捜索
再び、城門の前にグリードとソルダは来たが今度も門番に止められた。
「あっ! 先ほどの方々、入ったと思ったら出てきて、また入るおつもりですか?」
グリードは来たはいいが、ここに来るまでにどうこの門番を説得しようかまでは残念ながら思いつかなかった。
すると、ソルダが懐から騎士団員というのを証明するブローチを出して門番に見せた。
「俺はオレオール国マギ騎士団所属ソルダです。この度の舞踏会に馬が乱入した騒ぎについての調査を手伝うようにと騎士団長に命を受けました。一度出たのは、参加者の人を避難させるためです」
「もちろん馬が通っていくのを止められなかったあなたのせいではありませんが証明は必要ですから、そのためにも通っても構いませんよね?」
ソルダがにこりと微笑むと「はっ、只今!お通りください騎士殿!」と、顔を青くして門番は先ほどとはかうってかわってすぐにどいた。
こうして二人は無事、再び入城することができた。
「この言い訳が通じて良かったです。まぁ、たとえ団長に確認されてもあの人なら話を合わせてくれるでしょう」
グリードが疑念と怒りの視線をおくる。
「ソルダぁ、あんな風に脅して入る才能があるなら、何故先ほどやらなかったのだ!」
ソルダはすました顔ですたすたと歩いて行く。
「先ほどはグリード様の私情の事でしたから、俺が介入するのはどうかと思いまして、それにあんなになんにも考えていないとは‥‥言い方を工夫すれば入れたかもしれないですよ」
「うぐっ‥‥次からは考えて行動するようにしよう」
「グリード様の向上心があるとこ、俺けっこう好きです」
「お前に言われても嬉しくないわっ! だぁー、もう! さっさと行くぞ! 目撃情報を集めて、状況次第では城のものに協力もしてもらわなければならんしな」
会場に近づくにつれ、廊下は鳥の羽がそこら中に散らばっていて、騎士団員が参加者たちを会場から非難させていた。
ソルダとグリードは楽しい舞踏会の会場となるはずだったダンスホールに入った。
グリードたちの連れた馬以外にも乱入していたのか何頭もの馬がいたが今は落ち着いて、手綱が騎士たちに握られている。
ソルダがきょろきょろと辺りを見渡して、一人の騎士団員をひっ捕まえた。
「お久しぶりです。先輩、今日の舞踏会で俺の友人たちが一人大怪我を負って、一人は行方不明なのですが、何があったのかお話しを聞かせていただけませんか?」
先輩と呼ばれた騎士団員は顔が引きつっていた。
にこりと笑顔を見せるソルダの危険性をこの先輩も知っているようだ。
「もし、あなた方はマーガレット様とキエリ様のご友人でいらっしゃいますか?」
先輩に詰め寄っていたソルダとグリードに話しかけたのは執事のアリアスであった。
二人はアリアスのことをマーガレットから聞いていた。
親切にしてくれたことも、どうしてか囲まれた時には助けてはくれなかったことも。
「アリアスだな、オレはキエリとマーガレットの‥‥ゆ、友人のグリード・アングリフ・リストクラータだ」
(グリード様、自分で言って恥ずかしがらないでください)
(うるさい!)
グリードが咳払いして、アリアスに向き直る。
「して、アリアス殿、実は友人のキエリが行方不明となっているがどういうことか説明してもらえるかな?」
「キエリ様が行方不明になっているのですか!? そんな‥‥いえ、あの状況でしたらそうなる可能性が十分ですね。お優しそうな方でしたから」
「この度は、大変申し訳ございませんでした。楽しく過ごしていただくはずが、こんな危険な目にあわせてしまうなど、もてなす立場としてあるまじき醜態にございます。至急、キエリ様を保護すべく部隊を編成いたします」
アリアスは、少し話しただけなのに状況を把握し、頭を深く下げ謝罪した。
状況を受け止めて真摯に対応しようとするあたり、彼がキエリたちを見捨てるようには思えなかった。
「頼むぞ、と言いたいところだが、彼女の正体を知られてあんな目にあったことを忘れたとは言うまい。騎士団もここの人間も信用できるのか?」
グリードは探るようにアリアスを睨んだが、アリアスはひるむでもなく目をそらすこともない。
「ごもっともにございますリストクラータ様。私どもが信用に足ると証明せねばなりませんね」
「こちらへ‥‥」
グリードとソルダが連れてこられたのは城の裏側で騎士団の寄宿舎がある。
寄宿舎の手前が訓練用の広場となっているのだが、そこにはすでに騎士団員が集まっていた。
しかも、その中でも優秀なものだけがなれる聖騎士が集まっている。
聖騎士たちの傍には馬よりも首周りに体毛が多く、立派な一本角を持つユニコーンや角はないが鳥のような翼を背に生やしたペガサスが手綱を握られている。
「キエリ様の捜索にはこちらの聖騎士団が務めさせていただきます」
グリードは、口をあんぐり開けて驚きを隠せないでいた。
(聖騎士だと!? 聖騎士など特に武芸に優れ、国の重要任務にあたるような優秀集団ではないか!)
アリアスは、一枚の用紙を取り出し、さらさらと何かを書き出した。
そして、それを聖騎士団員たちに渡すと団員たちも何かを書いて、順々にまわしていった。
それが再びアリアスのもとに戻るとアリアスはグリードに用紙を手渡した。
「キエリ様を傷つけないこと、私利私欲のために利用しないことを誓う、誓約書にございます。破れば聖騎士団からの除名処分はもちろん。投獄されます」
「そこまでするのか‥‥」
「はい、そもそも、私があのときキエリ様とマーガレット様を守っていれば起こらなかったことでございます。もし、誓約書の文言を増やしたいのでしたら、お申し付けください」
「いや、十分だ‥‥」
グリードは、驚きと疑問で思考が渦巻いて、眩暈がしてくるようだった。
(ここまでしてくれるのは、少々恐ろしい! というか、いつの間にこんなに聖騎士団を集めたのだ?連絡するようなそぶりがあったか?)
(そもそも、一執事が聖騎士団を動かすことができるとは、いったい何者だ!?)
「それでは、今から捜索を始めさせていただきます」
「う、うむ、頼んだ」
アリアスが指示を出すと、聖騎士団員たちはユニコーンやペガサスに乗り、キエリの捜索に出発した。
グリードもソルダも真剣にキエリの捜索に取り組んでくれることには感謝はしたが、アリアスがただ者ではない気がしてならなかった。




