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第6章 言葉で動くを改名

それからの僕は、より文章にのめり込んでいた。


太陽が照りつける7月。

書斎の中は熱気が篭り、エアコンを掛けながら執筆していた。


僕は、相変わらず毎日投稿していた。


約4ヶ月間毎日投稿して気づいたのは、僕は書くのがだんだん好きになっていく事実だ。


週に2回ほどは、過去記事をまとめた記事を投稿して、執筆の時間を作ったりもした。


そうやって、なんとか自分なりに毎日投稿を実現していた。


そして、大きな変化が2つあった。

1つ目は、手書きスタイルに変更したことだ。


元々僕は、文字を手で書くことが好きだった。


とある店舗に配属された時、手書きノートで長文の引き継ぎをして、30代前半でまだ若いのに、頭頂部が薄い店長に「長すぎる!」と怒られたほどだ。


学生時代の頃も、問題集を読むより、手書きした方が圧倒的に記憶出来ていた。


そんな記憶が引き出しの奥から引っ張り出され、「手書きしよう!」と思ったのは、ふとしたきっかけだった。


アウトプット大全を読んでいた時、「手書きした方が、手が無数の運動を行い、脳が刺激されてアイデアが浮かびやすい」とあった。


僕はこの文章を見た時に「あっ、じゃあ手書きしてみようかな」と思い至った。


早速僕は、文具のブンゾウに出向き、ノートはニーモシネの194ノートを購入した。


いつも読者で使っている青いフリクションを持ち、書斎の机に座りながら手書きを試した。


圧倒的だった。

圧倒的に手書きの方が、僕の書きたい欲を刺激した。


スマホだけで入力する感覚よりも、脳内に文字が拡散されている感じがした。


それに、書いた文字を見ることで、新たなアイデアが浮かび、内容に追加することで、より記事に深みが出ている感覚もあった。


(これは…楽しい!!)

青い文字で白紙のノートが埋まっていく感覚が、僕の心を満たしていった。


スマホのみで書いていた半分の時間で、書き終わった時の達成感は、僕を文章の世界により浸らせるには十分だった。


そして、僕は「手書きこそが自分の執筆スタイルだ」と確信したんだ。


もう一つ、大きな変化があった。


それは、若気の至りであるフォーミュラー1を、JEWEL CAFEで10万円で売り、貯金をはたいてM2チップのMacBook Airを購入したことだ。


僕はパソコンを持っておらず、この先も必要だと直感的に思ったからだ。


買う時は緊張したし、後悔しないか迷った。


でも、ミッドナイト色のMacBookを手に取った時、ワクワクの方が勝った。


開封の儀が終わり、noteで掲載されている記事をMacBookで一通り見ていった。


自分は今、noteを始めたばかりだ。

他の人達が、どんな記事を書いているかを知ることが、上達の近道だ。


やはりスマホよりも圧倒的に閲覧しやすい。

たくさんの記事をすいすいと閲覧し、MacBookのデスクトップを閉じた。


(パソコンを買って正解だった)

