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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
7話:虫姫様と桃太郎
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その1・Memory alteration

[クロノ]

クロノ「ってなことがあったわけですよ。」

レキュリエテでの体験をギルドの仲間達に話す。

ジュリ「その銃はその時にもらったってことですか?」

クロノ「そう。」

レキュリエテを出る直前になって、超特急で作っていたマグナムリボルバーが完成した。

ロナルドがお詫びと友好の印にと、なんと二丁も持ってきてくれたのだ。

マグナムを1丁ずつ腰の左右に付けて、剣を背中に背負う形になった。

今は魔力で腰に付けているが、魔力無しで腰に付けるためにホルスターを作ろうかと思っている。

キキョウ「魔力を使わない銃じゃったか。よくもまぁそんなもん作り上げたのう。」

サクラ「そちらの世界では魔力が存在しなかったんですよね?」

クロノ「まぁな。だからこういう武器は結構重宝されてるんだよ。」

さすがにマグナムはそこら辺に転がってるほどあるわけじゃないが。

クロノ「とまぁ、これがレキュリエテでの出来事全部かな。」

キキョウ「お主はアレじゃな。事件を呼び寄せる体質か何かなのじゃろうな。」

クロノ「自分でもそう思う。」

ジュリ「大会に参加しただけで死にそうになる体験ってどんだけですか…」

サクラ「いっそこの村に引きこもってた方が平和なのでは?」

キキョウ「無駄じゃ。どうせこの村に何か事件が起こるぞ。この村の平穏の為にクロノにはちょくちょく出ていってもらわねば。」

ジュリ「むしろ私たちでギルド受け継いで追い出しちゃいます?」

サクラ「そしたらあちこちに事件をばらまいちゃいますよ?この人。」

キキョウ「椅子に縛って閉じ込めたらいいんじゃないのかのう?」

クロノ「あんたら俺に対して遠慮がなくなってきたな。」

キキョウ「マゾヒストにはこれで十分じゃ。」

クロノ「誰がマゾ…」

シリュー「おはようございます!」

2階からシリューが降りてくる。

ここ数ヶ月レベルで引きこもっていたからエントランスで見るのは久しぶりだ。

クロノ「あぁ、おはよーさん。ナナはどうだ?」

まだメンタルケアが必要なのだろうか。

シリュー「だいぶ良くなったんですけど、まだ誰にも会いたくないって感じですね。そのうち良くなってくれるといいのですが…リンコさん、何か甘い物ありませんか?」

リンコ「ありますよ!」

シリューがリンコとキッチンへ向かう。

キキョウ「何か手伝えることはないかのぅ…」

クロノ「本人が大丈夫だって言ってんだからまだ必要ないだろう。」

キキョウ「その割には何ヶ月とかかっているではないか。」

クロノ「精神的なダメージってのは肉体と違って時間が解決するものじゃないんだ。しかもトラウマ級のダメージなんて、短期間で治るようならそもそもトラウマにすらなりゃしない。」

キキョウ「お主の世界ではそういうものなのか?」

クロノ「自分だったらの話だ。俺がトラウマ背負ったら何年経とうと治る気がしない。」

キキョウ「ふ〜む。」

クロノ「ま、手伝って欲しいことがあったら言ってくるだろうさ。その時は全力で手伝う。」

キキョウ「そうじゃな。ワシも力を奮おう。」

次は入り口のドアが開いた。

配達員「お手紙です。」

背の小さい手紙の配達係が入ってきた。

クロノ「はいはいご苦労さん。」

配達員「それでは。」

ドアを閉めて出ていった。

手紙はハゼットからのようだ。

クロノ「サクラちゃん、パス!」

文字が読めないのでサクラに読んでもらう。

サクラ「はいはい。え〜と…あら?簡潔ですね。」

クロノ「なんて?」

サクラ「『マキノの研究所に来てくれ。』とだけしか書いてないです。」

クロノ「そんだけ?」

サクラ「はい。」

(何の用だよ…)

クロノ「用件も書かずに来いしか言わねぇとは、 ハゼットにしちゃあ珍しい。」

キキョウ「何か口で直接じゃないと言えない内容なのかもしれんぞ?」

クロノ「なーるへそ。なら行くしかないな。」



マキノの研究所。

いつものように完全にオーバーテクノロジー感のすごい施設に入る。

ハゼット「待ってたぞ。」

レオ「お兄ちゃん‼︎」

研究所に入ってすぐにハゼットとレオが立っていた。

レオは俺を見つけるとダッシュでかけよって飛びついてきた。

ハゼットは左腕は骨折したかのように布で固定している。

クロノ「なに、待ってたの?町長って忙しいんじゃないの?」

ハゼット「忙しいさ。最近ギルドに顔を出せないくらいにな。だからエリーにギルドマスターを託して俺は公務に専念してるんだよ。」

クロノ「その腕どしたの?怪我?」

ハゼット「まぁな。」

サシュもいるのだから回復できるはずなのに、なぜそのままなのか。

(また面倒に巻き込まれたか?)

