第3話 ソロ探索のはずが、最強の乱入者が現れました(ラスト)
ロッシュは懐から取り出した回復ポーションを一本飲み干すと、まだ少し痛む腰を摩りながらアストラゼノスの前に立った。
「な、なんで?! 『来ちゃった』って……誰かに見つかったらどうするんだよ……!」
「大丈夫。ここって遺跡の隠し部屋なんでしょ? このスケルトン以外誰もいないよ」
「ま、まあ、それはそうだけど……、でも……ありがと」
助けられたのは紛れもない事実だ。ロッシュが気恥ずかしそうに視線を逸らして礼を言うと、アストラゼノスは待ってましたとばかりに胸を張った。
「えへへ。惚れ直した?」
「なんで惚れている前提なんだよっ!」
間髪いれずにツッコミを叩き込むロッシュ。
ふと、横で未だにカタカタと震えながら床に額を擦り付けているキングスケルトンへ視線を落とした。
「……で、こいつは君の部下なの?」
「んー、たぶんオーバーロードが生み出した兵隊だと思うよ。命を奪うネクロアと違って、彼は死体に命を吹き込むからね」
「ああ……オーバーロードって、あの爺さんか……」
――オーバーロード。
死者の王にして、アストラゼノスの幼少期からの教育係を務める魔王軍の幹部。顔はシワシワで眼球は無く、漆黒のローブに身を包んだ、この世のあらゆるアンデッドの生みの親である。
「たぶん今ごろ、彼は私の分身に話しかけている頃でしょうね(笑)」
悪戯っぽくクスリと笑うアストラゼノス。
――同じ頃、魔王城・玉座の間。
「魔王様。今日はやけに素直に玉座に鎮座されているのですね。安心しましたぞ」
深いフードの奥からシワシワの顔を覗かせ、オーバーロードは心底安堵したように息をついていた。玉座には、いつになくおとなしく腰掛けたアストラゼノス(の分身)が佇んでいる。
「うむ、くるしゅうない」
「へ?」
「うむ、くるしゅうない」
少し噛み合わない返答にオーバーロードは首をかしげつつも、報告を続けた。
「で、では……氷山でスノーゴーレムが人間に狩られている件ですが……」
「うむ、くるしゅうない」
「……魔王様?」
「うむ、くるしゅうない」
「……!!」
一ミリも動作を変えず、まったく同じ返答を壊れた機械のように繰り返す主。
オーバーロードは即座に察し、その場に響き渡る大音声で叫んだ。
「……あのおてんば姫ぇぇぇぇ……!! 誰か! 魔王様はどこじゃあ!! 探せぇ~!!」
魔王城に二度目の大パニックが巻き起こるのを、遥か遠くの地下遺跡で知る者は誰一人としていなかった。




