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第十一話 世界の声

地下空間の粘菌ねんきんが、三匹のサンドワームにへばりつく。


「ついて来い! ミミズども!」


暁光ぎょうこうの剣が、再び白光を宿す。


剣をかかげる。


「今度は上だ!!」


粘菌をまとったサンドワームの動きは、あきらかに遅くなったが巨大な身体をくねらせ這い上がる。


「そうだ! アメーバを全部連れて来い!!」


地面が揺れる。

瓦礫がれきが吹き飛ぶ。


「抜ける!」


地上。


ーードガアアアア!!


背後の地面を突き破り、三匹のサンドワームが飛び出す。


「このまま! 空へ!」


剣の白光がさらに輝きを増す。


サンドワームがそれに続き、ギチギチと歯を慣らしながら天に昇る。


俺はちらりと後ろを確認する。


「ミミズから煙が! アメーバが日の光で溶けている!」


「しかし! やはり! 足りない!」


自然光はアメーバを消滅させるには足りない。

アメーバからは、魔人が今も湧き出している。


「うぉおおお!」


「準備は出来てるだろうな!」


「ライラーーーーーーーーー!」


空の向こう。


太陽を背に、黄金に輝く戦士の姿。


『ああ! しっかり聞こえてたよ!』


『私の“太陽の力”! たっぷり溜まってるぜ!!』


ついに。


俺は、太陽を背負うライラの隣へ並んだ。


反転。


白光が弾ける。


暁光の剣の輝きが、黄金へ染まった。


「ライラ!」


「ショータ殿! やるぞ!」


「《日輪にちりん》!」


二人の声が重なる。


剣と斧。


黄金の巨大な光。まるで、太陽そのもの。


迫る三匹の巨大サンドワームを、

黄金の光が丸ごと呑み込む。


粘菌がちりとなり、霧散していく。


「ヌオオオーーーーーーー!」

ライラの咆哮ほうこうが天に響く。


「ライラぁ! 弱ってるが!ミミズはまだ死なない!」


「喰われる前に! ぶち抜く!!」


サンドワームの身体に張り付いた粘菌は光の中で消えた。


「裂けろ!! 《日輪・雷撃斧らいげきふ》!!」


ライラの黄金の斧が、雷を纏いサンドワームの口を二つに割る。


「《日輪斬にちりんざん》!!」

暁光の剣の光が強さを増す。


「二枚に下ろしてやる!」


「ダアアーーーーーーーーー!」

俺とライラの雄叫びが響く。


ーーーズバアアア!!


サンドワームが二匹。

真っ二つに裂ける。


「ライラ! 気をつけろ! もう一匹…!」


ーーバクン


「……! しまった! 喰われた!」

「ライラーーーーー!」


『《天蛇ノてんじゃのいかづち》ッ!』


天を裂く雷が走り、黄金の大蛇だいじゃが降り注ぐ。


「レキル!」


『ライラぁ! 雷の力だ!耐えられるよなあ!

私の蛇が! ミミズを喰らってやる!』


轟音と閃光――

サンドワームの巨体が黒く焦げる。


「ギィチチチーーーーー!」


断末魔だんまつまの叫びが大気を揺らす。


光が消え、静寂が降りる。


『はぁ……はぁ……ミミズごときに…蛇は負けられんよな……』


レキルは力尽き、空から崩れ落ちる。


『流石は、おぼろかしらだ。

ショータ殿! ライラは頼むぜ!』


ヒキガがレキルを受け止める。


「ライラ…!」

空に放り出されたライラを受け止める。


「……ショータ殿。私…生きてる…」


ライラが目を開ける。


「ああ! 生きてる! よくやった!」

空でライラを抱きしめる。


「マルダ! 聞こえるか!」


「魔人の源は全て消した!」


『ショータさん! よく…!』

『成し遂げてくれました!』


マルダの声。


『ショータ! ライラ! よくやった!』

グラムディル。


『残りの魔人とミミズはワシら天空艦隊に任せておけい!』


ライラは腕の中で、気を失っている。

サンドワームの酸にかなりやられている。


「メーガン! メサイアにライラを運ぶ!」


『了解です! 右舷うげんハッチ! 開放します!』


『医療班! ライラさんとレキルさんを収容します!準備を!』

セリウスの指示が飛ぶ。


メサイアの右舷ハッチ。

扉のランプが赤から緑に変わる。


一直線に飛び、体をじ込んだ。


――バフン!


柔らかな衝撃。


見えない壁に包み込まれるように止められた。


耳を裂く警告音が鳴り響いている。


――ガコン!


閉鎖。


音が止まった。


「ショータ! よく戻ってきました!」


エルフィリアが駆け寄り、叫ぶ。


セリウスとリーネの指示で、ライラとレキルが運ばれていく。


「ショータさん、すみません…」


マルダが頭を下げる。


「魔人兵の源が、サンドワームを凌駕りょうがするとは…」


「マルダ…。敵は俺たちの想像を常に超えてくるが…」

「グラムディルで“太陽の力”を得たのも、未来に繋がる道の一つだったようだな」


「私にも、そこまでの未来は見えていませんでした…」


マルダが一歩近づく。


「ショータさん…」


「神が来ます」


「ああ…。俺も、感じてるよ…」


「奴のおぞましい気配を」


突如。

メサイアに甲高かんだかい警告音が鳴り響く。


『メサイア前方! 新たな敵が出現!』


『“真理の神”です!』


『メサイア! 緊急回避します!』


メサイアが急激に傾く。


「ぐうっ! 何が起こっている⁈」

通路の手すりをつかむ。


「きゃあ!」

「なんだ!あれは?」


医療班や、一般兵の悲鳴が響く。


窓の外から黄金の光が差し込む。


『メサイア! 気をつけろ! 掴まるぞ!』

グラムディルの声。


『メサイア! 全速で逃げろーーー!』

ドウエンの叫び。


ーーガシャア!


激しい衝撃と轟音。


メサイアが上下左右に揺れる。


艦内に響く悲鳴。


『駄目です! 振り切れなかった!』

メーガンの声。


揺れが収まる。


皆が一斉に近くの窓に駆け寄る。


俺は目の前の小さな窓を覗いた。


「なんだ、こいつは…⁈」


目の前に見えたのは。


青く巨大な目。


「この目は…! リアナ!」


『メサイア! 皆は大丈夫か!』


グラムディルだ。


『こいつ! とんでもないデカさだ!』

『マルダよ!どうすりゃいいんだ!こんなバケモンよお!』


「ショータさん…。メサイアが神に捕まえられました…」


マルダは震えている。


「そうみたいだな…」


「リアナの身体を好き勝手に使いやがって…」


「ショータさん……!」


マルダが何かを言っている。


だが、もう耳に入らなかった。


俺は、怒りで震えが止まらなかった。


銀灰色の髪が逆立ち、全身から黄金の光がほとばしる。


“そこか…、勇者とやらは…”


神の声。


“懐かしい…。これはシバに与えた“真理の力”か…”


リアナの声。


いや、違う。

冷たく無機質な、ただの音の様。


“さあ…待ちくたびれた私を…楽しませてくれ”


空気が震える。


空も海も大地も、その声に共鳴していた。


“勇者、ショータよ…”


神の声は、世界に響いた。


天からなのか、地からなのか。


それは、この世界そのものの声だった。

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