寂しくとも
キエリは、鳥にのせてもらって、どこかの森の中にたどり着いた。
森の中はいっそう暗く、何かわからない動物の鳴き声が聞こえてきた。
疲れ切って激しい眠気が襲ってきて、これ以上は進めそうもなかった。
「一旦安全なところを見つけないと、鳥さんもわたしも限界だ」
「鳥さん、あそこ」
キエリが指さしたのは木の根元の大きな窪みの部分だった。中は幸運なことに動物がおらず、枯れ葉が中にたまっていた。
「ここで夜をこそう。鳥さん入れる?」
鳥に奥に入ってもらうと、鳥は座り込んでこてんと頭をさげた。
キエリをのせてだいぶ飛んだのでかなり疲労がたまっているようだ。
キエリは、眠る鳥の翼を優しくなでた。
「鳥さんここまで運んでくれてありがとう。あなたにもきっと家族がいるのに付き合わせてしまってごめんなさい」
鳥は静かに目を閉じて、眠りについた。
キエリも鳥にもたれかかって寝ようかと思ったが、暗闇から動物の鳴き声がして、目が覚めた。
「‥‥‥」
フェリクスから貰ったナイフをリボンをほどいてとり、からだで抱え込んだ。
「大丈夫‥‥大丈夫、今寝ないと、明日が大変よ‥‥」
目をつむり恐怖に耐えながら、一晩を過ごした。
次の日、キエリは日が昇ると同時に目が覚めた。
結局寝ては覚めを繰り返して、じっくり寝れたわけではなかった。
「う‥‥ん、からだが痛い」
腕を伸ばすとからだ中がぴきぴきと痛かった。
寝ていた木の窪みから顔をだし、辺りを見渡す。
「はぁ‥‥夢だったらと思ったけどやっぱり現実か」
昨日の出来事が全部夢で目が覚めれば何もなかったかのように家にいたらと願ったが現実は残酷なままだった。
後ろを振り向いて鳥の様子を見ると、元気になって、ぴょんぴょん跳ねながら外に飛び出した。
「よかった、元気そう。でも、ずっとこの子に頼るわけにはいかない」
キエリは、自分の背中に視線をやる。
光の羽がしっかりとキエリについている。
「この羽で飛べないかな? そしたら、一人で移動できるのだけれど」
キエリは、ゆっくりと羽を動かしてみると羽はキエリのからだの一部のように自由に動く。
「ほっ!」
キエリは、掛け声とともに飛んでみるが地面に着地した。
「まさか、見かけだけなんてことないよね‥‥だって、シアンス先生だって物事にはちゃんと意味があるって言ってたもの‥‥」
「‥‥‥」
村での生活を思い出してしまって鼻の奥がつんとした。
「‥‥もう一回、やってみよう」
「ゔ、んん‥‥」
今度は羽を目一杯羽ばたかせてみた。
少しからだが浮いたがずっと続けられそうにはなかった。
「はぁ‥‥はぁ‥‥どうやったら」
「力で飛ぶんじゃなくて、魔力で飛んでみたら?」
「え?」
どこからともなく女性の声が聞こえてきた。
辺りを見回しても人影はない。
「だっ誰ですか?」
「今はアタクシのことなど気にしないで、さ、想像してみてあなたの羽の光が全身を巡って、からだを軽くする‥‥ほらっ! さんはい!」
「え? え?」
「どうぞ!」
「は、はい‥‥」
声のもとはわからないが助言をしてくれているようだ。
一度やってみてみても悪いことは起きないだろうとキエリは思った。
(羽の光が全身に‥‥からだが軽く?)
「うわっ!」
するとキエリのからだが空中に浮いた。
しかし、バランスが崩れて足が真上に上がり背中から地面に落ちた。
「いたた‥‥でも、少しだけ飛べた?」
「んふふ、ま、最初なんだから、そんなものね。練習すれば、できるようになるんじゃない?」
「あの、あなたは誰ですか? どこにいるんですか?」
「そうね~、アナタと直接会ってから自己紹介しようかしらね。残念だけどアタクシここからでれないの、出たくない! だから、アナタがこちらに来てくれる?」
「こちらって‥‥?」
キエリが再び辺りを見渡すと空中に金色に光る蝶が現われた。
「その子についてきてちょうだい。ま、飛ぶ練習でもしながら、ね」
蝶はキエリの周りをひらひらと回った後、どこかに向かって飛んだが、途中でキエリを待つように止まっている。
キエリが不思議に思いながらもどうしようか迷った。
(どうしよう‥‥ついていくべきかな? でも、飛び方を教えてくれただなんて、妖精について詳しいのかもしれない)
(それに、こんなことができるなんて、きっとこの人は魔法使いなんだ‥‥魔法使いなら、もしかして‥‥)
キエリは、ある考えを思いついて、意を決して魔法使いであろう女性のもとに行くことにした。
キエリは、鳥にくるりと向き直ってぎゅっと抱きしめた。
「鳥さん、わたし頑張って飛ぶ練習するから、もう大丈夫だよ。本当にありがとうね。あなたのお家にちゃんと帰るんだよ」
鳥は、首を傾げてキエリを見て、ちょんちょんと跳ねた後、白から濃い青に変わっていく空に飛び去った。
キエリは、本当に独りになってしまったと思ったとたんに悲しさで心がくじけそうになったがフェリクスにもらった折り畳みナイフをからだにしっかりと巻き付け直して、蝶を追いかけた。
ナイフは冷たいはずなのに、応援してもらえてる感覚がして少しだけ温かく感じた。




