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第20話:「お出迎えをするのが、うちの基本方針ですから♪」

『侵入者は――騎士が3名と女勇者だとっ!? なんで隠蔽結界が張られたダンジョンに、こいつらが入って来れるんだ!?』


 そんなエゼルの言葉で、逆に「慌ててはいけない」と俺の頭が冷静さを取り戻した。

 いくつか確認しないといけないことはあるけれど、モニターに表示されている鑑定値を見る限り、俺達が慌てる必要は一切ない。

 だから1つずつ処理していこう。着実に、慌てずに、迅速に。


『ねぇ、ディルもエゼルも、取りあえず落ち着いてくれるかな? 今、俺達は思考が加速した状態で話が出来ている。それはつまり、侵入者への対策を考える時間が「かなり取れる」ってことだよね? 勇者も含めて、侵入者のレベルも低いみたいだし、俺達が今慌てる必要は無いよ?』

 2人を落ち着かせるために、あえて少し軽めにした俺の口調。

 でも、2人に伝えたことは事実である。


 俺達3人の場合、思考加速状態なら普通の人の1000倍以上の速さで情報をやり取りできる。

 他にも、俺のDMの知識だと思考加速中にダンジョン魔法を使って罠を設置したり、モンスターを召喚したりすることも可能みたいだから、最悪ギリギリまで作戦を考えることは可能だ。

 加えて、相手さんのレベルがそこまで高くないのも落ち着くための材料になっている。エゼルがレベル251だったのに比べて、今回の侵入者の騎士のレベルは25~35。女勇者に至っては、レベルがなんと8しかない。


 エゼルと戦ったことで経験値が入り、レベルがそれぞれ38と42にアップした俺とディル。

 一番レベルが高い男性騎士には正面からぶつかると手こずるかもしれないけれど、騎士達にはレベル250のエゼル先生をぶつければ、サクッとDPに変えてくれる。勇者の方も、鑑定の情報を見る限り特殊なスキルや称号を持っていないから、俺達3人が後れをとることは無さそうだ。


 そんな俺の思考をテレパシーで伝えると、安心したようにエゼルとディルが頷く。

『そうだな、普通の騎士ならエゼルが負けるようなことは無い(≡ω)b レベル差200オーバーを覆してくるようなヤツは、水島おにーさんくらいだしな』

『女勇者さんはレベルが特に低いですね? 私ちゃん達にとっては都合が良いですけれど、何ででしょうか?』

『ん、多分、あれは育成中の勇者だな♪』

『育成中の勇者?』


 不思議そうなディルの言葉に、エゼルがちょっと自慢げな表情を浮かべる。

『ああ。召喚したての勇者って――水島おにーさんがそうだったように――基本的にはレベル1なんだ。だから、死なないように周りを護衛で守りながら、低レベルのモンスターを狩ってレベル上げをするんだ』

 ネットゲームやWEB小説でいうところの、パワーレベリングとか促成栽培とかいうやつだ。異世界転移した勇者のお約束とも言える。


 すぐにピンと来たのだろう、ディルも納得したような顔になった。

『なるほど……狼さんが、子どもの狼ちゃんに狩りを教えるような感じですね♪』

『ああ、そうだ。でも、実際はそんな甘っちょろいもんじゃないぞ? エゼルもディルも水島おにーさんも、ダンジョン(人類)の管理者(の天敵)なんだ。狼どころか、それすら狩ってしまう熟練の狩人に狙われる側なんだよ。だから、今回の侵入者達は全滅させる必要がある。――そうだろ、水島おにーさん?』


『うん、俺の言いたいことを言ってくれてありがとう。基本的には、「隠蔽結界をどうやって攻略したのか?」という情報を収集してから、侵入者さん達には全員人生を退場してもらう予定だよ。今はまだ、俺達のダンジョンの存在を世間に知られるとマズいからね』

 そう、今はまだ引きこもって防衛力を整えたり、ダンジョンを整えたりする方が先である。ダンジョンがここにあることを隠蔽も無しに公表されてしまうと、「お客さんフィーバー」でDPに余裕が無いのに多忙な毎日を送ることになってしまう。


 高レベル天使の襲来イベントが済んだ直後のズタボロダンジョンに、低レベルとはいえ勇者が侵入するなんて――休日出勤で仕事を済ませた翌日に、上司に「今夜、残業よろしく♪」って言われるのと同じ気分だ。

 ガチで「空気読めよ?」って思うし、殺意が湧いても仕方がない(許してもらえる)と思う。


 ちなみに、今の俺の優先順位は、①ディルとエゼルの安全②俺の命③ダンジョンの運営――となっている。つまり「(まだ保護者的な立場が捨てきれないとはいえ)大切な女の子を守る覚悟」と「DMとしての覚悟」を決めた今の俺なら、他人を殺すことに忌諱感は有っても、躊躇することは一切無い。

 加えて、そもそもナイフや拳銃で戦うような直接的な殺害方法はDMとして選択しないつもりだ。情報さえ引き出せれば、あとは落とし穴や罠でサクッとコロコロさせて頂きます。

 それに――


『俺達の幸せな日常を奪いに来たのだろ? お互いに魂を掛ける価値は、十分過ぎるくらいにあると思うぞ?』


 ……って、勝手に俺の頭の中を読まないでよ、エゼルっ!?

『なんでだ? 「めっちゃ、格好良いセリフ」がテレパシーで伝わって来たから、エゼルは思わず口に出しただけだぞ?』

『いや、ほら、恥ずかしいし……』

『ぶーぶー!!』

『豚さんにならないの』


『なら、そんなこと言うなら――エゼルがこのセリフ貰うぞっ!? エゼルの決めゼリフ100選の中に採用して良いのか(≡ω)???』

『どうぞ、どうぞ。もらってあげて下さい♪』

『ふぉぅ!? マジか!! ありがとうなのだ!!』

 そう言って、嬉しそうに飛び上がると、エゼルが羽をパタパタさせてドヤ顔を作る。(イメージをテレパシーで送ってくる)


『――ふっ、(エゼル)達の幸せな日常を奪いに来たのだろ? お互いに魂を掛ける価値は、十分過ぎるくらいにあると思うぞ?――くはぁーっ(≡ω)ノシ~☆』

『何、この羞恥プレイ!!』

 エゼルはご機嫌だけれど、俺にとっては恥ずかしい当てこすり。ガチで止めて欲しい。決めゼリフ100選に採用許可を出したのは間違っていたのかなって、早速後悔した。

 何かどっと疲れた気がする。


 ……とはいえ、侵入者達を放っておく訳にもいかない。

 さて、どうやってお相手をするのが一番ベストかな? 最低限、情報だけは欲しいから……生け捕りしても、色々な意味で抵抗できなさそうな女勇者さんには生きていてもらいましょうか♪

 うん、多分、一番レベルの高い男騎士を生け捕りにしても、情報は絶対に吐いてくれないと思うし――エゼルやディルの前で、拷問とか薬物での自白とか俺は嫌だから――効率よく進めよう。


『それじゃ、ディルもエゼルも、侵入者を出迎える準備をしようか? やんちゃで命知らずなお方は――お出迎えをするのが、うちの基本方針ですから♪』



(次回に続く)

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