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ヒーローアフターヒール(リメイク連載中)  作者: 手頃羊
4話:少女純愛応援歌
21/67

その4・All expression

[クロノ]

フラグは立っていたというか、話の流れ的にというか…

こうなることは分かっていたがまさか本当にそうなるとは思わなかった。

目が覚めるとそこはどこかの部屋のようだった。

少なくとも俺の部屋ではない。

そしてヒーラーハウスのどこかでもない。

(まぁ1番おかしいのは俺が上半身裸で椅子に縛られているってことか。)

椅子にロープでぐるぐる巻きに縛られている。

手も足も縛られて身動きできない。

ロープには手足ともに何かの錠のような物が付けられている。

(どういう状況なのかな〜っと…)

部屋で寝ていたら物音で目が覚めて何者かに眠らされて気がついたらこの状況だ。

(まぁ、なんとなく予想はね…つくけど…)

やっぱ当たって欲しくはないなぁ…

(このロープ千切れないかな…)

鎖とか魔力ではなく、ただの縄に縛られている。

普通に魔力を扱える者なら魔力でこのロープを切ることができる。

(まさか金がないからダメ元でロープってなわけがないだろう。)

一応やってみようか。

魔力を体に流してみる。

(あれっ?)

魔力が流れない。

どれだけ練ろうとしても魔力が一切作られない。

(闇は…闇魔力は…?)

闇魔力もダメだ。

何もできない。

(1番怪しいのはこの錠か…)

体を揺らしてみるが、ロープにしっかりとかけられていて外せない。

完全に何もできない。

(マズイ…割とマジメにマズイ…)

扉が開くような音がする。

石の扉だろうか。

すごく重々しい音がしていて、ゆっくりと開いている。

(少し様子を見るか…)

頭を下げ、まだ起きていないフリをして様子を見る。


レオ「お兄ちゃん…まだ起きてないか…」

(あーうん。この声は間違いない。あと俺をお兄ちゃん呼びするのはレオしかいない。)

レオ「じゃあこれはまた後でしようかな。」

何かを地面に置く音がする。

離れているからかもしれないが、何かが蠢く音がする気がする。

足音が近づいてくる。

足音は目の前で立ち止まる。

(なんだ…何をしているんだ…?)

目の前で止まったまま何も起きない。

何も喋らないし、動く音もしない。

そのせいか、先ほどの蠢く音が自分の耳に入ってくる。

間違いなく虫系の何かだろう。

レオ「うーん…」

やっとレオが喋った。

レオ「やっぱりやっとこうかな…」

(やる?何をだ?)

レオ「起きたらビックリするだろうな〜虫が足を這い上がってくるなんて。虫嫌いだからきっとすごい顔見れるかも…」

(おいおい待て待て待て。)

起きるか?

いや起きよう‼︎虫だけはどうしてもマズイ‼︎

手足が動くなら振り払えるが動けない以上、虫に何をされるか分からん‼︎

クロノ「あ…あー…」

とりあえず今初めて起きましたような感じを出す。

レオ「あ、起きた。ちぇー。」

クロノ「レオ…?お前か…?」

レオ「おはよう、お兄ちゃん。もう夜だけどね♡」

自分に向かって微笑みかけるが、その笑みに今は狂気しか感じない。

レオ「一日中寝ちゃうなんて、お寝坊さんだなぁ。」

クロノ「これどういう状況?」

レオ「どうって見たまんまだよ?お兄ちゃんが逃げちゃわないように縛ってるの。」

うん、そのまんまだわな。

クロノ「なんだってこんなことを…」

レオ「だから、逃げちゃわないようにって。僕とずーっとここで暮らすの。死ぬまでずっとね!」

(あー…)

クロノ「暮らすって…」

レオ「僕ね、ずっとお兄ちゃんのこと好きだったんだよ?初めて会った時もね、最初はただカッコいい人だなぁってだけだったんだけど、僕に手を差し出してくれてね。あんな人初めてだったんだぁ…僕と握手する為に向こうから手を出してくれる人って。それから本当にお兄ちゃんみたいに思ってたんだけどね、だんだんお兄ちゃんが近くにいないとダメに思えてきちゃったの。でもそれがね、思えるだけじゃなくて、本当にお兄ちゃんが近くにいないとダメになっちゃったの。お兄ちゃんが近くにいないと、僕の中で何かが無くなっちゃいそうで、怖くなるの。お兄ちゃんがラフを離れた時ね、すごく泣きそうだったの。でもお兄ちゃんのこと好きだからこそ我慢しなくちゃって。でもおかしいよね、男なのにお兄ちゃんが好きなんて。だから、マキノさんに男の子の体を女の子に変える薬を作ってって頼んだの。それで試作品が出来たのを見計らって魔獣をけしかけて、混乱したところに取りに行こうとしたんだけど、薬が壊れちゃっても、けしかけた魔獣が女の人になっちゃったんだ。それでえーと、向こうで新しくギルド作って、ちょうどマキノさんの事件があったから見に行ったら、女の子ばっかりたくさんいて…ちょっと嫉妬しちゃった。だから誰にも盗られないように私がなんとかしなくちゃって、ずっと計画してたの。このお家もね、森の中にある家なんだけど、僕が頑張って作ったんだ。森のすごーく奥深くに作ったからだーれも来ないんだよ。」

レオの顔がどんどん変わっていくように見える。

可愛い笑顔の向こう側がドス黒い何かに覆われている。

(これは助けはキツイか…?)

