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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
5話:薔薇の女王のプロポーズ
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その5・Do you have a compuction?

[クロノ]

ハインツ「ちぃぃぃやぁ‼︎」

ハインツの鋭いハイキックを避ける。

クロノ「オォラ‼︎」

避けた体勢のまま、回し蹴りをハインツの脇腹にぶち込む。

ハインツ「痛くないぞ!」

クロノ「いぃ⁉︎」

確実にかかとがジャストヒットしたはずなのに、壁でも蹴ったかのような硬さだ。

(これが筋肉か‼︎)

足をを掴もうと腕を伸ばしてくるのを見て足を引く。

(これ殴ってどうにかなるものなのか…?)

ハインツ「なぜその腰の剣を使わない?武器があるのだから使えばいいだろう?僕も使っているのだし。」

手に持った箱をゆらゆらと揺らしている。

クロノ「武器なんか使って本気で戦ったら殺しちゃうかもしれねぇだろ?」

ハインツ「それは余裕の表れということかな?」

クロノ「いや、むしろキツイ…かな。あんたを殺したくないんだ。」

ハインツ「僕を殺したくない…?不思議な男だな、本音か?今まで僕に会った男はみんな僕に、死ねという言葉を投げつけてきたのに。君は僕を殺さないのかい?魔族とはいえ人殺しをするのは良心の呵責があるからできない、というのかい?人間らしい偽善じみた心だな。」

クロノ「何をそんなキレかけた口調で言ってるのかは知らんがな、俺には俺なりの主義っつーもんがあってね。ただそれだけの話だよ。そこに魔族だとか人間だとかそういうウザったいものは関係ねぇんだよ。」

ハインツ「人間風情がなかなか気取ったことを言う。」

クロノ「種族を見るなよ、個人を見な。俺の名前はカミヅキ・クロノだ。」

ハインツ「ははは!そうかそうか。ならカミヅキ・クロノくん。そんな綺麗事を述べるなよ。所詮人は人を差別する。魔族も似たようなものだがね、君が個人を見ろというのなら、僕も個人で人を嫌おう。」

クロノ「いろいろと言いたいことはあるが、1番言いたいのは、勝手にキレて勝手にウダウダ言って勝手に嫌わないでくれるかな。俺としてはそれ結構腹立つのよ。」

ハインツ「そうかい‼︎」

ハインツが走りこんでくる。

見せかけではない筋肉の走る速さは尋常ではない。

ハインツ「であぁぁ‼︎‼︎」

右ストレートが顔面めがけて飛んでくるが、頬に当たるか当たらないかのギリギリでかわし、カウンターの右パンチを顔面に入れる。

しかし拳は顔には当たらず、左手で受け止められていた。

(あれ、箱は⁉︎)

そう思ってしまったが為に、若干隙が生まれてしまった。

ハインツ「ハアッッ‼︎」

自分の右手を掴んだ左手を引いて、後頭部に衝撃が走る。

右腕のエルボーを食らったようだ。

クロノ「ゴッ⁉︎」

地面に顔面から落とされる。

体勢を変えて上を向くと、ハインツが上から降ってきた箱を手で掴んでいた。

(上に投げてたのか!)

掴んだ箱を振り上げる。

(やばい雰囲気⁉︎)

あの煙がロクなものではないというのは分かる。

ハインツ「眠れ‼︎」

箱を顔面に向けて振り下ろす。

クロノ「っぶね‼︎」

ギリギリで顔をずらして避ける。

そのまま転がって立ち上がろうとするが、体が起き上がらない。

(力が入らない…いや違う……眠い…のか、これは…!)

ハインツ「かすっただけでも…霧のほんの一粒を吸っただけでも…その毒はすぐに全身を埋める…それがイリヴィ様の睡眠霧だ。」

学校の授業なんかで経験したことあるやつはいるのではなかろうか。

寝る気は1%も無かったのに、気がつけばものすごく眠くなって頭がカクカクしている時の眠たさ。

あれのような感覚だ。味わったことあるから分かる。

しかしあれと違って、眠気に気づいても抗えられない。

(ダメだ…寝るな……寝ちゃダメだ…いしきがとぎれるまえに……なにか…なにを……)

右手に闇の魔力を流す。

ボヤけて何かに触った感触すらしなかった体だったが、右手だけ確かに刺激が通っている。

(これか……‼︎これしかないか…‼︎)

右手の魔力を全身に流す。

右手からどんどんと黒く染まり、やがて体中を包む。

右手と同じように、ハッキリしなかった体に感覚が戻り、意識もスッキリしてくる。

(魔獣化はフィルターにもなっているのか…闇様々だな…)

ハインツ「その姿は…!君、まさか元魔族なのかい⁉︎」

クロノ「元魔族?なにそれ?」

ここに来て新しく聞くワードだ。

ハインツ「いや、後で聞けば分かるだろう。今はそれよりも、君を動けなくさせることが優先だ。」

とりあえず、魔獣化は魔力を大量に消費するから、魔獣化させる必要がない頭以外の魔獣化を解く。

左手を解除した瞬間、左手がダランと下がり動かなくなる。

(なに?なんで?)

