表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
希少属性(レアアトリビュート) ~特異属性で最強か最弱か分からない私と、正体を隠す彼の、嘘から始まる魔法恋愛譚~  作者: 鍼野ひびき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/22

第十八話「魔力制御」


 翌日の朝。


 教室に入ると、燈火くんが既に席についていた。


 黒縁眼鏡をかけて、机に突っ伏している。


 寝ているフリ。


 私は、深呼吸をした。


 恥ずかしい。


 でも、挨拶しないわけにはいかない。


 「おはよう」


 声をかけた。


 その瞬間――。


 昨日のシャワー室のことを思い出してしまった。


 ドアを開けた先に、燈火くんが立っていて。


 私は、裸で。


 顔が、熱くなっていく。


 赤くなっているのが、自分でも分かった。


 燈火くんが顔を上げた。


 眼鏡の位置を直しながら、自然に答えてくれた。


 「おはよう」


 普通。


 いつもと変わらない、普通の挨拶。


 それが、逆に心臓をドキドキさせた。


 「あららぁ?」


 明るい声が聞こえた。


 ひなただった。


 悪戯っぽく笑いながら、私を見ている。


 「美月ったら、顔を赤らめてどうしたの?」


 「な、何でもない」


 私は首を振って否定した。


 でも、ひなたの表情は――。


 恋に恋する美月を見つけてしまった、という興味津々の表情を浮かべていた。


 「昨日、俺が実技の時間によろけた美月を受け止めたから、意識したんだろ」


 燈火くんが、クールに言った。


 でも――。


 その口元が、笑っている。


 私を見て、笑っている。


 「そ、そうそう。そうなの」


 ひなたにバレないように、燈火くんの言葉に合わせた。


 ひなたは、面白そうなものを見つけたという表情のまま、席へと戻っていった。


 助かった――。


 でも、燈火くんに借りを作ってしまった気がした。


 ホームルームが終わり、授業が始まった。


 一時間目は英語。


 二時間目は国語。


 三時間目は日本史。


 私は真面目に、授業を受けていた。


 ノートを取り、教科書に線を引き、先生の話を聞く。


 時々、隣の席の燈火くんを見やった。


 眠そうにしていたり、机に突っ伏していたり。


 とても真面目に授業を受けているようには見えない。


 でも――。


 その目は、しっかりと黒板と教科書を捉えていた。


 私は、それを見逃さなかった。


 陰キャを演じている燈火くん。


 でも、本当は誰よりも優秀で、誰よりも強い。


 微笑ましく思った。


 そして、少しだけ誇らしく思った。


 私だけが知っている、本当の燈火くん。


 放課後。


 燈火くんと共に、SAMAへと向かった。


 夕暮れの街を、並んで歩く。


 「あの、燈火くん?」


 私は、隣に並んで歩く燈火くんを見上げて尋ねた。


 「魔法を発現した後、魔力を操るのって、どんなイメージなの?」


 燈火くんは正面を見据えたまま、少し考えている様子だった。


 どう答えてやるべきか、思案しているのだろう。


 「まず……」


 燈火くんが口を開いた。


 「魔法を発現したら、その魔力の流れを自分の制御下に置くように、魔力が魔法として霧散してしまわないように強く引き留めておく」


 難しい。


 でも、真剣に聞いた。


 「その魔力に指向性を持たせて維持する。さらに、形や動きをイメージしていく」


 私は眉間にしわを寄せた。


 難しい顔をしている自分が、分かった。


 燈火くんが、さらに分かりやすく説明してくれた。


 「いいか、美月」


 私の方を見た。


 「魔法というのは、自分の中にある魔力を現象として発現した結果なんだ。その魔力の出力次第で、例えば風が掌から噴き出す。この時点で魔法は発現しているというのは分かるよな?」


 「うん。それは分かる」


 私は頷いた。


 「美月なら、掌から風を発現させて、魔力の出力を上げれば身体が飛ぶほどの風が起きる。だけど、これは魔法を発現させてるだけに過ぎない」


 燈火くんが真剣に説明を続けた。


 「ここまでなら、同級生の誰にでもできるんだ。美月はそれに加えて、魔力を制御し、形や動きを加えて操るポテンシャルがあるんだ」


 「魔力を制御して、形や動きをイメージ……」


 口の中で呟いた。


 「そうだな、例えば……」


 燈火くんが両腕を広げた。


 「例えばだぞ、美月は風属性に親和性が高いから、風の魔法を発現させるときに、魔力を周囲に拡散させて、下からグワァーッと持ち上げるイメージをしたとする」


 両腕で、下から上へと空気を持ち上げるような動作をして見せる。


 「すると、風が下から上へ向かって持ち上がる魔法が発現するはずなんだ」


 「グワァーッて……」


 私も、同じように両腕を広げた。


 下から、掌で空気を掬い上げるような動作。


 イメージする。


 風が、下から――。


 次の瞬間。


 地面スレスレの辺りから、風の魔法が発現し始めた。


 ブワッ!


