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手のひらほどの○○を【不定期】  作者: Nadi
小さい君

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15/22

誘われて

 キエリは、飛ぶのを試みては落っこち、飛んでは落っこちを繰り返しながら金色の蝶を追っていた。


 「はぁ‥‥はぁ‥‥」


キエリは、からだにあざができて、体力も削られて息が上がってきた。


キエリのお腹が悲しくないた。


思えば、昨日の夜から何も食べていない。


舞踏会でもあの一件で美味しそうな料理を食べそびれてしまった。


 「もう少しよ! 頑張って!」


時々声の主は励ましの声をキエリにかけてくれる。


 力も入らないがここでうずくまっていてもしょうがないので気合を入れ直してもう一度試みる。


 「はぁ‥‥ふぅ‥‥」


特訓の成果かだんだんと飛ぶのにも慣れてきて、ふらふらとだが、からだはひっくり返ることなく飛べるようになってきた。


飛んでは休んでを繰り返して進んでいく。


すると、次第に森の中にきりが漂ってきた。金色に光るおかげでキエリが蝶を見失うことはなさそうだが、周りがどんどん見えなくなるのは不安を掻き立てる。


 (ずいぶん飛ぶのにも慣れてきた。けど、どこまで行くのかな? 早く、たどり着いてほしい)


「あっ‥‥」


 霧が晴れたと思ったら見えてきたのは、可愛らしい赤い屋根の家だった。


その大きさから自分の村の家よりも部屋数は多そうに見える。


周りには見たことがない草花が植えられている綺麗な庭園がある。


 金色の蝶はそこで役目を終えたのか消えてしまった。


 「着いたの?」


キエリは、疲労とたどり着いたという達成感からか気が抜けてしまって、地面に下りて倒れ込んでしまった。


 (駄目だ‥‥からだが動かない、かも‥‥頑張らないと、いけないのに)


 地面に突っ伏しているキエリに振動が伝わってきた。


キエリが顔を上げるとフードで身を包んで顔も黒い布で隠している人物がキエリの前にかがみこんでいた。


かろうじで瞳が見えるがそれ以外はわからない。


 「あなたがわたしに話しかけてくれた人ですか?」

 「そうよん。わざわざ来てもらってごめんなさいね。疲れたでしょう? さ、アタクシの家でゆっくり休んでちょうだい」


そういうとフードの女性はキエリをそっと掴み上げて、家の中まで運んでいった。


彼女は手袋までしていて、よほどからだを見せたくはないようだ。


 普通の家かと思っていたが部屋に入るとそこは本、本、本だらけで本の塔がいくつも出来上がっていて、書類も散らかっている。


かろうじで机とわかるところには庭で栽培している草が置いてあって隣には調合するためのすり鉢やら鍋やらが置いてある。


 キエリの家はキエリが怪我してはいけないからと極力物を減らし、きれいに整頓されていたため、キエリは、家の荒れように驚愕していた。


 (す、すごい部屋。お掃除しないのかな? 休んでと言われたけど、休める場所あるのかな?)


そんな心配をしているとフードの女性は「しまったわ! これは休めないわね」とやっと気づいたようで、別の部屋に移動した。


 女性の寝室に入ったようだが、寝台の周りにも本やら書類やらが散乱しているが床が見えて先ほどの部屋よりはずっとマシだった。


 フードの女性は、足を上げて本を避けながら寝台にたどり着き、キエリを寝台の上に寝かせた。

木の窪みで寝たキエリにとってここは天国のように思えた。


だが、このまま寝てしまっては話し合いができないと思い、重いからだをなんとか起き上がらせた。


 「あの、わたしはキエリと言います。結局あなたは何者ですか?」


フードの女性も寝台に座った。


衝撃でキエリのからだが少し浮いた。


 「アタクシの名前はゼノ世界一の魔法使いよん」と、彼女は誇らしげに簡潔に自己紹介した。


 (やっぱり魔法使いだったんだ。それなら‥‥)


 「あのっ、ひとつ聞きたいのですが‥‥」

 「まって! アタクシ急用なの! アナタに頼みたいことがあるのよその後でよければ、アナタのお願いなんでも聞くわ!」

 「きゅ、急用ですか? わたしにできることが?」

 「アナタにしかできないことよ。その鱗粉を分けてほしいの」


 妖精の鱗粉からは万能薬が作られると言っていた。


このゼノという人は、万能薬を作るためにキエリをここに呼んだのだ。


キエリは、基本的に人の役に立てるのは嬉しく感じるはずだったのだが、妖精だと知ってからは「利用される」という考えが生まれていた。


しかし、この人はキエリを助けてくれたのは事実で、そう考えると持ちつ持たれつなのかもしれない、という判断に落ち着いた。


 「わかりました。どうぞ」


キエリは、背につけている折り畳みナイフを取って、うつむせになって羽をゼノに見せた。


 「きゃー! ありがと、ほんと嬉しい! それじゃ、さっそく貰っちゃうから楽にしててね」


 ゼノはどこからかガラスの器とブラシを取り出し、キエリの羽をブラシで撫でた。


 (うぅ、くすぐったい‥‥)


そうして、キエリの鱗粉を貰ったゼノはるんるんとした足取りでどこかに行ってしまった。


 なかなか戻ってこず、キエリもその場から動く気力もなく、結局は眠りに落ちてしまった。

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