ハゼット「さて。お前を呼んだのは、お前に報告することがあるからだ。事後報告だがな。」

クロノ「事後報告?なんかあったの?」

ハゼット「あぁ。神の力を借りてアリアンテの町の住人全員にお前の、例の事件でお前が悪人だということを忘れさせたんだ。」

はい?

クロノ「ちょっと待て、順番に話してくれ。なんだって?」

ハゼット「お前がいつまで経っても悪人扱いさせられているのをなんとかしようと思ってな。知り合いの神に記憶を司る神がいるんだ。そいつに頼んで、町の住人がお前がやらかしたとされている出来事のあれこれを忘れさせて、記憶を改竄したんだ。そもそもあんな事件はなかった。町長はある朝死体となって発見され、その後賊の手によって殺されたと判明、その賊は既に捕まった。町長は自分の身に何か起きた時はどうするかを書いた手紙を生前書いていて、そこには俺に町長を引き継いでもらうと書いてあった。カミヅキ・クロノは、広い範囲で活動ができるように俺がよその村に行かせた……ということになっている。」

クロノ「………」

ハゼット「どうした?」

クロノ「ドン引きですわ。」

ハゼット「………」

クロノ「確かに嬉しいよそりゃあ。今までカミヅキ・クロノの名前を出しづらかったから活動しづらい感もあったし、それのおかげでアリアンテの中に入れるようになったってことだろ?嬉しいさ。ただ、俺のためにそこまでするか?人の記憶をいじるなんざ、どうも好きになれない。」

ハゼット「それを言うならあの事件の解決法もそうだ。何もかも丸く収まったように見えたが、俺は未だに納得していないからな。お互い様だ。」

クロノ「ほほう。仇を仇で返すと。」

ハゼット「渡されたものは同じもので返さなくちゃな。」

ハゼットなりに俺のことを本気で思ってのことなんだろう。

でもやっぱこう…喜べない。

クロノ「しかしその神様もお人好しだな。それほどのことをタダでやってくれるなんて。」

ハゼット「タダではないさ。代償は払った。」

クロノ「へぇ?」

ハゼット「その時たまたま奴は左腕を動かせない症状をかかえていてな。」

クロノ「なに、交換したの?」

ハゼット「交換というか、その症状をこちらへ移動させたのだ。そうしたらやってやってもいいぞってな。」

クロノ「うーわ。それ、いつまでかかるの?」

ハゼット「住人の記憶を改竄し続けている限りずっとだそうだ。」

クロノ「じゃあ俺が死んだら解除してよ。」

ハゼット「そうだな。ならそうしようか。それで、どうする?このままアリアンテに寄っていくか?懐かしい気分になれるぞ。」

そうだな…。

入れるとなったんなら入ってみようか。

アリアンテに入れるのはとても嬉しいことではあるのだから。

レオ「ね!行こう!みんなお兄ちゃんに会いたがってるよ!」

だがリースにいるみんなに何も言わずにってわけもいかない。

クロノ「嬉しいけど、また今度行くよ。サプライズでな。」

ハゼット「そうか、なら楽しみにしているとしよう。まぁ、俺は公務で忙しいだろうからギルドにいないだろうが、他のやつは仕事がない限りいるはずだ。新しい仲間も何人か加わっている。顔くらい出せよ。」

