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三日目 モルディブ➂ カムバック!俺のあんこ

モルディブでの優雅なリゾートライフ…を書く予定だったのですが、何か違いました。

「まってくれ。見ればわかるだろう。これはあんこだ。粒あんだ、な?」


手荷物検査の兄ちゃんは無表情で私を見返した。

「これは液体扱いとなります。残念ですが」


「馬鹿言っちゃいけない。カレーが液体扱いされているのは知っているが、粒あんが液体だなんてどこの国でも聞いたことがない」

もちろんよその国で確認したことはない。


「カレーの液体扱いも存じませんが、ともかく規則ですので」


「うがーーーっ!」


これは今より3日前、中部国際空港での出来事であった。

私は手荷物に500gのパック粒あんを忍ばせていた。


…その時点であなたのツッコミが聞こえるようだ。

「なんじゃ、その粒あん500gパックって?」


知らない人がいるといけないので教えてあげよう。粒あんの500gパックとは粒あん500gをジップロックに入れて持ち歩けるようにした500gの粒あんのパックだ。何だよ。


私の最愛の友である粒あん、私はこれを飛行機内に持ち込もうとしていた。

理由は「好きなんだもん」だからだ。いいじゃねえか。


機内食のパンに塗ったり、ギャレーでもらう予定のクラッカーやクッキーに塗っておやつにしようとしていたのだ。そしてモルディブやその先のヨーロッパでもおいしそうなバゲットに高級なバターを塗りたくり、さらにこの粒あんをこってりと盛り上げて「あんバター」を作る予定であった。


この素晴らしい「世界あんバター普及計画」は最初のフライトの前に早くも頓挫したのだった。





「バッカねえ。あなたってホント、バッカなのねぇ」

妻はニヤニヤ笑いながら、私をなじった。


「しかし、どうなんだ。あれは誰が見てもただの粒あんだ。危険物だと思う方がどうかしてるだろう」


「化粧品やゼリーとかでも100gを越えると没収されるのよ。あなたあれだけ事前に調べてたのに、何で知らないのよ」


私はまだショックで待合の椅子から立ち上がる気力がない。

「これでは誰も安心して粒あんを海外に持ち出せないよ」


妻が呆れている。

「いいから早く立ちなさいよ。そもそも粒あんのあんな巨大な塊を海外へ持ち出そうとかフツーの人は思わないわ。預け入れ荷物に入れればよかったのに」


促されて私もようやく立ち上がり、ラウンジに向かって歩き出す。

「はあ…よっこらせっと。それじゃあ、機内でクッキーにあんこを乗せたい人はどうしたらいいんだよ」


「小分けにしてビニール袋に入れるのよ」


「ハッ」


「はっ、じゃないわよ。私は恥ずかしいわ。いったいどこの国にバックパックの底一杯の粒あんを密輸しようとしている人がいるのよ」


「密輸とは人聞きの悪い」


動く歩道に乗った妻はブツブツ言う私から視線を横へ動かし、通路側を向いて両手を広げた。嫌な予感がする。

対面をゲートから歩いてくる旅行者が不思議そうな顔でこちらを見ているが、妻は構わず高らかに歌い始めた。何なんだ、こいつ。


「♪ツブアンミステリー 私を呼(よぉ)ぶの  あんこを捨て去りぃ 不思議な力(ちぃから)で~  旦那がシーンとなって すべてを捨ててく Airplane」(『北ウィング』)


違うやい。捨てたんじゃないやい。捨てさせられたんだい。







2025年 10月3日 モルディブ➂


モルディブは基本オールインクルーシブで島のリゾートにいる間は食べ放題、飲み放題、ついでにアクティビティも利用し放題だ。だが私たちはそんなに食べないし、飲めないし、アウトドアでバリバリ遊ぶ体力もないし、ついでにお金もない。そんなゲストのために「ハーフボード」という制度がある。


食事は朝と夕食がついていて、アクティビティも無料のものと有料のものがある。(何となくモーターを使うものは有料が多いようだ。*無料…シュノーケリング、カヌー、サップなど 有料…パラセーリング、バナナボート、水上バイク、スキューバなど)

他にもミニバーのスナックやドリンクも有料、カフェや夜のバーももちろん有料だ。この辺が「フルボード」だとだいたい無料になる。全部まるっと利用しきれる人は「フルボード」でゴージャスアイランドリゾートを過ごすのがいいと思う。



