第5話 遠方派遣と最悪のエンカウント(その4)
「ちーっちゃい火の玉だなぁ。アーシ(私)ともっと遊ぶぅ?」
巨大な斧を肩に担いだまま、少女は猫撫で声のような、間延びした声でくすくすと笑った。
圧倒的な威圧感を前に、男戦士は武者震いどころではない情けないほど膝をガタガタと震わせ、一歩も動くことができない。
「なんで……なんで……なんで……」
女魔法使いに至っては、壊れた人形のように同じ言葉を狂ったように繰り返し、その場にぺたんと腰を抜かしていた。
「んん~? 遊ばないのぉ?」
退屈そうに首をかしげる魔獣王。
そんな絶体絶命の緊張感の中、ゆっくりと立ち上がったロッシュが口を開いた。
「……レガリアか?」
「おんやぁ? なんでアーシの名前をぉ?」
少女は不意を突かれたように目を丸くし、ロッシュの顔をじっと見つめた。そして鼻をクンクンと鳴らすと――パッと表情を輝かせた。
「……あっ!」
「久しぶりだな、レガリア」
「この匂いはロッシュ! 久しぶりじゃあーん! 背、高くなったなぁ、ロッシュぅ」
「レガリアは……なんというか……下半身が巨大になったな」
「エッチぃ、スケベぇ、ヘンターイ(笑) あははは!」
ケラケラと無邪気に笑い転げる魔獣王。
先ほどまでの絶望的な緊張感はどこへやら、あまりにも親しげに会話を交わす二人の異様な光景に、男戦士と女魔法使いは恐怖を忘れて呆然と固まっていた。
「なにしてるのぉ? ここで」
「こいつは君んとこの魔獣か? 彼が男の子を浚ったんで取り返しにきたんだよ」
ロッシュが指差すと、レガリアは「そっかぁ」と納得したように頷いた。
「ロッシュの知り合いなら仕方ないねぇ」
レガリアが一声唸ると、魔獣は素直に男の子の首根っこを優しく咥え直し、ロッシュの足元へとそっと横たえた。
「ありがと。でもさ、なんであんなバラバラな種類の魔獣を連れてるんだ?」
「ん~……、ここから北の地でユウシャって人が魔獣を狩っててねぇ。この子達はそんな中で行き場を失って、飢餓に陥った子達なんだよぉ」
「それをレガリアが面倒見て撃退を探してるってわけか」
「そうだよぉ」
ここで、未だ地面にへたり込んだままの男戦士が、引きつった声で恐る恐る口を開いた。
「……で、では貴女は、孤児を引き取って……?」
「孤児(笑) うまい事言うねぇ、お兄さん」
ニッと牙を剥き出しにして邪悪かつ楽しそうに笑ってみせる魔獣王。
その凶暴なスマイルに、女魔法使いは「ヒッ……!」と短い悲鳴を上げて再び縮こまった。




