。」

クロノ「で、何がどうなって今こんな状況なのか、聞かせてくれるか?」

アリウスが空を見つめるのをやめ、俯く。

アリウス「昔、私は不老不死にさせられたわ。好きだった人を殺したくて、殺しただけなのに。初めは嬉しかったの。これでこの先好きな人ができたらたくさん殺せるって。でも実際、不老不死なんて呪いでしかないわ。何百年も現れなかった時なんか自殺しようかとも思ったほど。だけど死ぬことは許されない。だから闘技大会を開いたの強い人を見つける為に。全国から猛者を集めて。もしかしたらその中に、私の求める強い人が現れてくれるかもしれない。強くても戦えない人を殺したくないの。でも戦える人となら、すぐにでも殺せる。でもすぐには見つからなかったわ。みんなどこか足りない人ばかり。でもその何年も後、とうとうあなたを見つけた。何となく気分で出向いたレギオン討伐に、レギオン退治に多大な貢献をした男がいるって聞いてすぐに探したけど、全然見つけられなかった。ずっとずっと探し続けて、ようやくあなたの居場所が分かって、手紙を送ったの。」

クロノ「ほーん。」

アリウス「なんか恥ずかしいわね…」

アリウスが照れたような仕草をする。

アリウス「だって私があなたのこと好きだってバレちゃったってことで…」

クロノ「好きって…要は殺すって意味だろ?」

アリウス「うん…」

恥ずかしそうに顔を赤らめ、顔を伏せる。

クロノ「そのためのダミーの初出場者?」

アリウス「うん…」

クロノ「そのためのキッドマンへの催眠?」

アリウス「うん…」

クロノ「じゃああのピエロの言ってた病気の妹ってのは…」

アリウス「嘘よ。その設定の方があなたを信用させやすいでしょ?」

(なんとまぁ…道化師とは俺のことだったとは…)

クロノ「上手いこと手の平の上で踊らされてたってわけか。」

アリウス「そういう騙されやすいところも含めて好きよ。」

この場合は殺したい、という意味なのだろう。

クロノ「キッドマンは?ハゼットだって強いぞ?」

アリウス「キッドマンはまだ私の求める強さに来てないし、ハゼットは私の求める強さとは別のものだわ。あなたのような強さを求めてたの。」

クロノ「俺の?」

アリウス「殺そうと思ったら迷いなく相手を殺すことができる…ただ剣の腕があるんじゃなくて、心も強くできているあなただったわ。」

クロノ「あの路地裏での事件か?」

アリウス「あれもね、私が仕向けたの。」

(は?)

それは初耳だ。

アリウス「食い逃げまではあいつが勝手に行ったことよ。その後にあいつの身柄を私が引き取って、お使いに行かせた召使いをあなたが通りがかるタイミングで襲うように仕向けたの。ちょっと記憶をいじってね。」

クロノ「記憶を…?」

アリウス「そう。『私の指示で襲う』っていうのと、『次に悪いことしたら命はない』という部分だけ。『召使いを襲って金を奪う』っていう部分だけ残ったあいつはそのまま実行して、そこにあなたが通りがかったの。」

