15話「踊れ、愚か者ども」
Hero15:踊れ、愚か者ども
・伊王野家。
英雄部一行が全員揃ってそこへやって来た。
「・・・またお前か。」
「よう、人形師。早速で悪いが赤羽そっくりの人形作ってくれ。」
「・・・甲斐さん?」
零の脇腹に膝蹴り。
「・・・ここは漫才をする場所じゃないんだが。」
「ま、まあなんだ。3次元人に会わせろよ。」
「・・・お前達まさかとは思うが戦うつもりか?」
「場合によってはな。」
「・・・いいだろう。」
塔矢に案内されて9人が中に入る。
古びた屋敷。
レトロな暖炉。
メアが紅茶を人数分用意する台所。
ここにはいないとある少女と3人一緒に映った写真。
そして客間。
「・・・なるほど。合流していたか。」
そこに歪んだ空間とその奥に潜む3次元人がいた。
「よう、火事場泥棒。」
「中々嫌な挨拶ではないか。」
「まあ、どっちに転んでもあまり長い付き合いにはならないだろうしな。」
「では、我々と敵対するというのだな?」
「それはコイツ次第だな。」
すっと、零が自分とトゥオゥンダの位置を入れ替えた。
「うわ、いつの間に!?」
「ほらたったとするんだな。
お前次第でこの街は三次元化するか火の海になるかが決まる。」
「いきなり重責任を押し付けられてるし・・・。」
とは言え本当に零は話をするつもりはないらしく
奥に控えるメアにセクハラをしては塔矢に殴り倒されている。
「・・・1つ聞きたいんだけど風の旅人は本当に全滅したのか?」
「ああ。少なくともこの星に来た彼らはこの星のこの街で全滅している。
それは我々がここに来る前に確認が取れている。」
「・・・・そうか。」
「我々はその真相を調べるために来たのだ。
そのためにはこの街を三次元化する必要がある。
我々は何もこの星を侵略しようとしているわけではないのだよ。」
「・・・・でも、あんたの仲間は侵略しようとしている。
そしてあんたはそれに手出しこそしないが状況作りを手伝っている。」
「・・・・・何故そう思うのかな?」
「あんたが言うにはタカ派の宇宙人は手出しできないんだろう?
それなのに二人も宇宙人が侵入していた。
今日になって積極的に行動を起こしてきた。
それが偶然だとは思えない。
もし本当にあんたの不備で侵入させてしまったというのなら
連絡くらいはくれてもいいはずだ。
その点であんたはまだ信じきれない。」
「・・・まあ100点ではないし正解でもないが
間違っているわけでもない。」
「なら・・・・!」
「我々が宇宙連合からこの町の調査を承ったのは真実だ。
が、タカ派を抑えているのは半ば是ではない。
奴らがこの星に来ればこの星は滅ぶだろう。
だからそれより前に我々がこの星を三次元化して
奴らの侵略の手を防ごうというのだ。
その猶予が24時間後というわけなのだよ。」
「先に侵略することで他の侵略者を牽制するというのか・・・!?」
「その通りだ。だが私にも誤算があった。
少し前までのこの星ならば急がずとも可能であっただろう。
風の旅人もその命を散らさずに済んだかも知れない。
しかしつい最近目覚めてしまったのだよ。
この星の王が。それに宇宙最強にもなれるヨキア星人まで来ていた。
この両者が相手では我々では勝ち目がない。
だから平和的な手段で侵略と防衛を両立させようとしたのだ。」
「・・・地球の王・・・。前にゼラギロが言っていた。
全ての微生物を操る存在・・・か。」
「そうだ。我々にもその正体は不明のままだった。
しかしここへ来て分かったよ。
それにタカ派の彼らがどうしてこの星を狙いたがるのか・・・。
その理由も分かった。
・・・なるほど。君達はとても面白い。」
すると、急に地震のようなものが発生した。
「地震・・・!?」
「違うな。こいつが空間を揺るがしているんだろう。」
「ってことはまさか・・・」
「そう!今ここでこの街を三次元化しようじゃないか!
この街くらいなら10分もすれば十分三次元化が可能だ!
さあ!君達の街を救うため、君達の可能性を示すために
我々を止めてみたまえ!!」
三次元人が笑い、空間の歪みがどんどん深くなっていく。
「くっ・・・!」
トゥオゥンダが近付こうとするが、
確かに前に進んでいるのに全く距離が縮まない。
「・・・ジキル、これを。」
「これはデザートイーグル・・・?」
「この銃は自分の信じないモノを打ち消せる。
自分が本気で信じたくない存在ならこれで撃てば消せるんだ。
これならあいつにも銃弾を打ち込めるだろう。
そしてトゥオゥンダにはこれだ。」
「これは・・・カードデッキ?」
「そう。それは宇宙人の科学で作られたカードだ。
それを使えば宇宙科学で可能ならば魔法のような事象も起こせる。
ただし使えば使うほどお前の細胞は人間のモノから変わっていく。
1日1枚程度なら問題ないだろうがな。
さあお前ら。手札は渡した。
そいつの言葉じゃないが、
この街を救い宇宙に己が可能性を示したくば
お前達自身の侵略の采配を奏でてみるがいい。」
「俺達自身の、」
「可能性・・・。」
トゥオゥンダとジキルが顔を見合わせ、そして構えた。