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鷹条Side
花房の屋敷は大きい。誰かに聞いた話では、私はここに舞の稽古で来たことがあるらしい。
でも、全く覚えていなかった。
不思議だった。全く見覚えのない娘だと思った。
初めて会ったと思う。
それなのに、娘が泣いた瞬間、なぜか自分の指がその涙を拭おうとしていた。
頬に指が触れそうになった。
まるでそうするのが当たり前だったかのように。
だが、何も思い出せない。
目の前の娘は、舞の家元の娘らしく、凛としていた。
それなのに、涙を堪える顔はひどく可憐だった。可愛らしさがある顔立ちだった。
二十歳前後だろうか。
――私は、この娘を知っているのか?
そう思った瞬間、胸の奥が妙にざわついた。