僕は、そう思ったことを今でも良く覚えている。


僕は、手書きを始めた時と、MacBookを買った時の気持ちを思い出しながら、MacBookのりんごのマークをフロスで丁寧に拭いていた。


「パパ!ご飯出来たよ!」


一階から千聖の声が聞こえた。

僕は、書斎のドアを開けて、少し大きな声で言った。


「分かった!今行くよ!」


僕は、MacBookのフロスをニトリのシェルフに戻して、階段を降りてリビングのダイニングテーブルへと向かった。


生まれてから約半年を迎えた佳くんは、小さな体で手と足をWとMの形にして、リビングの床に敷いたベビー布団で寝ていた。


寝返りももう少しで出来るだろう。

僕達の楽しみが、また一つ、また一つと増えていく。


僕は、佳くんのほっぺたにキスをした。

少し佳くんの顔が動き始める。

だけど、そのまま気持ち良さそうに夢の中へ戻った。


「いつもありがとう」

僕は、小さな声で、だけど誰よりも大きな愛情で夢の中を旅している佳くんに向かって言った。


ダイニングテーブルを見ると、ニトリの青い食器に盛り付けられていた焼きうどんが2つ並べてあった。


うどんの上に盛り付けられている鰹節が、踊っている。


僕は冷蔵庫へ向かい、野菜室にあったジンジャーエールを2つのコップに入れ、千聖が座っている席と僕の席に置いた。


「ありがとう」

千聖が僕に向かってお礼を言うと、僕も「ありがとう」と言葉にした。

なんだがオウム返しのようで、僕と千聖は小さく笑っていた。


手を合わせて、焼きうどんを食べ進めた。

味が濃くて美味い。

ソースが口の中いっぱいに広がり、ジンジャーエールが進む。


僕が、味が濃いのが好きなのを知っているから、今日は濃いめにしてくれたんだな。

ありがたい。

僕は、あっという間に、半分を食べ終わってしまった。


やがて千聖が僕に向かってこう言った。


「どう?noteは順調?」


僕は、その質問に答えるために、口の中に残った物を喉の奥へ流し込むために、ジンジャーエールを飲み干した。


口の中が炭酸と焼きうどんの余韻に満たされながら答えた。


「うん!順調だよ!まだ文章が上手いってわけじゃないけど、毎日見てくれる人も現れたよ!」


僕は、文章を書くたびに、自分の文章を好きになっていった。


この時のPVは週で2000前後ほどだったが、結果よりも「書く楽しさ」を重視していた。


毎日見てくれる人達も現れ、コメントも返すようになっていた。


中には、僕の記事を紹介してくれる人まで現れた。


本当にありがたい。

そんな気持ちに包まれている毎日だった。


「ねぇ、聞いてる?」

千聖が少し不機嫌な表情で、僕に向かって言ってきた。


「うん?何?」


気の抜けた返事をした僕に、千聖が少し呆れたように答えた。


「何?じゃないのよ。今日はこれから佳くんのハーフバースデーの写真を撮りにスタジオアリスに行くからね。焼きうどん食べ終わったなら着替えて」


僕は、「大丈夫。忘れてないよ」と言い、席から立ち上がりキッチンのシンクに食べ終わった食器を置いた。


髭を剃り、歯を磨く。

顔を洗い、柳屋のウルトラハードジェルをつける。


佳くんの晴れ姿だ。

パパの僕がしっかりしないとな。

気合いを身だしなみに込めた。


やがてお出掛けの準備が終わった僕達は、駐車場に縦列で停まっているゴールドのTantoに乗り込んだ。


僕が休日の日は千聖のTantoでドライブするのが常だった。


僕は、千聖が運転する後部座席で、文章のことを考えるのが好きだった。


車窓から眺める景色に想いを馳せる。

まだ出会ったことのない人達へ、どんな文章を届けられるのか?


どうやったら、もっと文章が上手くなるのか?


セブンを通り、ロックンロールバーを通り、そして、スーパーを通り、住宅街を抜け、やがて僕の考えはスタジオアリスに到着した頃に終わりを告げた。


帰宅後、佳くんの晴れ姿を思い出しながら、一人お風呂に入っていた。


ハーフバースデー撮影で白いジャケットの衣装を着て、佳くんがにっこり笑っている姿を思い出した。


僕は、やはりお風呂に入っていると思考が回転するらしいな。


僕が今出来ることはなんだろうか?


自己啓発をnoteや職場のみんなに教えること。

書くこと。

学ぶこと。


論語の精神に沿うなら、「学んだことを世に活かすことこそ人間が本来すべきこと」だ。


確かに、本を読み始めてたくさんのことを学んできた。


そして、これからもずっと。


たくさんある自己啓発から、その人に合った自己啓発を選び届ける。


なんか、ソムリエみたいだなぁ。

今日の食事に合うワインをお客様に提供するような…


そこで、僕はひらめいた。

いや、声が聞こえた気がした。

空から、頭の中から。


「そうだ!自己啓発のソムリエって名前を付けてみよう!」


僕は独り言を言いながら湯船から立ち上がり、椅子に座り、シャワーを頭に掛けた。


41℃のお湯が、僕の思考を更に回転させた。


(自己啓発ソムリエと言葉で動く…併せて「自己啓発ソムリエ 言葉で動く」か…悪くない、いや、むしろ良い)


髪の毛を洗い終わった後には、新たな未来が見えていた。

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