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第二十三話 グレる

 厨房で後片付けを終わらせると、明日の仕込みの準備をどうするか、臨時休業するか。と、腕を組み貧乏揺すりをして考えあぐねているところへ、バタンッと車のエンジン音と共にドアを開閉する音が庭先から聞こえるや否や、道人(みちと)は玄関から飛び出した。


「センセー!」


「あぁ、鳴瀬(なるせ)。心配した? 頭ハゲた?」


 車から降りて来たのは、先程の電話対応とは違っていつものチャラい態度の工藤だった。それに内心、ホッとするとスルーして「(あゆむ)っ」と、助手席から降りた歩に、まるで親子の再開──をしようとして、工藤に襟元を掴まれ止められてしまう。


「なんすんだよ!」


「ハイハイ、落ち着こうねー鳴瀬くん。歩ちゃん、中入って早く休みなさい」


 歩は工藤に一礼すると、思いのほか、しっかりとした足取りで家の玄関へと入って行った。


「一体、なんなんだ? 風邪? インフル? なぁ!」


 道人は詳しい状況説明を求めて工藤に詰め寄る。


「校内でフラついてしょんぼり歩いてるところにバッタリ偶然に会ってな。保健室連れてったけど、熱やくしゃみもなく、微熱があるくらいで特に風邪ってワケじゃないみたいだ。少し、疲れがたまってるんじゃないかって、保健の先生が」


「疲れ?」


「今、おばあちゃん、入院してんだって? 大変みたいだな。まぁ、普段から家事と勉学の両立で忙しいみたいだしな。そりゃあ、誰だって心労で倒れる」


「……そっか……」


 道人は力なく陰りを落とした。歩に無理をさせているのは十分承知だった。ここまでさせてしまった事を心苦しく思う。


「あと……」


「なに?」


「おまえ、知ってんの? 歩ちゃんのこと」


「なにが? 歩が何だよ?」


 歩のことなら家族である道人がよく知っている。もったいぶった口ぶりの工藤に少し苛立を覚えながら答えを急かす。


「歩ちゃん、中退するとか言ってるらしいぞ」


「は?」


 その家族である道人は寝耳に水だった。


「こないだ進路指導で、いきなりうどん屋継ぐから進学しないって言ったらしくてな。説得しようとしたら、今度は中退するって言い出して聞かないらしい。って、田島先生から電話なかったか? 家に留守電入れたけど、連絡取れないって言ってたぞ」


「いや、知らな……あっ、歩のやつ」


 歩が消去したとしか考えられない。


「まぁ、一度、家族で話し合って、必要なら三者面談した方がいい。ご実家の家業の方はどうなんですか? って、田島先生もオレに聞かれてもなぁ……保護者のおまえのことは嫌ほど知ってるけど、歩ちゃんのことはよく分からないからなぁ。てか、オレ、全日制の教諭じゃないっての」


 工藤は肩をすくめる。


 道人は深刻な表情で黙ったまま店へと入って行って出て来ると、


「これ、彼女さんの好きな〝きつね寿司〟持って帰って下さい。あと良かったらおはぎも」


「ん? あぁ、別にいいのに。気を遣うな。って、おい、こんなにもらえない」


「いえ、遠慮なく受け取って下さい。今日はすみません、歩がお世話になりました。ありがとうございました」


 いつになくしおらしい態度で礼を述べる道人に工藤は、いつも嫌がる頭をグシャグシャ撫でてみるも、されるがままで「ダメだ、こりゃ」と、歩よりも道人を心配する。

 運転席のドアを開け、「じゃあ、お大事にな。これ、ありがとな」言って乗り込むと走り去って行った。


「ええ先生げなのぅ」


 気づけば隣で岩次郎(がんじろう)が立っていた。道人は息を吹き返したかのように、


「あんた、いつ来ていつまで居座る気だよっ。もう隣の垣根ぶっ壊してやるぞ!」


 岩次郎は隣同士のご近所さんだった。すぐ目と鼻の先の隣なので、帰るも何もないのかもしれない。道人は岩次郎を放ったらかしにして、家の玄関へと向かった。おはぎの勘定をも忘れたままに。


 靴も脱ぎ散らかして玄関に上がると、台所に歩は立ち米を研いでいた。


「なにやってんだ」


「ご飯だけ炊いとくから、レトルトのカレーでも食べてくれる?」と、炊飯器にセットする。


「そんなことどーでもいいから、大人しく休んでろっ」


 言うや、歩の肩と背中を支えるように押して部屋へと連れて行く。「ちょ、ちょっと。離して」その腕を振り払うと、歩は自力で自室のある二階へ続く階段へと上った。


「夕飯、食べれそうか? 雑炊でも作ってやろうか?」


「自分でテキトーに食べるから。もうみんなして人のこと病人扱いしないでよ」


 口は達者だが、顔色は良くない。「ちゃんと休むから、心配しないで。出てって」ピシャリと言い切り、追い払われる。道人は言われるまま部屋を退室するしかなかった。


 そこへ、トトトッと、いつの間にやらタヌキがやって来る。歩を心配してか、部屋の入口でウロウロと回る。


「おいで」


 歩が呼ぶと、部屋に入るタヌキ。

 タヌキは良くて、自分はまるで邪魔者扱いになのに道人が嫉妬をしていると、「部屋のドア、タヌキが出入りするから少し開けておいて」だった……。


読んで頂きありがとうございました!


次々、

道人がピンチに…

でも無事に乗り越えていきます!


毎日、更新中です。

よろしければ星マークや感想を頂けると励みになって嬉しいです。

よろしくお願いします。

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