レオ「え〜。」

レオがぷく〜っと膨れている。

ハゼット「だったら向こう行ってきたらどうだ?」

レオ「いいの?」

ハゼット「クロノさえ良ければだが。」

クロノ「俺は構わんよ。」


ハゼット達としばらく話し、村に戻る。

レオ「それでね!それでね!」

レオが目を輝かせながら話をしている。

最近あったこと、仲間のこと、そして最後には

レオ「お兄ちゃん大好き‼︎」

と抱きついてくる。

悪い気はしない。

だがまぁ、あんな事件があったあとだと、悪寒を感じずにはいられないのだが。

その道中、川にかかる橋を渡ろうかというところで変な物を見てしまった。

クロノ「ん?え、なにあれ…」

レオ「どうしたの?」

クロノ「あれ…」

川上の方から、大きな桃がどんぶらこどんぶらこと流れてきて…

クロノ「桃太郎じゃねーんだから‼︎」

レオ「モモタロウ?」

クロノ「何でもない。ちょっと拾ってくる。」


大きな桃を拾う。

意外と重たい。

レオ「なんなのこれ?」

クロノ「これは桃といって、俺の世界にある果物の1つだ。」

レオ「へぇ〜、果物なんだ。こっちではこんなの見たことないよ。」

クロノ「ほほう。そらまた大変な事態ってことじゃないか。」

レオ「なんで?」

クロノ「こちらの世界と向こうの世界を繋ぐ門はもうない。それなのに、この桃とかいう向こうの世界にしかないものがここにあるんだ。」

レオ「本当だ!なんでこっちに…」

クロノ「考えられるとしたら、誰かが門を再起動させたってことだな。」

レオ「誰が…?」

クロノ「疑いたくはないが、事が事だからな…」



マキノの研究所へ逆戻りする。

メイ「おや。クロノ様、レオ様。お帰りになられたのでは?そちらのピンク色の物体は…」

クロノ「ちょっとマキノに用事あんだけど、いる?」

メイ「はい。お呼びしてきますね。」

メイが奥へと消える。

レオ「門はもう動いてないんだよね?」

クロノ「あぁ。しかもあの城にはハゼットがいる。だから、起動したのならあいつが気づいてないはずがない。」

レオ「じゃあ…」

クロノ「可能性があるとすれば、どこか別の場所で誰かが新しく作ったか、偶然何らかの事象で向こうからたまたま送られてきただけの運の無い桃だったか。」

奥からマキノがメイと共にやってきた。

マキノ「どうしたんだ?なんだそのピンクの物。」

クロノ「これは桃といって、俺の世界にある果物の1つでな。さっき帰ってる途中に川から流れてきているのを拾ってきたんだ。」

マキノ「へぇ〜川から…ん?ちょっと待て、お前の世界の果物だと?」

クロノ「そう。俺の世界の。」

マキノ「どういうことだ?だって門は閉じて…」

クロノ「まぁあんたを疑いたくなる気持ちくらいは分かってくれ。俺の知り合いであんなことできるのお前くらいしかいないんだ。で、違うんだよな?」

マキノ「あぁ!違う!私じゃない!」

レオ「お兄ちゃん…?」

クロノ「だよな。俺もそう思う。」

マキノ「え?」

クロノ「これはな、俺の世界でも架空のものなんだ。本当の桃は手の平サイズほどの大きさ。こんだけデカイ桃は存在しないんだ。架空のものは向こうから送れない。なんせ存在しないんだからな。」

マキノ「ならなんで私を…」

クロノ「それでも桃は桃だからさ。あんたが関係してるんじゃないかって。」

メイ「架空の…ということは、何かそれにまつわるお話があるので?」

クロノ「あぁ。桃太郎って話があってな。昔々あるところにおじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へお仕事に、おばあさんは川へ洗濯に行きました。おばあさんが川で洗濯していると、川上の方からどんぶらこどんぶらこと大きな桃が流れてきました。おばあさんはその桃を拾い、あらかた洗濯を終えると家に持って帰りました。山から帰ってきたおじいさんと桃を食べようと包丁で桃を切ろうと刃をズバッと桃に入れようとすると、桃がパッカーンと割れ中から赤ちゃんが出てきました。」

レオ「赤ちゃん?」

クロノ「そ。その赤ちゃんはすぐに大きくなって、やがて村人に悪さをする鬼を退治に…鬼ってのはこっちでいう魔族みたいなもんだ。まぁそれを退治に行くんだ。」

メイ「状況が酷似していますね。」

クロノ「まぁ、こんなかにジジババはいねぇけどな。」

マキノ「それで、どうするんだ?これを。」

クロノ「どうするって、開けるしかないだろう。中がどうなっているのか調べないとな。」

桃を机の上に置き、背中の剣を抜く。レオ「包丁じゃなくていいの?」

クロノ「無いから仕方ないだろ。まぁ、いけるでしょ。それじゃあ切るぜ。」

剣を上から振り下ろす。

剣が桃に触れた途端、その切れ目から光が溢れてきた。

マキノ「なんだ、何があったんだ?」

クロノ「これはマジモンの桃太郎なのかもな。」

桃がゆっくりと開いていく。

クロノ「ん?」

中にいたのは赤ちゃんではなかった。

クロノ「WTF…」

手足を縛られ、目隠しと猿轡をされた若い男が入っていた。

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