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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
5話:薔薇の女王のプロポーズ
30/67

その4・Live for love

[クロノ]

扉を開ける。

中には本当に誰もいなかった。

クロノ「ふむ、よし。」

倉庫内を歩いて進む。

大量の大きな袋が棚に敷き詰められている。

(中身はなんなんだろうかねぇ…)

確認するには開けるしかないのだろうが、侵入した形跡を残すわけにはいかない。

倉庫から屋敷の中へすすむ扉を開ける。

マリアの言った通り、多少埃っぽいが誰もいない。

クロノ「いないよな…?」

静かではある。

だが屋敷の中で静かなんてあり得るのだろうか。

中世が舞台の映画なんかだと主人公達が屋敷にいる時には主人公に注目されるので他が静かになっているが、中には普通はメイドやら執事やらがそれなりの人数いるはずだから静かなんてのはないはずだと思うのだが…

クロノ「俺の侵入がバレてるとかそういうことなわけ…ないよな…」

男「あぁ、そういうことはないさ。」

クロノ「⁉︎」

背後で男の声がする。

(いつの間に後ろを…⁉︎)

男「なにせ僕だって今初めて君という侵入者の存在に気づいたからね。」

(この男…‼︎)

後ろにいた男はポーズをとっている。

体にはこれでもかというほど筋肉がついているがゴツいわけではない、いわゆる細マッチョというやつだ。

いかにも魔族というような青い肌に紫色の手足。

そして何よりも1番突っ込みたいのは、パンイチでしかもブーメランパンツのような格好なのだ。

(間違いない…イリヴィの毒牙にかかって目覚めさせられたんだ…)

男「しかしあれだ、君には筋肉が足りないよ。」

ネットリとした口調で話しかけてくる。

男「確かにこの力に満ちた世界に、筋肉はあってもなくても関係ないけどね、筋肉がない男は美しくないんだよ。分かるかい?侵入者クン。」

侵入者「クン」の言い方に寒気を感じる。

この男の目には危険な光が宿っている。

クロノ「悪いが、そういうのは遠慮するよ。」

男「なぜだい?なぜ遠慮をする?君にその趣味がないからかい?そういう趣味が無ければ、ある奴はみんな悪党だってのかい?なんで異性を愛せば正常で、同性を愛せば異常なんだい?どちらも同じ生き物じゃないか?」

クロノ「俺は別に否定しないけどさ、無理やりはいかんよ無理やりは。」

男「無理やり…!」

魔族の男がキョトンとした顔をする。

男「無理やり…そうか、だからか…!だからみんな僕から離れていくのか…なんてことだ…!全く気づかなかった!」

クロノ「お、おい…?」

突然男が肩に手をかける。

男「いやぁ、君には感謝しなければならない!とても大事なことを思い出させてくれた!そうだ、確かに僕も昔は女が好きだった。だが、筋肉という美に魅せられ、筋肉がないものを愛せなくなってしまった。その結果男を好きになり、そしていつしか筋肉を周りに勧めるようになってしまった。ただ勧めるのではなく、無いものに生きる価値はないとでも言うような言い方だっただろう。今反省して気づいた!そんな言い方だったことをさらに反省をしなくてはならない!」

(なんなんだこいつは…)

男「ありがとう!名前も知らない侵入者よ!君には何かお礼がしたい!何でも言ってくれ!僕の体かい?」

クロノ「いや、俺みたいな侵入者がいたってことを黙っててくれないか?」

男「そんなことでいいなら、いくらでも聞くさ。」

クロノ「あともう1個聞いていいか?」

男「なんだい?」

クロノ「あんたは、この屋敷から出たいと思うか?」

男「ふむ、確かに。君のような正常な人間から見たら、この屋敷はおかしいだろう。そんな所に住んでいる僕のことを、危険な領主に目をつけられてしまった可哀想な男だと思うだろう。だが、少なくとも僕はそうは思わない。僕は男が好きだ。そしてイリヴィ様は、それを理解してくださる。そんなここを嫌だとは思わないさ。それに、ここは体を鍛えるのにとても素晴らしい場所でもあるからね。」

(そういう意見もあるのか…)

男「にしても、君は頭が良いな。人間のくせに、相手を見た目で、あるいは趣味で区別したりしない。」

クロノ「魔族に良いやつがいるように、人間にも良いやつがいるんだよ。」

男「はははは‼︎まさしく、僕と同じ意見だ!ますます君のことが好きになりそうだ!」

クロノ「うっ…」

男「おっと、すまない。君はこういうのは嫌いな人間なのかな。それでは、他の男と話してくるとするよ。」

男は終始何らかのポーズを取りながら話し、今、再びポーズを取りながら歩いていった。

(何だったんだ今の…)