クロノ「ってことは…あいつは何も悪くないんじゃ…」

それはつまり、折角改心したのかもしれない男を殺したということになる。

悪かったが改心して善の人間になったかもしれない男を殺したということだ。

無実の男ではなかった。

少なくとも食い逃げはしていた。

だがあの召使いを襲ったというあれは、あの男は洗脳されていただけで、無実なのでは…と。

頭の中で何度も思い、それを信じたくないのか、どれだけ思っても頭の中に残らない。

しかし思うたびに、自分の心がキツく締め付けられていく。

クロノ「お前…」

呼吸が乱れているのに、治すことができない。

アリウス「お陰であなたの心が知れて良かったわ。邪悪な相手を目の前にすると、殺したくて仕方ない。私と少し似てる。」

クロノ「似てるだと?」

アリウス「えぇ。」

クロノ「ふざけるな。俺は…」

その先が言えない。

自分の思いが邪魔をする。

闇に染まった心が鎖のように自分の心を動かそうとするのを、縛り付けて止めようとしてくる。

人殺しは等しく悪だ。

たとえどんな理由があろうと、そこに情状酌量の余地があり、罪は軽くなるとはいえ、悪事は悪事。

その悪事を行ったという事実は避けられない。

悪事を行った者は必ず罰が下る。

だから自分にもいずれ罰は下る。

だから俺は、執行者のつもりで悪人を殺してやると決めたのだ。

アリウス「あなたも私も同じよ。狂ってもないのに、周りから狂ってる狂ってると言われる。だから自分でも私は狂ってると言う。そんなつもりは少しもないのに。」

クロノ「うるさい!」

アリウス「ふふっ。」

はにかむように笑い、立ち上がった。

アリウス「さぁ、剣を取って。武器は持ってきたんでしょう?」

剣を取ったアリウスが話しかけてくる。

唐突な話題転換だ。

クロノ「あぁ?」

アリウス「私がここにあなたを呼んだのは、あなたを殺すため。今までのは、あなたが私を殺したくなるように煽ったのよ。全部本当の話だけどね。あなたの葛藤や後悔なんてどうでもいい。ただあなたの強さが好きで、あなたが好きだから、あなたを早く早く早く殺したいの。殺すつもりでかかってきた好きな人の全力を、一撃で、叩き潰すのがたまらなく好きなの。さぁ…」

クロノ「何がさぁ…だ。」

そんなこと言われて、こんな狂人にわざわざ向かうやつはいない。

(戦えばやつの思うつぼ。戦わなかったら俺の怒りは残るまま…)

それだったら後者がマシか。

クロノ「やってられない。俺はもう帰る。」

アリウス「あら、困ったわ。ならこうしましょう。あなたが今住んでいる村…リースだったわね。」

帰ろうとする足を引き止める。

アリウス「今ここで帰ったら、或いは私に負けたら…あそこを焦土にするわ。」

クロノ「……⁉︎てめぇ⁉︎」

アリウス「怒った?やっぱりこういうことは誰だって怒るセリフね。でも私は本気よ。あなたを殺すためなら他の人間の命なんて…」

クロノ「ふざけんな‼︎関係ねぇだろ‼︎」

アリウス「あら、あるじゃない。同じ村に住んでるんだもの。」

クロノ「関係ねぇ‼︎これは俺とお前の話だろうが‼︎だったら当事者である俺とお前の間でのことにしろよ‼︎なんで他のやつが被害に遭うようなことになるんだ‼︎おかしいだろうがよ‼︎巻き込まれたやつがどんな気持ちなのか考えろよ‼︎」

アリウス「どうだっていいわよそんなの。なんの価値もない。こうでもしなきゃ、私の覚悟が伝わらないもの。1番確実なの。」

クロノ「効率だとかやりやすいだとかの話じゃねえだろうが‼︎なんで他のやつを巻き込んで、そんなことしようとしてまで平和を乱すようなことするんだよ‼︎なんでなんだよ‼︎」

アリウス「泣いてしまうほどなのね。可哀想。」

もう自分の感情が分からなくなってくる。

いったいこれは本当に怒りなのか呆れなのか悲しみなのか恐怖なのか喜びなのか笑いなのか。

クロノ「ふざけんな…ふざけんなよ…一瞬で平和を奪われる人の気持ちを…」

アリウス「分かるつもりなんてさらさらないわ。そうしないとあなたと戦えないというのなら、逆に言えばそういう人たちがいるとあなたとは戦えないのだから、邪魔者でしょう?邪魔者は排除しなきゃ。そしてあなたと戦ってあなたを殺して、その目で私を見つめさせて、その口で毎日口づけをして、その体を毎晩抱いて、その血で1日の疲れと汗を流して、その内臓を枕にして…今からもう興奮がやまないの‼︎この気持ちをどうしたらいいのかって…‼︎」

クロノ「本当に狂人だよ。あんた。相当狂ってる。かなり狂ってる。俺から見ても分かるくらいにさ。」

アリウス「私からしたらあなたの方が狂ってるわ。どうして好きでもないただのその辺の一般人をそんな風に思えるの?」

クロノ「ただのその辺の一般人じゃねぇよ。生きてるんだ。幸福を求めて生きてる弱い生き物なんだ。そんな奴らが、理不尽な暴力で、一瞬で幸福を奪われていくのが嫌なだけなんだ。あんたのような…‼︎あんたのような自分のことしか考えないクソッタレにオモチャのように捨てられて平穏な世界を乱されるのがクソみたいにムカつくだけなんだよ‼︎」

魔力を右手に込める。

全力を超えた強い魔力を感じる。

腰に帯びた剣を抜き、右手で掴む。

アリウス「戦ってくれるのね‼︎」

クロノ「戦うわけじゃねぇよ…あんたが善とか悪とか関係なく、お前を殺すんだ。お前は不老不死なんだから、どんだけ殺しても問題ねぇよなぁ?死なないんだから、あんたが仮に善の人間だったとしても、全くのセーフだよなぁ?」