いや、それでもヒーラーのみんなはこの異常に気付いてくれるだろうか。

さっきレオが一日中寝たと言っていた。

俺がヒーラーにいないことは既に気付いているはずだ。

クロノ「俺を眠らせてここに運んだのも…」

レオ「僕だよ。ミランダさんにね、お薬貰ったんだ。これ。」

レオが赤青緑の3つの小瓶を取り出す。

赤い方は見たことがある。

以前ミランダに眠らされた時に使われた睡眠薬だ。

クロノ「その青と緑のは?」

レオ「これ?これね、魔法が使えなくなっちゃう薬なんだってサキュバスが相手に抵抗されない為に作ったんだって。こっちはその解毒薬。」

俺が魔法を使えないのは薬のせいか…

クロノ「じゃあこの錠は一体なんなんだ…?」

レオ「それもね、ミランダさんがくれたんだ。魔力を流すとロープが火に変わっちゃうんだって。」

ってことは魔力を流すと俺の体が燃えるわけか。

クロノ「このロープ解いてくれたりは…」

レオ「ダメだよ。お兄ちゃんはここで暮らすの。あんなとこには返さないもん。」

一気に笑顔が消える。

レオ「あ、そうだ。これ。」

レオが桶を足元に置く。

中には大量のムカデのような虫が入っていた。

自分の知ってるムカデとは形が違うからあっちの世界のムカデとはまた違う生き物なのだろうが、ムカデであることには変わりない。

クロノ「これを見せて…どうしようと…?」

レオ「お兄ちゃん、虫嫌いでしょ?だから。」

クロノ「いや、そのだからの意味が分からん。」

レオ「お兄ちゃんがラフにいた頃はね、お兄ちゃんが笑ってる顔とか、幸せそうな顔とか色んな顔見れて幸せだったんだ。だけどね、まだ見れてない顔があるの。」

クロノ「見れてない顔って」

レオ「うん!お兄ちゃんが恐怖で引きつった顔とか、お兄ちゃんが何かに苦しんでる顔とか、お兄ちゃんが助けを求める顔!」

クロノ「おい、本気かよおい!」

レオ「だって見たいんだもん。お兄ちゃんが泣きそうな顔。」

クロノ「いやほんと虫は無理なんだって‼︎ってか虫が得意な人はいないって‼︎」

レオ「だからこそだよ?大丈夫。もしお兄ちゃんが壊れちゃっても、お兄ちゃんの笑顔は僕の頭にたーくさん刻みつけてあるから、絶対忘れないよ!」

クロノ「何も大丈夫じゃないの俺が‼︎待ってストップ‼︎」

レオが桶の中のムカデを1匹掴む。

ムカデは抵抗してレオの手を何度も刺したり噛んだりしている。

手があっという間に傷だらけになり、見ているだけでかなり痛々しいのにレオは表情を変えない。

クロノ「ちょっとレオ、手‼︎」

レオ「痛くないよ?お兄ちゃんの見たことない顔を見るためだもん。」

レオが自分の膝に座る。

抱きつくように体を寄らせ、ムカデを持った手を耳に近づける。

たくさんの脚が蠢く音と不快な鳴き声のようなものが耳を通って心臓を抉ってくる。

クロノ「やめ、ほんとにやめて‼︎嫌だから‼︎まじで‼︎」

レオ「お兄ちゃんすごい顔してる‼︎ほんとに嫌なんだね‼︎もう泣いちゃうんだね‼︎」

ムカデを持っていない方の手を口に突っ込み、無理やり開けさせられる。

(ちょ、何する気だ⁉︎)

ムカデを持った手を口に近づけてくる。

レオ「お兄ちゃん、あーん。」

口を閉じようとしても、手の力が強すぎる。

(やめろ‼︎やめろおおお‼︎)

レオ「あーーーん。」

口に入るか入らないかというところで、レオがムカデを握りつぶす。

飛び散ったムカデの血が口の中に少し入ってくる。

クロノ「はぁっ‼︎はぁっ‼︎」

これだけでもう何年か分の恐怖を味わった。

昔とあるサキュバスとドラキュラのハーフに拷問されたことがあったが、恐怖の大きさだけならダントツでこっちが勝っている。

レオ「お兄ちゃん、血が口の中に入っちゃったよ。ほら。」

舌を掴み、口の外に出す。

レオ「ほら、見える?」

見えない。

レオ「苦いのは分かるでしょ?これどうする?切り落としたい?」

(切るのはやめろ‼︎それくらいなら我慢するから‼︎)

レオ「あーあー言われても分かんないよぉ。ほら、なんて?」

舌を千切れそうなほど引っ張る。

レオ「冗談だよ。ほら…」

レオが自分の舌に付いた血を舐めとる。

(なっ⁉︎)

レオ「思ったより苦いね。」

クロノ「レオ…」

レオ「それじゃあそろそろ外に行ってくるね。ご飯とか取ってこなきゃいけないから。」

赤い小瓶を取り、蓋を開ける。

レオ「ほら飲んで。」

(飲んだら眠らされるだろ‼︎)

レオ「大丈夫、まだたくさんあるから!」

(何も大丈夫じゃねぇ‼︎)

レオ「もう!」

手で口をこじ開けられる。

どれだけ強く口を閉じても、簡単に開けられてしまう。

指を口に入れ、閉じないようにさせられる。

レオ「ほーら、ちょっとずつちょっとずつ。」

クロノ「くっ…うっ…」

レオ「本当は香りを嗅ぐだけでも眠くなるんだけど、飲むとすっごい効果あるんだって。それじゃあおやすみ、お兄ちゃん。」

何か考える間も無く、意識が落ちていく。

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