 空気が、持ち上がっていく。


 私の両腕が、空気を掬い上げる動作から、空へ向けて掌を掲げた。


 その瞬間――。


 発現していた風魔法が、上空へ向かって指向性を持って巻き上がっていった。


 「わっ!」


 思わず、吹き上がった風に目を細めた。


 すごい。


 制御できた。


 形と動きを――。


 隣の燈火くんの目が、限界まで見開かれていた。


 顔が、一気に朱に染まっていく。


 燈火くんの視線の先――。


 吹き上がる風魔法によって、バサッと大きく捲り上げられた私のスカート。


 そして、露わになる白いショーツと白い脚。


 「きゃっ!」


 悲鳴を上げた。


 慌てて、捲れ上がったスカートを抑える。


 顔が、一気に真っ赤になった。


 「と……燈火くん?」


 恥ずかしさで、顔から火が出るほど熱い。


 「み……見た?」


 燈火くんが、スッと目を逸らした。


 「い、いや……、チラッとだけだから……」


 歯切れ悪く答えた。


 私は、恥ずかしさのあまり両掌で顔を覆った。


 イヤイヤと、顔を左右に振る。


 ポニーテールが、バサバサと左右に揺れる。


 「もう、お嫁にいけない……」


 消え入りそうな声で言った。


 「俺が、もらう……」


 小さな声が聞こえた気がした。


 でも、確信が持てなかった。


 一頻り恥ずかしがった後、ようやく落ち着きを取り戻した。


 そして――。


 キッと、燈火くんのことを睨み上げた。


 「確信犯でしょ!!」


 燈火くんが、鼻白んだ。


 「いや……そんなことは……」


 いつものクールさが消えて、視線を泳がせている。


 その様子を見て――。


 クスクスと、笑い出した。


 「ワザとじゃないのは、知ってるよ」


 まるで悪戯が成功したかのような、無邪気な笑顔で笑った。


 燈火くんが、ホッとしたような顔をした。


 「美月……」


 「でも、見られちゃったのは事実だから」


 少し拗ねたように言った。


 「ごめん……」


 燈火くんが、素直に謝った。


 「許してあげる」


 私は笑顔で言った。


 「代わりに、今日の訓練、いっぱい教えてね」


 「ああ」


 燈火くんが頷いた。


 私たちは、また歩き出した。


 少し気まずいけど、でも温かい空気。


 嬉し恥ずかしい、不思議な気持ち。


 SAMAに到着し、更衣室へと向かった。


 紺色のセーラー服を脱ぎ、ブラウスも脱いでいく。


 白の下着姿になった。


 ふと、視線をショーツに落とした。


 「見られちゃった……」


 独り言ちた。


 顔が、また熱くなる。


 でも――。


 嫌じゃなかった。


 燈火くんになら、見られても。


 いや、何を考えてるの、私。


 頭を振って、考えを追い出した。


 ロッカーから訓練着を取り出す。


 濃紺のボディスーツに袖を通し、ファスナーを上げていく。


 鏡の前で、自分を確認する。


 今日は、どんな訓練になるんだろう。


 期待に、胸が膨らんだ。


 土の盾。


 私の固有魔法になるかもしれない。


 そして――。


 魔力の制御。


 形と動きを加える。


 さっき、できた。


 風を、下から上へ持ち上げた。


 もっと、練習したい。


 もっと、上手になりたい。


 燈火くんみたいに。


 深呼吸をして、更衣室を出た。


 廊下には、燈火くんが待っていてくれた。


 黒を基調としたボディスーツに、青いラインが走っている。


 「行こう」


 「うん」


 並んで、訓練室へと向かった。


 扉を開けると――。


 柳瀬さんと藤崎さんが、二人とも待っていてくれた。


 柳瀬さんは白の訓練着。


 藤崎さんは深い紫色の訓練着。


 「いらっしゃい、二人とも」


 柳瀬さんが微笑んだ。


 「昨日の報告、藤崎から聞きました」


 「はい……」


 私は、少し恥ずかしそうに頷いた。


 「土の盾、面白い発想ですね」


 柳瀬さんが嬉しそうに言った。


 「今日は、それを徹底的に訓練しましょう」


 「はい!」


 元気よく答えた。


 「ただし」


 藤崎さんが、少し厳しい顔で言った。


 「制御を誤れば、大変なことになる。慎重に、でも大胆に」


 「分かりました」


 私は真剣に頷いた。


 訓練が、始まる。


 私の固有魔法を完成させるための、訓練が。


 胸が高鳴った。


 今日も、頑張ろう。


 燈火くんと一緒に。


 柳瀬さんと藤崎さんに教わりながら。


 強くなるために。


 大切な人を守れるように。


 そして――。


 燈火くんの隣で、戦えるように。


お読みくださり有難うございます!!

この作品を気に入ってもらえましたら、下にある☆☆☆☆☆やブックマーク、スタンプで応援いただけると大変励みになります!!

読者の皆様からの応援が次へのモチベーションになります!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