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この捻れた世界にて、〜悪役令嬢は愛する者のために戦う〜  作者: 3色あんこ
第3部 泡沫の鎮魂歌

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第33話 革新派の矜恃



フィリップ王子による断罪劇が失敗に終わり。

東方使節団が王都を旅立ってから、3日。


教会、革新派筆頭枢機卿──ラファエル・ドミニクは、ある場所へ幾度となく足を運んでいた。


魔導公爵家。

ヴァルモンド公爵邸。

表向きの理由はただ一つ。


「あの日の件につきまして、改めてお詫び申し上げます」


謝罪。

それだけだった。

だが実際の目的は違う。

応接間ではエドガー・ヴァルモンド公爵、セシリア公爵夫人、アラン、リリアナが席につき、ラファエルと静かに言葉を交わしていた。


「……東方使節団は予定通りカミツ国へ向かわれました」

「ええ」


エドガーが頷く。


「途中経過も逐一報告が届いております」


ラファエルは静かに胸を撫で下ろした。


「それを聞いて安心しました」


そこから先は謝罪ではない。

保守派の動き。

教会内部。

王宮。

各貴族の反応。

互いに情報を共有し合う。

教会改革へ向けた、水面下での作戦会議。


そんな日々が続いた。

1週間。

10日。

2週間。


そして、ついに保守派が動く。


教会本部。

長い回廊。

ラファエルの前へ一人の老人が立ちはだかった。


保守派筆頭。

枢機卿バルタザール・グレゴリオ。


白い法衣を揺らしながらバルタザールは睨みつける。


「ドミニク枢機卿」


ラファエルは歩みを止めた。


「何でしょう」

「最近やけにヴァルモンド公爵家へ出入りしておりますな」


細い目が鋭く光る。


「……まさか、我々保守派の力を削ぐためではありますまいな?」


その言葉を聞いた瞬間。

ラファエルの眉がぴくりと動いた。


「……」


深く息を吐く。

そして、呆れ果てたように額へ手を当てた。


「……」

「……」


周囲の神官たちも空気を察し、固唾を呑んで見守る。

やがてラファエルは静かに顔を上げた。


「……ふざけるのも大概になさい」


その一言だけで空気が凍った。

バルタザールが目を丸くする。


「な……?」


ラファエルは一歩踏み出す。


「私は、あなたの後始末をしているのですよ?」

「!!」


その場にいた神官たちがざわめいた。

ラファエルは止まらない。


「どこかの誰かが祭り上げた聖女が、あろうことか婚約者のいる第二王子へ言い寄り。国王陛下を始め、多くの貴族が見守る中で大恥を晒した。その結果、最も傷付いたのは誰です?」

「……」

「第二王子殿下?いいえ。リリアナ・ヴァルモンド嬢です。

彼女は何一つ罪を犯していない。それにも関わらず、人前で断罪され、辱めを受けました」


ラファエルの声は徐々に熱を帯びていく。


「本来なら、彼女の後見人であるあなたが、真っ先にヴァルモンド公爵家へ赴き、謝罪しなければならなかった。

私は一週間待ちました。

今日こそ行くだろう…明日こそ行くだろう…そう思って……ですが。」


ラファエルはバルタザールを睨みつける。


「あなたは一度たりとも足を運ばなかった」


バルタザールの顔色が変わる。


「そ、それは……」

「だから、同じ枢機卿である私が。教会を代表して謝罪へ赴いているのです。それが理解できませんか?」


完全に言葉を失うバルタザール。


「し、しかし……たかが貴族の娘一人へ謝罪したところで──」


その瞬間、ラファエルの声が一段低くなる。


「……たかが?」

「はい?」

「今、何と仰いました?」


教会中が静まり返る。

ラファエルは静かに言った。


「保守派筆頭であるあなたなら、知っておりますよね?

リリアナ・ヴァルモンド嬢が、三大公爵家。魔導公爵家の令嬢であることを」

「……」

「ヴァルモンド。リュシアン。アルヴァン。

この三家が互いをどれほど信頼し合っているか、知らないとは言わせません。もし、その内の一家でも教会から離れれば……残る二家も必ず距離を置きます」


ラファエルは静かにバルタザールに詰め寄る。


「そして、三大公爵が離れれば。国王陛下も教会を容易には庇えなくなる」


ラファエルは一歩、さらに踏み込んだ。


「今なお教会が王家との信頼を保てている理由。それは、先代国王陛下と旧知の仲であられたセラフィム教皇猊下がご健在だからです。ですが、もし教皇猊下がお隠れになられた後、再び今回のような事件が起きれば。王家は、三大公爵家を選びます。

教会ではありません」

「……」

「それほどまでに、あなた方保守派は危機感が足りない」


ラファエルは胸へ手を当てた。


「私は、教会を守りたい。

だから謝る。だから頭を下げる。だから信頼を取り戻す。それが教会を背負う者の責務だからです。」


沈黙。

誰一人として声を発せない。

バルタザールは顔を真っ赤にしたまま俯いていた。

反論できない。

全てが正論だった。

ラファエルは静かに踵を返す。


「グレゴリオ枢機卿」


最後に振り返る。


「どうか、教会を守るという意味を、今一度お考えください」


そう言い残し。

ラファエル・ドミニクは静かにその場を後にした。


残された神官たちは互いに顔を見合わせることしかできなかった。

教会は今、大きな岐路に立っている。


その事実だけが、重く廊下に残り続けていた。

キャー!ラファエルサン!カッコイー!


読んで頂きありがとうございます!

次回の投稿は20時頃を予定しております!


本作品はカクヨム、アルファポリスにて同時投稿をしております。

気が向いたらいいね、ブクマ、よろしくお願いいたします。

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