暁の空
突然プンの口から出てきた、ギルドを作るという提案。そこにはここにいる6人の名前があった。
6人? そうか、肉屋の名前が無い。プンは肉屋をどうするのだろうか……。
「”プン。肉屋はやっぱり入れないのか?”」
ウィスでプンにこっそりと耳打ちする。まさか、忘れてるとかじゃあるまいか。
「”大丈夫、ちゃんと考えてるよー^^ けど、その前にやることがあるからね”」
やること?
「プンは思うのです。一番最初に声を上げたプンが、肉屋さんのこれからを見守るべきだって……だから、肉屋さんにはプンのギルドに強制的に入ってもらいます>< 嫌だっていってもダメなのです!」
「嫌」
肉屋は即座にそう言った。
「えーーー;;」
それを見たプンがソーシャルで泣きじゃくる。
「じゃない」
しかし、即座に肉屋がそう付け加えた。……紛らわしい奴だ。
「ほんとに@@」
「それは、こっちが聞きたい。私なんかを入れると、今日みたいなことがまた起こるかもしれない。それでもいいの?」
「大丈夫だよーv^^v なんとかなるから!」
たぶん、なんとかするのはオレ達周りの人間だろうと思う。
「なんとかするよ。ヤマモトがエルフの女の子の為なら何でもするらしいからな。なあ、ヤマモト?」
「ぬを。痛い所を突きおるわ、中尉め! そ、そのかわり、肉屋さん……その生足でハアハア……」
「だそうだ。ヤマモトがなんとかしてくれるから、お前は気にするな、肉屋。オレもできる限りのことはする。……それはもちろん、お前の為じゃない。プンのためだ」
「……ありがとう、エルト」
初めて肉屋に名前を呼ばれた。それに少し面食らう。
「じゃあ、今日からはあなたのことは、ぐらむちゃんって呼ぶね^^! 肉屋さんは、ぐらむちゃんへと生まれ変わるのです。これまでの自分から脱皮するために、新しい呼び名で新しく始めよう^^b」
「ぐらむ……?」
「うん。豚肉500gのグラム。豚って呼ぶのはカワイソウだし、肉って呼ぶのもなんだか……だから、ぐらむちゃん!」
「ぬを。ぐらむちゃん……名前だけでハアハア」
「ぐらむってなんだか、小さい子供みたい……私、これでも大学生。20。せめてグラムにして欲しい」
「ぬ、ぬをーーーーーー!! グラムたん女子大生!? ぜ、ぜひメールアドレスを……」
「ヤマモトくん、興奮しすぎてハアハア忘れてるよ?」
ケルの指摘を受け、ヤマモトは即座にハアハアを付け足した。それにしても……肉屋……いや、グラムは大学生か。
大学生でヤマモトがこれだけの反応を示した。絶対にオレのリアルをこいつに知られるわけにはいかない。でも……ヤマモトなら……別にいい。
――わけないか。
何をされるか解ったものじゃない。
「じゃあ、これからあなたはグラムちゃんです^^ では、改めて」
プンは一歩前に出た。
「ギルドを作ろう^^ プンと、エルくんと、ヤマちゃんと、すぺりおるちゃんと、ケルさん、椛さん、グラムちゃんでギルドを作ろう!」
そうか。それでさっきはあえて名前を出さなかったのか。肉屋としてではなく、グラムとして、ギルドの一員になってもらう為に……そうだな、プン?
