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第3話 超ヤバすぎぃ〜!! 侮辱と屈辱の鬼畜面接www

「……名前は、千道るる奈。25歳。職業、なし。経歴、特になし……。ふ、ふ、ふざけているのか?」


 民自党総本部の面談室は、白い壁が冷たく光る無機質な空間だった。


 テーブルを挟んで座るるる奈は、大胆に足を組み、完全に自分の部屋にいるかのような態度でスマホの画面をタップしている。


 静まり返った部屋に、彼女の毒々しいピンクの長ネイルが液晶を叩く「カチ、カチ」という軽い音が場違いに響き、ストリート特有の甘ったるい香水の匂いが、厳粛な空気の中に霧のように広がっていた。


 対する三人の視線は、まさに理解したくない異物を見るように冷ややかだった。


 東京選挙区担当の福島副幹事長、代田事務長代理、そして鷹町総理の側近として知られる期待の女傑、総務省政務官でもある氷室レイ参議院議員。


 福島副幹事長は提出されたプロフィール用紙を一瞥し、露骨に顔を歪めた。


「千道……るる奈、さん。インフルエンサーの卵? 自称自由業……はあ?」


「えー、失礼しちゃうなー。ウチ、若者の声とかこれからはマジで大事っしょ? 鷹町旋風に乗ってる今がチャンスじゃん」


 るる奈はニコニコしながら答えた。まるでお気に入りのカフェで店員と雑談しているかのような軽さだ。


 氷室レイは最初から腕を組み、氷のような視線をるる奈の派手な銀髪エクステと長い爪に固定していた。


 元総務省キャリア官僚らしい完璧な美貌が、今にも凍りつきそうなくらいの嫌悪を湛えている。


「千道さん。ここは遊園地ではありません。あなたが立候補しようとしているのは、日本の国政を担う衆議院議員の座ですよ?」


「分かってまーす。だからこうして、なけなしの600万円持ってきたわけだし」


 代田事務長代理が、眼鏡の奥の目を鋭く細めた。


「その600万円、どうやって工面したんですか? 失礼ながら、あなたのような定職のない方が即金で用意できる額ではありませんが」


「あー、それ聞いちゃう? 知り合いの社長さんに『ウチに投資しなよ』って言ったら、秒で出してくれたっていうか」


 るる奈は内心で(嘘はついてないし! 黒金さん、社長みたいなもんでしょ?)と自分に言い聞かせた。


 その瞬間、氷室レイの堪忍袋の緒が切れた。


「……福島先生。これ以上、この女性と時間を共有するのは苦痛です。党の品位に関わります。教養も、志も、常識も感じられないこの『目立ちたがり屋』を公認するなど、鷹町総理が掲げる『凛とした日本』への冒涜です」


 レイの声は、部屋の空気を一瞬で凍てつかせた。その視線は、るる奈を場をわきまえない無礼者として完全に切り捨てていた。


「わー、怖い怖い。そんなに睨むとシワ増えますよ? 氷室センセイ」


 るる奈はわざとらしく小首を傾げて笑ってみせたが、握った膝の上で、指先がわずかに震えていた。


(ここで落とされたら……黒金さんに髪も爪も全部持ってかれる……マジでヤバい)


 福島副幹事長は深い、深いため息をついた。まるで泥を飲むような表情で言った。


「……本来なら警備員を呼んで即刻追い出すところだ。だが、今回の急な解散で、東京比例の名簿がどうしても足りん。他党に議席を奪われるよりは……この賑やかしでも埋めておく必要がある」


 氷室レイは椅子を倒す勢いで立ち上がった。


「失礼します。これ以上、礼儀知らずと同じ空気を吸うのは耐えられません。以降の手続きは代田さんにお任せします」


 ヒールの激しい音を残して、彼女は部屋を出て行った。


 福島も立ち上がり、吐き捨てるように告げた。


「比例単独、名簿四位。無論、最下位だ。当選など天地がひっくり返ってもあり得ん。お前はただの『数字の穴埋め』だ。いいな?」


 二人が去った後、代田事務長代理は冷淡に書類を差し出した。


「手続きを済ませましょう。千道さん、勘違いしないでください。あなたは比例候補です。目立つ選挙運動は厳禁。開票日まで、誰にも見つからないよう自宅のベッドで大人しくスマホでもいじっていてください。それが党への最大の貢献です」


 それでも彼は600万円の札束だけは丁重に扱い、指先で確認し、領収書を押し出した。


「供託金、600万円。確かに預かりました。……これであなたは、我が党の公認候補となりました。史上最も不名誉な形で」


 民自党総本部の廊下を歩きながら、るる奈はブランドバッグをぎゅっと抱きしめた。


 屈辱とか、蔑みとか、そんな感情は全部脳内ゴミ箱に突っ込んだ。


(……ふざけんな。あのお局センセイの鼻、絶対明かしてやる。当選して、テレビでニヤニヤしながらインタビュー受けてやるんだから)


 るる奈は廊下の窓ガラスにスマホを向け、自撮りした。画面に映る自分は、相変わらず無敵のギャルスマイルだった。


 けれどその背景に広がる永田町の景色は、彼女が思っているよりもずっと深く、どす黒い闇を孕んでいた。

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