アリウス「えぇ‼︎えぇそうよ‼︎殺し合いに正義も悪もないわ‼︎あるのは命と命‼︎さぁ、奪い合いましょう‼︎」

クロノ「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ‼︎‼︎」

剣を持ってアリウスに向かって走る。

アリウスの腹に剣で一撃殴る。

時がゆっくり動くように感じた世界で、骨が折れた音が響いて聞こえてくる。

首、右腕、左腕、左足、右足。

どの箇所も骨を確実に折る。

クロノ「おおおおおおらああああああああ‼︎‼︎」

頭を全力で振り抜く。

地面に叩きつけられたアリウスはその場に血だまりができるくらいの血をぶちまける。

色とりどりに咲いていた花のいくつかは、真っ赤になっている。

アリウス「あ…あ…」

何が起こったのか分からないのか、ボヤけたような顔をする。

しかし、その顔はすぐに笑顔に変わった。

アリウス「あ…ふふ…ふふふ…いたい……すごく…このいたみも…」

立ち上がり、剣を向ける。

アリウス「じゃああなたにも同じ痛みを…」

アリウスが剣で突いてくる。

何とか避けるが、すぐに次の一撃、避けてまた一撃と次々に攻撃が繰り出される。

(狂ってはいてもさすがは英雄神か‼︎)

大上段からの振りが来る。

クロノ「だぁ‼︎」

右手で受け止め、エネルギーを吸収し、魔力に変える。

クロノ「だぁりやあ‼︎‼︎」

雷の属性を付与し、アリウスの顔面をで殴る。

(痺れたところを‼︎)

しかし、アリウスは痺れるどころか殴られてもいないようにこちらを見続けている。

剣先がこちらを向く。

クロノ「うぁぁぁぁぁあ‼︎‼︎」

持っている魔力を全部使って無理やり回避行動を取る。

自分の顔に向かって放たれた突きはかろうじて空を切った。

クロノ「ちぃっ‼︎」

炎の魔法を放つ。

アリウスはそれを見て、左手を前に差し出した。

左手に触れた炎はかき消され、アリウスは表情1つ変えずに立っている。

アリウス「なるほど、こういう原理だったんだ…」

(まさか…)

アリウス「で、放出するには…こう?」

左手から炎が吐き出され、自分めがけて飛んでくる。

クロノ「くぉあ‼︎」

自分が放ったよりも速く飛んできたが、何とか避ける。

アリウス「腕の中まで熱さが伝わってくるのね…。痛みを消すのではなくて、吸収して自分のものに…でもそのダメージが失われているわけじゃない…こんな危険な魔法を覚えているだなんて。」

クロノ「お前、カウンターを‼︎」

アリウス「私が誰だか忘れた?戦いの神、アリウス・リーパルツィアよ。誰かにできるということは、私にもできるということ。不思議な技であっても、原理が分かれば簡単なのよ。」

(相手の技も使えるとかチートかよ‼︎)

アリウス「日が明けるまで、あと少しかしらね。」

だんだんと明るくなってきていたようだ。

少し見やすくなっている。

アリウス「もう少し楽しみたかったのに…街のみんなが起きてきたら、物音で気づいてしまうかしら。だったら本当に惜しいけど、終わらせなきゃね。」

アリウスが剣を地面に突き刺す。

アリウス「偽装詠唱、開始。」

アリウスの足元に魔法陣が現れる。

クロノ「偽装⁉︎まさか‼︎」

テラーの時と同じように、詠唱魔法を意図的に発動してくる英雄神の武器特有のスキル。

アリウスだから当然、その武器も英雄神の持つそれと同じであるはずだし、偽装詠唱も使えるのだろう。

アリウス「汝を呼び出さん。力を求め、力を失い、力を生き、力を殺し、力を戦いーー」

クロノ「ちくしょう‼︎」

剣を銃に変え、アリウスを狙い撃つ。

が、結界が張られているようで、それに阻害されてしまう。

結界から魔力が触手のように伸び、銃を弾かれてしまう。

アリウス「ーー力を逃げ、力を誇り、力を蔑み、力を望み、力を拒み、力を咲かす。それは全て誰が為でもなく、自らの為でもなく。力を望む汝よ、力を拒む私に力を。叶えるべき欲望に生き殺す力を。蔑すむ誰かを誇る力を。失わない為に求め彷徨う力を。逃げない為に戦う力を。私はその為に咲かせよう。」

