第3話 ソロ探索のはずが、最強の乱入者が現れました(その2)
ロッシュはすぐさま素早く詠唱し、手から聖なる光の矢を放った。
本来、これはアンデッドの特効属性を持つ下級光魔法であり、まともにヒットすれば槍ほどの大きさの光の槍が敵を貫くはずの魔法だった。だが――ロッシュが必死に放ったそれは、なぜか小さなナイフほどの頼りない光の刃がヒョロヒョロと飛んでいくという、お世辞にも強力とは言えない代物だった。
「――グオォォォォォンッ!!!」
キングスケルトンが放った一声の咆哮。それだけで発生した凄まじい衝撃波により、ロッシュの放った「ナイフサイズ」の光の矢は、到達する前にあっけなく粉砕されて消え去ってしまった。
「嘘だろ、俺のとっておきの攻撃魔法が声だけで……っ!?」
自分の魔法の不甲斐なさと敵の規格外さに戦慄するロッシュの視界で、キングスケルトンが巨大な大剣を豪快に振りかぶる。空気を裂く音とともに、容赦のない横一文字の薙ぎ払いがロッシュを襲った。
「くそっ!」
回避は不可能と判断したロッシュは、剣で必死に防御の姿勢を取った。
――ガキィィィンッ!
金属同士がぶつかり合う激しい音が響いた直後、ロッシュの愛用していた剣は耐えきれずに木っ端微塵に砕け散った。凄まじい衝撃が全身を突き抜け、ロッシュの身体はそのまま吹き飛ばされて石壁に強く打ちつけられる。
「カハッ……あぐ……っ」
手に残ったのは柄の部分だけ。全身に激痛が走り、立ち上がることすらできない。
絶体絶命。
目の前では、キングスケルトンが冷酷な眼孔を光らせ、止めを刺すべく巨大な大剣を両手で天高く振りかざしていた。
(……ここまでか……!)
死を覚悟し、ぎゅっと目を閉じたロッシュ。
豪風を巻き起こしながら、巨大な鉄の塊がロッシュの頭上へと振り下ろされる――
――キンッ。
響いたのは、あまりにも静かで、軽い金属音だった。
「……え?」
痛みが来ないことに疑問を抱き、ロッシュがおそるおそる目を開ける。
視界に入ってきたのは、こちらへ全身を向け、可憐な笑みを浮かべるアストラゼノスの姿だった。
背後にいるキングスケルトンに視線すら向けず、すっと高く上げた右手――その人差し指と中指の『たった二本の指』が、頭上から振り下ろされた巨大な刃を軽々と受け止めていたのだ。
衝撃波すら発生させず、完全に死神の如き一撃を停止させた美女は、ロッシュに向かって首をちょこんと傾げてみせた。
「えへっ。来ちゃった♡」
「ゼ、ゼノス……!?」
驚愕に目を見開くロッシュの横で、異変に気づいたのはキングスケルトンだった。
背越しに伝わる、生物として次元の違う圧倒的な圧迫感。そして、目の前の女性から漏れ出る全魔物の頂点たる気配。
カタカタカタカタ……ッ!
キングスケルトンは恐怖に全身の骨を震わせると、握っていた大剣から即座に手を離した。そして、まるで平伏するように床へとひざづき、頭を擦り付けたのだった。