あ、そうだ。

クロノ「おいあんた!」

男「んむ?呼んだかい?かわいい坊や。」

クロノ「さっき、女が3人ほど捕まっただろ?あいつらがどこに連れてかれたか知ってるか?」

男「あぁ、あの3人は君の知り合いか。まさか助けるためにここに来たのかい?なかなかの友情じゃないか!僕からしたら、異性を愛せるその心を、少し羨ましく思うよ。」

クロノ「あぁそうか。それで、どこに行ったかは…」

男「分かるよ。というより、あの中の1人を運んだんだ、僕は。」

クロノ「なんだって⁉︎どこに⁉︎」

男「現魔王様をね、イリヴィ様の所に。」

(モニカが⁉︎)

クロノ「他の2人は⁉︎」

男「それは他の女が運んでいったよ。おそらくは、ゲストルームだと思うけどね。」

クロノ「ゲストルーム?」

男「ごく普通の一般人が想像するゲストルームとは別さ。捕まえた者を洗脳する場所と言ってもいい。事実、同じ部屋に何人も詰め込んで、定期的に1人を出しては、これでもかと「愛情」と「同性に愛を注ぐ方法」を教え込む。具体的に何をするかは僕の口からは言えないかな。連れ出されなかった者たちはすでに目覚めさせられた女達によって耳元で愛を囁かれる。男も似たような感じさ。まぁ、僕は元からこの趣味だから、僕が教え込む側の、先生にあたる存在なのだけどね。」

クロノ「そのゲストルームは?」

男「3階。イリヴィ様の部屋のすぐ隣だよ。それじゃあね、また今度、君がこちら側に堕ちてきた時、2人で高みを目指そう!」

今度こそとでも言いたげにポーズを取りながら去っていく。


3階に着く。

クロノ「ここがゲストルームで…ここがイリヴィの…」

すると、イリヴィの部屋のドアが勝手に開いた。

(入れってか…?)

イリヴィの部屋に向かう。


部屋の外からは薔薇をあちこちに飾った赤いドレスの女が立っており、その横でモニカが手足と口を縛られ地面に転がっている。

どうやら眠っているようだ。

(ってことはこの赤いドレスの女が…)

イリヴィ「ようこそ。あなたがクロノさんかしら?」

桃色の長いサラサラとした髪。

どこかカリスマ感が溢れ出ている気がする。

背景にも薔薇が見えるようだ。

そんなことより…だ。

(俺の名前を…?いや、名前だけか…?)

クロノという存在は知っているようだが、俺がそのクロノかどうかは知らないようだ。

なぜ知られているのか…

クロノ「どうしてそう思うんだ?」

イリヴィ「モニカが寝言でずっと、「クロノ…クロノ…」って呟いていたの。助けを求めるかのように。だから、あなたのことなのじゃないかって…」

(俺の助けを待っていたのか…)

イリヴィ「にしても…」

イリヴィのこちらを見る目が光る。

比喩ではなく、本当に赤く光った。

(体が…動かない…⁉︎)