朝食は10時までとなっている。ギリギリにいってたっぷり食べる。夕食は早めに行きつつ、できるだけ長く居座ってスイーツやカフェまで楽しむのだ。


したがって早朝はやることがなく、シュノーケリングを楽しむことにした。水上ヴィラだから部屋を出て、何ならベッドから10秒以内に海へ潜れる。のんびりプカプカ浮いて、透明な海に棲む鮮やかな色のお魚さんたちと戯れるのは楽しかった。


体を動かすと腹が減る。無料のコーヒーを飲みつつ、持参したあるいは飛行機内のギャレーでニコニコしながらもらったクッキーを食べる。そこに私の大好物である「粒あん」の出番だ…のはずだったのだ。


…前述のとおり、粒あんは名古屋出発の時点で没収されてしまった。大誤算だ。


島にはレストランやジム、プールもヨガスタジオもある。お土産物屋さんもブティックだってバーだってあるけれど、コンビニやスーパーはないのだ。かくして私はあんこを失った禁断症状で手を震わせて、この後の数日間を過ごすこととなった。もちろん嘘だ。


あんこは残念だったが、それでもモルディブのリゾートライフは快適だった。好きなだけシュノーケって、疲れたら冷房の効いたヴィラのベッドに寝転び、とんでもなく青い海と空を眺める。ブランチの後はウッドデッキのハンモックやプールサイドでウトウトしながら読書した。

夕食後、何だか恐ろしくなるほど綺麗で真っ赤な夕焼けの中桟橋を歩き、レストランからヴィラに戻る。

そしてその数刻後、バスタブにゆったり浸かりながらその大きな窓から今までに見たことのない数の星が散らばる夜空を眺めた。


あくびをして、ベッドに潜れば聞こえるのは波の音だけだ。車や隣の生活音やピポパッていう電子音も何にも聞こえない。妻のいびき、ではなくて寝息も可愛いものだ。


常にいきなり始まる妻のミュージカルとビュッフェの味が若干口に合わない(中東の味付けなのかな?なんか酸っぱいのだ)のを除けばノンストレスだ。


これであんこがあれば、ああ、あんこさえあれば。


ブイブイ運動して、モリモリ食べて(ブリブリお通じがあり…私が思うにあの中東風の味付け、トルコ料理だろうか、すごく胃腸には良いような気がする。次の目的地トルコでも私の快便は止まらなかった)そして空ばかり見ては、ガーガーと深い眠りを貪る私は少しずつ(前にも増して)頭が悪くなっていくのを感じていたのだったのだったった。






<Tips④>「手荷物検査」


多くの方がご存じだと思います。国内線ではペットボトルの持ち込みも出来ますが、国際線では液体は100ml以下の容器で1リットル以下の透明なジッパー付きの袋に入れることがルールとなっています。私が失敗したのはその「液体」の定義だったのですね。水やお茶はもちろん、味噌や漬物、それからゼリーとかプリンもこのカテゴリーに入ります。他にも化粧品(クリーム類や日焼け止めとか)、それに歯磨き粉とかシャンプーなんかも当てはまるようです。

航空会社ごとに細かい差もあるようですので、搭乗前にちゃんと調べた方がよさそうですね。


最近手荷物のルールがまた変更されていて、一番の注意点はやはりモバイルバッテリーの扱い、それと手荷物のサイズ、持ち込み数の厳格化でしょうか。


モバイルバッテリーは預け入れが禁止で必ず手荷物にいれること、また機内での充電も原則禁止となりました。だから機内でスマホの電源がやばくなったら座席に備わっているUSB端子で充電しなくちゃいけないわけですけど、海外の路線ではそんなものはない場合も多く、あってもまったく電気が通じてなかったりするんですね。


それから手荷物のサイズは今までもサイズのルール、あるにはありました。ありましたがそんなにキチンと計っているのを見たことないです。時々この箱の中に入るか?的な検査グッズもあるけれど、鬼のように畳んでグイグイ突っ込んでいる外人がいましたね。これからはその「大きさや個数、重量もしっかり見るぞ!」と言ってるわけです。

個人的にはダイジョーブか、それ?手荷物検査のとこ、すごい行列にならんか?と心配しています。





読んでいただきありがとうございました。少しずつ私の脳が機能しなくなっていく様子を描いています。次回はそろそろモルディブも終盤…本当は一週間くらいは滞在したかったのですが、異常な円安もあり3泊でチェックアウトということになりました。

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― 新着の感想 ―
明菜ちゃーーん!(ToT)笑 ちょうど、前にその歌をカラオケで友人が歌っておりましたww北ウイング。 あんバターと言えば、コメダ珈琲を思い浮かべてしまいますねwあれ、コメダって名古屋発祥なんでしたっ…
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