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この捻れた世界にて、〜悪役令嬢は愛する者のために戦う〜  作者: 3色あんこ
第4部 常世に最も近い国

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第1話 東海の海、璃州港


カント・マリスを発ってから、およそ2週間。

ルヴァン王国を出立してから、2ヶ月が過ぎようとしていた。


長い街道を越え、幾つもの山脈を越え、ようやく一行は大陸最東端に位置する港町──崑明(クゥンミン)民主国家・璃州(リージョウ)港へと辿り着く。


「……すごい」


馬車を降りたミーナが、思わず声を漏らした。

隣に座っていたミレイユも窓の外を覗いてから目を大きく開く。


目の前には今まで見たこともない景色が広がっていた。

港には大小様々な船が停泊し、帆には見慣れぬ紋章が描かれている。

石畳の両脇には赤い提灯が吊るされ、風に揺られながらゆらゆらと揺れていた。


屋台から漂う香辛料の香り。

蒸籠から立ち昇る白い湯気。

色鮮やかな陶器。

絹織物。

異国の言葉が飛び交う市場。

まるで世界中の文化が、この港へ集まってきたかのようだった。


「これはまた……随分と賑やかな街ですわね」


イリシアも珍しく目を丸くする。


「東西貿易の要所だからね」


ヴィクトルが港を見渡した。


「カミツ国へ渡る船もここから出る。各国の商人が集まるのも納得だ」


ジュリアンが苦笑する。


「旅をしてるって実感が湧くな」

「はい!」


ミーナは目を輝かせた。


「見てくださいお嬢様!あっちは点心のお店です!こっちは果物飴!あっ!あそこ、お魚を丸ごと焼いてます!全部美味しそうです!」

「あなたは胃袋で世界を見ていますの?」


イリシアが呆れ半分、笑い半分で言う。

ルークが肩を竦めた。


「否定できねぇな」


その一言に一同から笑いが零れた。



◇


一行はまず宿へ荷物を置くことにした。


カミツ国とルヴァン王国とのやり取りをまとめた資料によれば、カミツ国の外交船が港へ到着するのは4日後。

それまでは、特に予定はない。


「しばらくは自由時間ってことか」


ジュリアンが腕を上げ、大きく伸びをする。


「さて、迎えが来るまで4日は暇だ。好きに港を見て回るのもいいが……ルークはどうする?」


尋ねられたルークは肩を回しながら苦笑した。


「俺は今日はいい。さすがに疲れが溜まってるしな。今日は宿でゆっくり休んで、近くの店で飯でも食って寝る。明日は武具屋と酒場を巡りてぇ」

「確かに、長旅でしたものね」


イリシアも小さく頷く。


「わたくしも疲労が溜まっていますわ。今日はサロンで全身をほぐしていただいて、ゆっくり体を癒したいですの」


その言葉にヴィクトルも柔らかく微笑んだ。


「それがいいね。無理をして体調を崩したら元も子もない。今日は皆、ゆっくり休もうか」

「えぇーっ!?」


ただ一人、ミーナだけが大げさに声を上げた。


「せっかく異国まで来たのに!?観光は!?お祭りとか市場とか、屋台とか見に行かないんですか!?」


目を輝かせる彼女に、ミレイユがくすりと笑う。


『焦らなくても大丈夫ですよ。明日の午前中から動き始めても、十分いろいろ巡れます』

「……確かに!」


ミーナはぱっと表情を明るくした。


「じゃあ、ミレイユさん!明日は一緒に巡りましょうよ!」

『ぜひ』

「やったぁ!」


ぴょんぴょんと飛び跳ねるように喜ぶミーナを見て、ルークが呆れたように笑う。


「元気だな、お前は」

「旅に来たら楽しまなきゃ損だもん!」


その屈託のない笑顔に、一同から自然と笑みがこぼれた。

ミーナはそのままくるりと振り返る。


「ジュリアンさんも来ますよね!」

「は?」

「女の子2人なんで護衛です!」

「おい」

「あと荷物持ち!」

「それが本音だろ」

「えへへ!」


ジュリアンは頭を掻きながら笑う。


「まぁいいか。ルーク、お前は来るか?」

「いや別行動させてもらう」

「了解」


その様子を見ながらイリシアは柔らかく微笑む。


「ふふ、皆様とても楽しそうですわね」


ちょうどその時だった。


「イリシア」


ヴィクトルが静かに声を掛ける。


「はい?」

「せっかくだ、僕たちも二人で歩かないか?」


一瞬、時間が止まった。


「…え?」


理解した瞬間。


「ふぇっ!?」


耳まで真っ赤になるイリシア。


「で、ででで、殿下と……ふ、二人で?」

「嫌だった?」


ヴィクトルが少しだけ寂しそうな顔をする。


「いっ、いえっ!そんなことは決して!その……えっと……」


視線が泳ぎ俯く。

指先がもじもじ動き、頬は真っ赤だった。


「よ……よろしく、お願いいたします」


か細い声。

ヴィクトルは思わず笑みを浮かべた。


「ありがとう」


少し離れた場所。

ミーナが小声でジュリアンへ囁く。


「やりましたね」

「……何がだ」

「お嬢様と殿下のデートですよ」


ミレイユも目を輝かせながら頷く。


(こくこく)

「お前……絶対狙ってやっただろ」

「えへへ半分くらい」

「半分かよ」


呆れながらも、ジュリアンは笑ってしまう。


「まぁ……たまには二人だけの時間も必要だろ」


そうして、一行はそれぞれの目的地へ歩き出した。


第4部始動です!ついに神津国です!これからどうなるのかドキドキですね!


読んで頂きありがとうございます!

次回の投稿は20時頃を予定しております!


本作品はカクヨム、アルファポリスにて同時投稿をしております。

気が向いたらいいね、ブクマ、よろしくお願いいたします。

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