金縛りというやつか、体を動かすことができない。

できるのは視線をずらすか瞬きか話すくらいだ。

クロノ「なに…を…⁉︎」

イリヴィ「あなた……」

イリヴィがこちらへ近づいてくる。

イリヴィ「あなた…いいわ…」

顔を近づけ、ベタベタと触り、舐めるようにあちこちを見る。

イリヴィ「いい…‼︎すごくいい‼︎」

クロノ「何がだ…?」

イリヴィ「あなたのような美しい男は…とてもいいわ…私の求める構図にとてもいいかもしれない…‼︎」

クロノ「求める構図…?」

イリヴィ「ふふふ…」

イリヴィが離れる。

イリヴィ「私が何者かは知っているでしょう?私が求める構図がどういうものか、自ずと分かってくるのではなくて?」

クロノ「おいおいまさか…」

イリヴィ「あなたは攻めよりも受けの方がいいわ。あなたが男に蹂躙される図は…とても興奮できそう…!」

うっとりとした表情で語られるが、こちらとしては冗談ではない。

クロノ「ちっ…」

体に魔力を込め、金縛りを無理やり外す。

案外簡単に外すことができた。

イリヴィ「あっ…」

クロノ「別にいいさ。だが、モニカとミランダとステラだけでも返してもらうぞ。あとこっちで働いてる知り合いも連れて帰りたい。そっちが暴力的な手段を取るってんなら…」

右手に槍を創り、構えようとするが、

イリヴィ「待って‼︎お願い‼︎それはダメ‼︎」

クロノ「は?」

イリヴィが突然手を振りながら後ずさりをし始める。

その表情からは演技じみたものは感じられず、本当に怯えているように思える。

イリヴィ「ダメ‼︎私戦えないの‼︎お願いだから暴力はやめて‼︎」

少なくともこのイリヴィからカリスマらしきものは感じられない。

クロノ「いや…え…?」

こっちとしては困惑せざるをえない。

あんなに強そうなオーラで話しかけてきながらいきなり戦えないなんて…

クロノ「あれ…だよ。なんだっけタナージュだっけ?なんか強いサキュバスを負かしたんだろ?」

イリヴィ「だって…あれは正面から戦ったんじゃなくてモニカ達みたいに奇襲で眠らせただけだし…それからレズに目覚めさせただけだし…」

途端に子供のような話し方になる。

いまいちキャラクターが掴めない。

クロノ「つまり…だ。眠らせたりだのなんだのは得意だが、こういうガチの戦闘は弱くて無理だと。」

イリヴィ「むしろ、相手を眠らせる魔法しか得意なのはないわよ…さっきの捕縛魔法だって簡単に外されたし…戦っても人間に負けちゃうし…」

(本気で言ってんのか…?)

信じられない。

魔界で自分の領地を持っているんだ、かなりの力がないとできないはずなのに…。

クロノ「弱いのになんで領主なんかできるんだ?」

イリヴィ「私は配下が強いの。配下の強さでなら、誰にも負けない自信があるのよ。」

クロノ「その配下から裏切られたりとか、下剋上をもらったりとかは…」

イリヴィ「あると思う?」

ないと思う。

イリヴィが人間に勝てないほど弱いというのが本当なら、さっき途中で会ったあの男はマジで指一本で勝てそうだ。

それなのに、あの男はイリヴィを信頼し、イリヴィに従っている。

カリスマは本当にあるのだろう。

そして、同性愛という社会的に嫌われる存在である彼らを理解している。自分もその内の1人だからだろうが。

だからこそ部下から信頼され、今の地位を維持することができるのだろう。

そういえばここに来る前にモニカが、イリヴィは善政を敷くタイプの統治者だから民からも慕われていると言っていた。

それも関係しているのだろう。

クロノ「まぁ、なんにせよだ。モニカとミランダとステラとマリアは連れて帰るが、いいよな?」

イリヴィ「ダメ。」

クロノ「はぁ…」

こういうとき、マトモな展開にならないというのを経験が知っている。

イリヴィ「あれだけ恋い焦がれたモニカを…やっと手に入れられたの…そして…私が今まで出会った中で1番美しい男にも出会えたの…こんか機会絶対逃がさない…‼︎ハイィィンツ‼︎」

イリヴィが声を上げ、誰かを呼ぶ。

男「呼びましたか、イリヴィ様…おっと君は…」

さっき会った細マッチョの魔族が部屋に入ってきた。

手には何か煙のような物を発生させている箱のような物を持っている。

クロノ「あんたさっきの…」

男「自己紹介がまだだったね、僕が今名前を呼ばれたハインツだ。」

イリヴィ「ハインツ、知っていたの?」

ハインツ「僕に大事なことを思い出させてくれた。そのお礼として、見逃したんです。」

イリヴィ「そう、なら仕方ないわ。でも今回は見逃さないでちょうだい。」

ハインツ「了解しました。」

ハインツがこちらを向く。

ハインツ「君に大事なことを教えてもらった。だがね、あの後もう一つ、こういうことにも気づいてしまったんだ。」

クロノ「もう一つ?」

ハインツ「無理やりがダメなら、その気にさせてしまえばいいじゃないか!それなら、無理やりじゃない!相手を好きにさせてしまえば、相手は嫌々じゃなくなる!それはつまり、「無理やり」というわけじゃないのさ!」

クロノ「「無理やり」その気にさせる、ってのもアウトの範囲だぞ?」

ハインツ「ん?そうか…そうだな…あれ、じゃあ………」

ハインツが首をかしげる。

ハインツ「ま、いいんじゃないか?」

ハインツがこぶしを真っ直ぐ繰り出してくる。

そのスピードは魔獣の放つようなものとは全く違い、明らかな攻撃の意志で放たれている。

クロノ「ぬあっと‼︎」

紙一重でかわし、距離を取る。

ハインツ「なんだかよく分かんなくなってきた。こういうときはあれだよ。自分の欲望の赴くままに行動するのが1番だ。それが大体正解となる。」

クロノ「メンドクセェことを…」

ハインツ「ふふふ…君の体がだんだん欲しくなってきた。筋肉はないけど、それ以外の何かが…僕を惹きつけているよ…その体を汚してやれたら…」

(どうする…こんな相手だけど…)

愛に生きているだけで…愛の方向性がちょっと他人と違うだけで…

こいつもイリヴィも、悪人ではなく、変人なだけだ。

(邪魔だけど、殺したくはない…)

もし負けたら死ぬより屈辱的なことが待っているだろうが、それでも自分の意志がわざわざ難しい道を歩こうとしている。

クロノ「あんたの愛は受け入れられない。全力でフラせてもらうぞ‼︎」

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