「punoun321さん。ごめん、やっぱり俺はダメだ」
まとまりそうになった空気を、椛が横からばっさりと切り裂いた。……こいつはたまに空気を読まない時がある。
「えーーなんでええええ><」
「ギルドってやっぱりいいものだよ。ゲームの中だと帰る家みたいなものだと思う。俺にはすでに家がある……家出中だけどね。そこに戻らないといけないんだ」
「どうして@@?」
「……家出している間に、でっかいケンカがあったみたいなんだ。俺はそれを納めにいかないと。それに……その家は、カインの帰ってくる家だから。カインが帰ってくるまでは俺が守ることに決めたんだ」
椛が……行ってしまう。カインはここにいるのに……もう一度、椛と同じギルドになれると淡い期待をしたのに……世の中はどうしてうまくいかないんだろう。
カインだと言ってしまいたい。椛に今までのことを全て打ち明けて……でも……今はプンを育てると誓ったから……でも……。
「椛さん」
「はい?」
「カインはきっともうすぐ帰ってきますよ。絶対に、必ず」
「エルトさん……そうですね。俺もそう思います。案外、カインは近くにいるんじゃないかなーって……思ったりね。でも、すぐに戻ってこなかったってことは、きっと事情があるんだ。俺はいつまでも待ちますよ。カインのこと」
待っていて……くれるんだ。
「ありがとう」
自然な気持ちで、指がキーボードの上を動いていた。それも、無意識の内に……しまった。
「え?」
「ああああ、いえいえ、なんでも! その、さっき色々と援護射撃してくれてって意味で!」
「@@? なんかエルくんの様子がヘンだー」
プンめ、鋭いな。
「まあ、とにかくそういうワケなんです。すみませんpunpun321さん」
「了解です><ヾ またお会いしましょうね、椛さん^^ノ」
「ええ、また。どこかの狩り場で……」
椛は背中を見せ、この場を去っていった。
「そういえば、ケルとすぺりおるはギルド加入に問題は無いのか?」
ケルは無所属の為問題はないかもしれいが、すぺりおるはすでにギルドに加入しているし、マスターだ。サブキャラとはいえ、無理に誘えないだろう。
「アタシは問題ナッシング! プンちゃんとエルトくんのこと好きだからね^^」
「ぬお。ケル姐さん! ぼ、ぼぼぼくちんは?」
「微妙^^」
「しゅん(°q°)」
ケルは問題ないらしい。あとは、すぺりおるか。
「別にいいぜー? うちのギルドって、掛け持ち禁止しているわけじゃないし。みんな、そのへんの事テキトーだしな」
無論、オレも問題ないし、ヤマモトはプンちゃんハアハアなので、聞くまでもないだろう。
「決まりだな、プン」
「よかった^^」
「じゃあ、この6人でギルドを作ろうね! 名前は……プンと愉快な仲間達で決定>< いえーい(*^0^)人(^-^*)」
「絶対ダメ」
「ええーー@@」
「ぬを。では、ネオ・ジ○ンというのは? もしくはデラーズフリー○とか、シャッ○ル同盟も捨てがたし!」
「全部却下」
「じゃあ、エルトの案に期待だな」
「え?」
すぺりおるからの不意打ちだ。ここで自分に振られるとは思わなかった。
――そうだ。閃いた。
エルトと愉快な仲間達。これでどうだ!?
……ってこれじゃプンと同レベルだ。
何か……ないか……。
視線を逃げるようにして、カメラをラグリアの空へと移した。ゲーム内時間では夜中になっていたようで、漆黒の闇が空を支配している。
その闇が、少しずつ光に侵食され……夜明けがやってきた。
赤く焼けた空。それを見て思いついた。
「暁の空……はどうかな?」
夜明けとともにギルドは始まった。ならこのギルドの名前にはこれが相応しい。少なくとも、プンと愉快な仲間達や、エルトと愉快な仲間達よりも。
「おおーw@ロ@w エルくんすごおおい! プンのよりもだんぜんいいよおー」
「かっこいい」
プンとグラムは文句が無いといった様子だった。
「エルトくんセンスあるねー♪ よしよし、お姉さんがナデナデしてあげよう」
「ぬを。ではぼくちんのエントリープラグもナデナデして頂きたく……」
「ヤマモト。さりげにセクハラだぞ。ギルド規約で、セクハラ発言した奴には何か罰でも与えるっての、作った方がいいんじゃねーか?」
「はいはい^^ノ じゃあ、おやつ一週間抜きがいいです~」
「小学生じゃあるまいし、規約と罰ゲームは違うんだぞ……プン。だいたい、そんな事されても痛くもかゆくもないだろ?」
「ええーーー!? おやつ食べないとプンは死んでしまいます;;」
「お前はアホか。ちゃんとした食生活を送れ」
とにもかくにも、暁の空はギルドとして歩みだした。
悲しい別れがあったのなら、嬉しい出会いもある。今、まさにそう思う。
プンと出会ったのきっかけに、新しい道が開けていった。今はエルトとして、プンの隣を歩こう。
この道の先のゴールにはカインとしての自分がいて、さらにその先には辛い過去がある。でもそこには、椛もいて……。
乗り越えるんだ。
だから、少しずつかわらなきゃ、リアルの私も。