光る剣を引き抜き、飛び上がる。

アリウス「偽装・花蕾咲く戦神剣(レイ・ギーディモーグ)‼︎‼︎」

自分めがけて剣を振り下ろす。

(避ける⁉︎いや、避けない‼︎隙だらけのチャンスじゃないか‼︎)

左手を剣に向かって差し出す。

アリウス「え⁉︎」

左手に当たる瞬間、カウンターの魔法を発動。

剣の持つ全ての魔力とエネルギーを吸収する。

左手だけでは魔力が収まらず、全身に魔力が流れる。

カウンターは、魔力が流れた部位にもダメージが伝わる。

つまり、偽装詠唱のダメージを余すところなく全身に伝わらせているのだ。

当然、並のダメージではない。

ほんのひとかけらが流れてきただけで涙が出るとかそういう次元じゃないほどの苦しみだ。

(でもそんなこと言ってられねぇよなぁ‼︎)

クロノ「もらったぁ‼︎」

剣を掴み、奪い取る。

奪い取った体の動きの流れで空中から落ちてきたアリウスを後ろ回し蹴りする。

奪った剣、ギーディモーグを地面に突き刺す。

(やってやるよ。)

クロノ「偽装詠唱、開始!」

自分の立っている場所が魔法陣の中心となって光る。

(呪文は覚えてる。いける。)

クロノ「汝を呼び出さん。力を求め、力を失い、力を生き、力を殺し、力を戦い、力を逃げ、力を誇り、力を蔑み、力を望み、力を拒み、力を咲かす。それは全て誰が為でもなく、自らの為でない。力を望む汝よ、力を拒む私に力を。叶えるべき欲望に生き殺す力を。蔑すむ誰かを誇る力を。失わない為に求め彷徨う力を。逃げない為に戦う力を。私はその為に咲かせよう。」

剣の光が強さを増す。

クロノ「行くぞ‼︎」

剣を抜き、地面に叩きつける。

そこから大きな光の柱が空に向かって伸びる。

とてつもない魔力の流れを感じる。

アリウス「うぁぁぁぁ‼︎」

アリウスが走ってこちらへ近づいてくる。

クロノ「っし‼︎」

魔力を足に流し、瞬間移動のような速さでアリウスに近づく。

右手でアリウスの顔を掴み、左手で腹を1回殴る。

若干抵抗が小さくなった体を片手で持ち上げ、光の柱の中にアリウスを投げる。

柱に触れた瞬間、向こうから叩きつけられたように、アリウスが弾き飛ばされる。

その方向には崖があった。

アリウスの体がすごいスピードで崖に近づく。

(あの勢いじゃあ落ちる‼︎)

走り、飛んでいくアリウスの腕を何とか左手で掴む。

しかし、勢いは止まらず、2人とも崖に投げ出される。

クロノ「ちくしょうが‼︎」

右手を崖に向かって差し出し、魔力を伸ばす。

魔力は崖を掴み、そのままズルズルと自分の体を崖ギリギリまで引き上げ、崖の縁を掴む。

クロノ「掴んだぞ‼︎」

アリウス「クロノ⁉︎」

クロノ「頼むから今は何にもしないでくれよ‼︎ほんと頼むからさ‼︎」

アリウスを掴んだ左手を上げる。

先ほどまでアリウスのダメージがたんまり篭っていたせいで、上げるのにも一苦労する。

左手を上まで上げきり、アリウスが縁を掴んで崖を上る。

次は自分と右手に力を入れると、崖の縁が崩れた。

クロノ「は?」

アリウス「クロノ‼︎」

アリウスが咄嗟に腕を掴もうとするが、落ちるのは一瞬で、間に合わない。

右手から魔力を伸ばそうとするが、魔力が足りず途中で消えてしまう。

クロノ「うわあああああああああ‼︎‼︎」

壁を何とか掴もうとするが、魔力を使わずに素手で掴めるはずがない。

(やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい)

その時、上で誰かが崖のすぐ上で高く飛んでいるのが見えた。

顔は見えないが、鎧と、飛んでいるポーズと、槍で誰だか分かる。

「受け取れええええええええええええええええええええ‼︎‼︎」

槍が空からものすごいスピードで落ちてくる。

(これか‼︎これしかねぇな‼︎やるしかねぇよな‼︎)

落ちてくる槍を掴む。

カウンターの魔法を発生させ、その槍の持つエネルギーと魔力を吸収し、空中で自分の体の向きを変える。

魔力を使って力を高め、槍を壁に突き刺す。

突き刺した槍に鉄棒のようにぶら下がる。

(助かった…?助かったんだよな…?)

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