もう一度魔獣化をさせると、動かせるようになる。

(まさかこれって…発動中じゃないと効果無し…?これ解除したらまた眠っちゃうの⁉︎)

ってことは短期決戦をしなければならない。

あと数分も経てば魔力切れで自動的に魔獣化が終わってしまう。

ハインツ「短期決戦を挑まなくてはいけないのかな?そうだろう?その謎の変身はしている間しか睡眠霧の効果を無効化できないようだしね。」

(ばれてーら。)

かといって短期決戦以外は選べない。

ハインツ「つまり僕は、君から逃げ続けるだけで勝てるんだね。」

ハインツが余裕の表情を見せる。

しかし、余裕の表情はすぐに消え失せることになる。

魔獣化は身体能力を強化する魔法。

ただの魔力強化なんかとは違うのだ。

全身を強化しているから耐久度という面では高いとは言えないが(当然低いわけがない)、スピードには大して影響はない。

その速さを捉えられる者はそういない。

その力を防ぎきれる者もそういない。

ハインツに一瞬で距離を詰め、ハインツの顔を掴み、持ち上げる。

ハインツ「なっ⁉︎速い⁉︎」

クロノ「そりゃ、この姿だもんな?」

ハインツ「くっ‼︎えい‼︎」

霧を発生させる箱で殴ろうとしたり、何かの注射器を刺そうとしたりするが、魔獣化の鎧には全く歯が立たない。

クロノ「さて、この眠気を解除してもらえんかねぇ?」

ハインツ「くぅ…僕にはできない…」

クロノ「なに…?」

ハインツ「それを解除する方法を僕は、知らない…。」

イリヴィ「私よ。」

クロノ「はぁ?」

イリヴィ「それは私じゃないと解除できないの。もしくは寝てしまってから数時間経って目覚めるか。」

(つまり…)

クロノ「あれを浴びた時点で俺の負けか…」

ハインツ「そうさ…」

ハインツの手を離す。

魔力が限界に近くなる。

クロノ「くそっ‼︎」

右手で銃を作り、イリヴィに向ける。

イリヴィ「ひっ‼︎」

ハインツ「させるか‼︎」

ハインツが飛びかかってくるが、左手で顔を掴み投げ捨てる。

ハインツ「ぬぁっ‼︎」

腰に据えていた自分の剣を投げて、ハインツの手ごと壁に突き刺し、動けなくする。

ハインツ「ぐぅっ‼︎」

もう一度イリヴィの方を向いて、右手で銃を構える。

イリヴィ「いや…やめて……‼︎」

右手の手が震えてきている。

魔力が少なくなってきていて、腕を安定させることができない。

ハインツ「やめろぉ‼︎頼む、やめてくれぇ‼︎」

ハインツが叫ぶ。

だが、それを気にしている場合ではない。

クロノ「死にたくなけりゃ解除しろ……早くしないと…」

殺したくはない。

だからこれは、ただの脅しだ。

でも…

ハインツ「イリヴィ様‼︎解除を‼︎」

イリヴィ「でも……」

クロノ「解除して……くっ…」

足元から感覚が消えていく。

(まさか、魔力切れ…⁉︎)

右手の銃が消えていく。

膝の辺りの鎧が消える。

足に力が入らず、膝からガクンと崩れ落ちる。

クロノ「かはっ‼︎」

体を起こすことができない。

(無理か…でもせめて…‼︎)

クロノ「イリヴィ……」

イリヴィ「え…?」

クロノ「お願いだ…俺をどうしてくれても構わんから…あの3人と…マリア・カジナーを…解放して……くれ…頼む…」

意識が保てなくなる…

その時、誰かの声が聞こえた気がした。

「その必要はないわ。」




目を開ける。

最近こんなことばっかりな気がする。

どこかで何かやって何かやられて眠らされて、気がついたら目が覚めた。

しばらく経って状況を思い出す。

ここはどこかの建物の中のようだが…

(あたまがうごかない…)

まだボーッとした感覚から抜け出せない。

ベッドに横たわっているようだ。

ベッドの横で誰かが立っているようだ。

自分の方を向いているようだ。

物事を1個ずつ順番にじゃないと頭が処理しきれない。

その人物は自分に向かって何か言っているが、頭が戻ってこない…

その誰かに顎を持たれる。

その誰かの顔がすごく近づく。

すると、一瞬で目が覚め、頭がスッキリし始めた。

すぐ近くにいた誰かはモニカだった。

モニカ「大丈夫?クロノ。」

クロノ「あ、あぁ。大丈夫だ…多分。」

唇に妙な感触が…

いや、唇じゃない。口の中にまで感触が残っている。

モニカ「サキュバスのキスよ。そんじゃそこらの愛なんかよりもっと力のあるものよ。まぁ、あんまり多用はできないんだけど。やり過ぎるとだめなのよ。特に男には。」

クロノ「キス?」

(え、なに、キスされたの?俺?また?ってかなんか…)

