文太は転校生と出会った。
学校に到着するとまず、体育館に集合し始業式が始まった。
新任の教師の紹介や校長先生の話も終わり、皆教室へ向かった。
2年生になるとクラス替えがあり、周りを見渡しても半分は知らない顔だった。
ワイワイと皆、話している。同じ部活の仲間と同じクラスになった喜びを分かち合ったりしている。文太にはそういうのはなかった。なぜかというと、単純に部活に入ってないからだ。
文太は帰宅部である。
文太は新しいクラスの雰囲気にソワソワしていた。とは言っても顔は相変わらず無愛想だった。
『よう。梶原!!』
後ろから高橋に呼ばれた。ちなみに梶原と言うのは文太の名字である。
高橋はいつもヘラヘラと笑うやつだ。
その点で言うと文太とは真逆である。
しかし、一年クラスの時はよく一緒にいた。
文太は高橋の細かい事を気にしない所を気に入っていた。
『これ知ってるか?うちのクラスに転校生が入るみたいだぞ』
『知らない』
文太はそっけなく答えた。
正直、余り興味はなかった。転校生が美少女で淡い恋愛が始まる・・・なんて事も考えない。
『梶原の隣の席が空いてるからたぶんそこに座るんだろう』
『そうなんだ』
文太はまたそっけなく答えた。
隣ならば教科書を見せたり、移動教室の時案内したりしないといけないなと思う程度だった。ガラガラと建てつけの悪い扉を開け先生が入ってきた。40歳過ぎの男の先生でたしか社会の担当だったと思う。
『これから1年間このクラスのみんなで過ごすけれども、もう一人仲間がいる』
『長谷川さん入ってきて』
と先生は扉の向こうにむかって言った。
教室の前方の扉に皆の視線が集中する。期待と興奮で熱が上がっているようだ。
ガラガラと扉が開き廊下から小柄な少女が現れた。
生徒達はおのおの、おう、や、わぁ、と感嘆の声をあげ、かわいいと言う声も聞こえる。
文太も美人だなと思った。でも美人と話すのは緊張するのでちょっとやだな窓のから外をみた。
そんな事を考えてぼーっとしていると、ふとクラスのざわつきがおさまっていた。特に先生が何か言ったわけでないのにおかしいなとクラスを見渡すと、皆、前の方を向いてポカーンとしている。
その視線をたどっていくと、転校生が立っていた。 身長は150センチメートルぐらいだろうか、色素のうすい栗色のセミロングの髪の毛。軽くクセがあり内側に巻いている。
まぁるい、やや大きめな目は照れてるのか、緊張しているのか、伏せ目がちに周りをチラチラみていた。
なんだか可愛らしいリスのような印象をうける。
これは7割の男子はときめいたなと文太は思った。
しかし、皆がポカーンとしている理由がわからない。可愛い女の子が立っているだけなのだ。でも文太も違和感を感じる。が、なにかわからない。よく橋本に『お前は鈍感だな』と言われた事を思だしていた。
『じゃさっそく、自己紹介をしてもらおうか』
と先生は転校生の方見て言った。
転校生は、はい、と小さく返事して自己紹介を始めた。
『私の名前は長谷川詩子です。お父さんの転勤でこちらに引っ越してきました。みなさんと早く仲良くなりたいです。』
と割と普通な自己紹介をした。
『はいっ、ありがとう。じゃみんな長谷川さんに何か質問はあるかな?』
と先生は言った。
『はいっ』
するとすぐ、男子から手が上がった。
『その背中に背負ってるものはなんですかっっっ!!』
なんて質問だと文太は思った。
背負ってるものと言っても教科書の入ったカバンぐらいだろう。そんなもの聞いてどうするんだ、とか考えていると、
ドン!!
と大きな音がなった。
文太は音の鳴った方をみると、長谷川さんが背負っていたカバン・・・
もとい、背負っていた本を床に置いた音だった。
すると長谷川さんは嬉しそうに満面の笑みを浮かべ
『辞書です!!』
と答えた。




