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第21話:「本能レベルで死を恐れない軍隊は――最強ですよね」

『それじゃ、ディルもエゼルも、侵入者を出迎える準備をしようか? やんちゃで命知らずなお方は――お出迎えをするのが、うちの基本方針ですから♪』


俺の言葉に、ディルとエゼルが頷く。

『ハイっ♪』『そうだな。盛大に迎えてやろう!』

『ちなみに、さっきも言ったけれど――侵入者さんは情報収集した後に、全員人生を退場して(DPになって)もらう予定だから、間違えても一気に全滅させちゃダメだからね? 個人的には、出来るなら女勇者を生け捕りにすることがベストだと俺は思っている』


『ん? 水島おにーさんのハーレムメンバーに加えるのか?』

『いやいや、違うから……ディルも、口を尖らせないで?』

『むー。本当ですかぁ?』

 ……光り物は出ていないけれど、ぷくっと頬を膨らませたディルの目がちょっと怖い。お兄さん、たじたじです。


『本当だって。ほら、護衛っぽい騎士の方は、多分というか、ほぼ確実に拷問しても情報を吐いてくれ無さそうでしょ? その分、異世界からやって来て間もない女勇者の方なら、精神的にも動揺しやすいだろうから会話を誘導できると思うんだ』

『……分かりました。一応、スジは通っていますね』

『いや、結構、俺は真面目に考えているんだよ?』


『知っています。でも、それとこれは違うんですよ!』

 頬っぺたがぷくっとなっているディル。

 まぁ、嫉妬してもらえるなんて可愛いものだし、光栄だと思うことにしよう。ディルみたいな美少女が、俺みたいな男を好きって言ってくれるのだから。

『あはは……ありがとう、って一応言っておくよ』

『はいっ♪ どういたしましてです(///ω)』


 とりあえず、一段落着いたところで具体的な作戦に入る。

 思考加速中だから、多少時間があるとはいえ、行動は迅速に行った方が良いだろう。想定外の出来事が起こるかもしれないと考えて。

『エゼル、これから俺とディルはダンジョンの事について話をするけれど、エゼルはそれを「攻略する側」として聞いていて欲しい。そして何か思いついたことが有ったら、すぐに教えて欲しい。俺とディルだけじゃ、見落としがあるかもしれないからね』

『了解した。エゼルも真面目に頑張るぞ(≡ω)b』

『ありがとう。それじゃ、ディル、早速だけれどダンジョンの現状と今回の作戦について確認しよう』

『ハイッ! 』


 元気なディルの声を聞いてから、俺はさっきから考えている侵入者対策を口にする。

『今回の目標は、①女勇者の生け捕り②騎士の無効化③情報収集――の3つ。なお、一番重要な情報収集をスムーズにするために、女勇者の生け捕りと騎士の無効化に、「ひと芝居」打とうと俺は考えている』

『お芝居ですか? どんなことをするんです?』

『俺達がDMやDCだと女勇者に知られたら、きっと警戒されるよね? 他にも、俺達が騎士達を女勇者の目の前で直接DPに変え(コロコロし)たら、女勇者から情報を自然に引き出すのが難しくなる。それも分かるよね?』


『はいっ。目の前で仲間がコロコロされた場合、情報を引き出すには――脅迫や拷問や自白剤が必要ですからね♪ そんな面倒で正確な情報が得られないかもしれないことは、出来るならば、私ちゃんはしたくありません』

 ディルの言葉に俺も頷く。ディルは「面倒なこと」って言ったけれど、ソレが避けられない時には、俺が率先してすることになるだろう。

 ディルやエゼルにソレを任せるようなことは、きっと俺には無理だ。


『そう、脅迫や拷問しても、正確な情報が得られるかはまた別だよね。だから、相手が自然と話してくれるように――「侵入者達をピンチな状態にして、それを俺達が助ける」芝居をしてみようと思うんだ。例えば、ダンジョンの魔物が大量に侵入者を取り囲んでいる状態で横から助けるとか、落とし穴に落ちて身動きが取れなくなったところを俺達が助けるとか』

『落とし穴は良いですね! 魔物さんだと、相手の騎士さんのレベルを見るに、死んだり大怪我してしまう子がこちらにも出るでしょうから。そして何より、私ちゃん達のダンジョンの魔物さんは、今、全員が負傷状態や蘇生待ちから回復できていませんし……』


『あ、ダンジョンの魔物って、DPを使って先に蘇生させた方が良いのかな? それとも、侵入者と中途半端に接敵したら死んでしまうから、蘇生召喚は後回しにした方が良い?』

 俺の言葉に、ディルが考えるような仕草をする。

『そうですね……蘇生召喚は、時間が経つと記憶が一部欠損するという不具合があるのですが、2~3日なら大丈夫です。1週間とか2週間とか放置した後の蘇生では、かなり記憶に影響が出てしまうみたいですけれど。――なので、無駄死にさせない(DP節約の)ために「今生きている子の回復だけ」にしておきましょう。そして、侵入者と戦わずに逃げるように指示を飛ばしておきます』


『了解。ちなみに、蘇生召喚と体力回復って、どれくらい消費DPが違ってくるの? 参考までに聞かせてくれるかな?』

『はい♪ 蘇生召喚が「通常の魔物召喚の1.5倍のDP消費」になりますね。それに対して、DPを使った体力回復は「通常の魔物召喚の0.3倍のDP消費」で済みます』

『蘇生召喚、通常の魔物召喚の1.5倍もDPが必要なんだ? それなら、死んでしまった毎に、新しい魔物を召喚しちゃいけないの? そっちの方が、ダンジョンとしては効率的だよね』


 俺の言葉に、ディルが否定も肯定もせずに、テレパシーを飛ばしてくる。

『一般的には、そういうDMやDCが多いみたいですよ? 余程思い入れのある子や、幹部級の魔物さんならば別ですが、基本的に低レベルの魔物さんは使い捨てにされるのが普通です。でも――』

 そこでテレパシーを一瞬区切ると、ディルがにこっと笑顔を浮かべた。

 俺の心を鷲づかみにする、あの壮絶な笑顔を。


「――私ちゃんは知っているのです。「死に戻りをした子」は、「死にたくないから真剣に戦うようになる」という事実を。ソレは短期的なステータスの値には見えないものですが、長期的には1.5倍のDPを払ったとしても、確実にダンジョン運営のメリットになっていくと私ちゃんは考えています』

 俺が一瞬固まっている間に、ディルが言葉を続ける。

『例えば、1回死んだ子は真面目になります。2回死んだ子は本気で訓練をするようになります。3回死んだ子は頭を使うようになります。そして――4回死んだ子は「集団を生かすために、自ら死を選ぶこと」を恐れなくなります』

 俺の耳に、クスッ♪ と小さく笑うディルの声が聞こえたような気がした。


『普段は死ぬことを嫌っているのに、本能レベルで死を恐れない軍隊は――最強ですよね?』



(次回に続く)

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