動悸が激しくなってきた。

というか、たってきた。

ナニが、とまでは言わないが。

モニカ「サキュバスの体液には媚薬の効果があるの。眠気を吹き飛ばすにも使えるんだけど…しばらく我慢してて。」

モニカが手をかざす。

すると、体が動かなくなった。

クロノ「ちょっ、モニカさん?」

モニカ「待ってなさい。今薬が来るから。」

扉を開けて誰かが入ってくる。

マリア「モニカー、できましたよー。」

モニカ「ありがとう、ちょうだい。」

クロノ「マリア?」

マリア「ん?おぉ、目ェ覚めたんですね!」

クロノ「えっと…どういう状況?」

モニカ「その前にこれ飲んで。」

モニカに薬を飲まされる。

寝転んだまま飲む液体がここまで飲みづらいものなのかと。

モニカ「よし。効いてきた?」

胸の奥の荒々しさが消えていく。

いろいろ治まってきた。

モニカ「これは媚薬の効果を消し去る薬よ。サキュバスのものにしか効かないけど。」

クロノ「さっきより頭がスッキリしてきた気がする。」

マリア「そりゃあ媚薬なんて、脳をボヤボヤさせて正しい判断をさせなくさせるようなもんですからね。」

モニカ「さて、なにがあったか言っておくわ。私が目が覚めたらね。イリヴィの前であなたが倒れていたのよ。それで、自分はどうなってもいいから私達だけでも助けろ、みたいなこと言ってたわ。あとはもう、私の力を見せつけてやったわ。もちろん、殺してはないわよ。それどころか、傷一つつけずに大人しくさせてやったわ。」

クロノ「さすが魔王様だよ。」

モニカ「伊達にあの候補者戦争に生き残ったわけじゃないの。イリヴィは今自分の部屋に篭ってるわ。ミランダとステラは先に帰らせた。いつここを出てもいいって言われたから、あなたが準備でき次第、いつでも出られるわよ。」

クロノ「そうか…なんか迷惑かけちゃったな…」

モニカ「こっちこそよ。眠らされるとは思ってなかったし、またあなた1人に戦わせてしまった。」

クロノ「そこはいいんだよ。そうじゃなくて…」

モニカ「よくないわよ!」

いきなり大きな声で怒られる。

クロノ「うぇ?」

モニカ「あなたは1人じゃないのよ‼︎頼りないかもしれないけど、あなたの周りには仲間がいるでしょ‼︎それなのに1人で戦っていいわけないじゃない‼︎」

クロノ「だけど…」

モニカ「だけどじゃないわよ‼︎あなたは仲間を助けられるなら自分がいくら傷ついてもいいって思ってるかもしれないけどね‼︎その仲間は、あなたが傷つくのを見たくないのよ‼︎あなたに何もかもを1人で背負って欲しくないのよ‼︎」

クロノ「それは…そうかも……だけど…」

マリア「クロノ。一つ言わせてもらっていいですか?」

クロノ「マリア?」

マリア「あなたのそれは、優しさじゃなくて、エゴです。周りのことを考えられなきゃ、それは善じゃなくて、悪です‼︎」

(悪…?俺が…?)

クロノ「俺は……そんなつもりは…」

マリア「そりゃそうでしょう。あなたが誰かを助けたいって思ってるのは本心なんですから。でも、善の気持ちを持ってても、悪を行っちゃうんじゃ何の意味もないですよ。善の心で善を行わなきゃ人助けにならないんですよ!」

(それは……いや、それなら俺の悪役(ヒール)のような英雄(ヒーロー)ってのと同じに…いやでも、人助けできなきゃヒーローじゃないし…)

モニカ「自分の思った通りの行動をする、大いに結構よ。人助けがしたい、いくらでもしてほしいものだわ。でもね、そのやり方を間違えてはいけないの。自分を犠牲にしてまで誰かを助けることは合ってるかもしれないけど、間違っているのよ。少なくとも、あなたの帰りを待っている誰かがいる時にはね。」

クロノ「俺の帰りを…?そんなの…」

モニカ「いないなんて言わないわよね?あなたの周りにいる仲間はなんなの?ただのカカシ?置物なの?」

クロノ「違う!」

モニカ「即答できるってことは、よほど大事な仲間なんでしょ?なら、その人の為に、頑張っていかなきゃダメじゃない。」

(そういうものなのか…)

マリア「さて、お説教も終わったところですし…」

モニカ「とりあえず、何日かして回復を待って…」

クロノ「いや、もう出れる。ってか早めに出よう。」

モニカ「クロノ?でも…」

クロノ「怪我はしてねぇんだ。大丈夫だ。それよりも…」

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