21話「鍋をつかめ!」
Hero21:鍋をつかめ!
・英雄部部室。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
零、トゥオゥンダ、ジキルの3人が不健康そうな表情でにらみ合う。
周囲には他の部員の屍が転がっていた。
・それは2時間ほど前。
「そろそろ溜まってきたな。」
零が部室に備えてあった食料を見る。
「そもそもどうしてそんなに買ってあるんだよ。」
「いやぁ、ここで寝泊まりする奴は自分だけじゃないと思って
確信犯的に多重に備蓄しておいたんだが意外とお前ら普通に帰宅してるし。
こっちだってたまには家に帰りたいし。」
「完全に自業自得じゃねえか。」
「うわ、これ賞味期限今日だぞ。」
「捨てるのもったいないしなぁ・・・。
そうだ!今日はみんなでここで晩飯食おうじゃないか!」
零の提案で英雄部員全員が集まった。
「食器借りてきたぞ。」「あいよー。」
由良、明代、智恵理、まほろが食器を持って来た。
「どうして!私が!薪割りを!しなくちゃ!いけないんですか!」
赤羽が薪割りをしている。
「久々に稽古をつけてやってるんじゃないか。
足もいいがたまには手も使わないとな。あ、鍋は送熱であっためろよ。」
「無茶言わないでください!」
「大変そうだなー。」「ほんとだね。」
「そこ二人サボるな。」
テーブルで紅茶を飲むルーナとキャリオストロをトゥオゥンダが注意。
1時間程度で10人分の食事の準備が整った。
「で、メニューは何なんだよ。」
「やm・・・」「はいお開きにしようねー。」
「冗談だ。もつ鍋だ。まあ、多少合わなさそうなモノも
入ってるが食べられるモノではあるから気にするな。」
それから零の合図で食事が始まった。
零、トゥオゥンダ、ジキル、智恵理、ルーナがビールを飲む。
未成年組は卵を割ってそれを配る。
そして10人全員で箸をつまみ食材を口の中に入れる。
直後。
「!?」
口の中で根源的破滅招来体反応かバイオ粒子かが大量発生した。
SAN値は著しく削り落とされ心のカラーなタイマーは激しく点滅する。
「ひゃ、100%モード起動!」「お口リセット!」
赤羽とまほろが一瞬で浄化。
「な、食ばめ!」
ルーナが口の中に微生物を発生させて一瞬で消化。
しかし対処できなかった智恵理、キャリオストロ、由良、明代は
その衝撃に胸を貫かれ石となった挙句海の底深くに沈んでいった。
「うぐっ!!」「ごべひゃああっ!!」「ピプラスナマァァァァッ!!」
男3人は気合で踏みとどまりビールで一気に押し流す。
「ぜえ・・・ぜえ・・・・な、なんだ・・・!?
すべて賞味期限ギリギリとは言えきっちり加熱した食物だと言うのに
どうしてこんな破壊力を生むんだ!?」
「こ、こう考えよう・・・。食べ物は正常だった、他がいけなかったんだと。」
「他って何だよ・・・?調味料か?」
「・・・ルーナ、」「無理だ。先ほどので今使役できる下僕は
すべて南無阿弥陀仏してしまった!と言うか私も限界・・・」
「馬鹿な、あのルーナが・・・あのルーナが一口でがめおべあだと!?」
「・・・どうする・・・?」「まだまほろと赤羽がいるが流石に・・・」
「と言うか既にいないし。あの野郎幼女さらって逃げやがったな。」
という訳で残ったのはこの3人だけ。
「ジキル、否定を。」「鍋に向かって銃撃つのかよ。」
そう言いながらも銃を出して鍋に向けて引き金を引・・・・
「待て待てこんな至近距離で金属に向かって
撃ったら跳弾するんじゃないのか!?」
「・・・かもな。」「・・・なら、どうする・・・?」
「と見せかけて咀嚼しろやオラァァァァァァァッ!!!」
突如零が鍋ごと掴んでトゥオゥンダの口の中に流し込んだ。
「ぎゃああああああああああ・・・・・・ってあれ?何ともない。」
「へ?じゃ、箸か卵か?」
「そう言や零、」「あん?」
「突如よくもやってくれおったなオンドゥルエエエガアアァァァッ!!!」
トゥオゥンダが一気に10人分の皿を持って零の口に卵をぶち込んだ。
「アンギャアアアアアアアアアギギャアアアアアアアアアア・・・・ってやっぱりなんともない。」
「・・・箸が原因なのか?それとも食器?」
「分からん・・・。ともあれ食事は完了したからいいんじゃないのか・・・?」
「・・・お前、こんな悲劇が起きたというのに
その原因を把握すらしないままこれからもここで飯を食うつもりか?」
「ぬ・・・!そう言えばそうだったな・・・・!」
男3人が箸を持って卓を囲む。
恐る恐る箸を舐める。しかしやはり無害。
「・・・おい明代。起きろ明代。」
「む、むにゃむにゃ・・・もう食べられないよぉ~・・・意外とマジで。」
「成分表!お前が口にした奴の成分表を示せ!
胃袋に入れた物体の正確な情報を、ヨキア星人のお前なら出せるだろう!?」
「・・・むにゅむにゅ・・・思い出したくない・・・。」
「・・・トゥオゥンダ。肯定を。こいつの胃袋及び食道における異物の味覚の永遠の肯定を・・・」
「待って待って!ホントにあたし死んじゃうよ~!ヨキア星人絶滅しちゃうよ~!!」
ガバッと起き上がって明代がブルーアイズよりも青い顔をしながら
冷静に成分の解析を始めた。
「・・・あ、これかも。」「分かったのか?」
「うん。この卵、シンクロエッグって言って
みんなで一緒に食べると感覚が累乗しながら共有されるんだって。
でも、この中で誰か一人が卵アレルギーだったみたいで・・・。」
「まさか、」
「うん・・・。そうとは知らずにみんなで一気に食べちゃったから、
数十倍にまで膨れ上がったアレルギー反応がみんなを一気に・・・、
あ、あたしももう限界、ちょっと乙女じゃないことしてくる・・・」
部室を出てトイレの方へ向かう明代を
最敬礼をしながら見送ることを辞せない男達であった。
まあ、最敬礼=深お辞儀だから誰もその背中を見ていなかったのだが。
なお後日の英雄部の活動は赤羽の通う学校の教室で行われた。
「・・・ごめんなさい、だから許してください。」
泣きながら謝る赤羽の前で零はモニターを使って赤羽の家での寝姿を上映していた。




