3-2-7 俺はライバルと勝負を持ち掛ける
健一郎が栗栖家に行ってる間に始まった親同士の勝負についての話です。
ピーンポーン
「ん?誰だ?こんな時間に」
健一郎が出かけた後、書類の処理をしていたら誰か来たようだ。
ガラガラ
「やあ」
「お前は・・・・・!」
玄関まで行きドアを開けると綾瀬典史がそこにいた。
「何しに来た」
「ご挨拶だなあ。久しぶりに来たというのに」
「けっ」
俺は
「今日は話をしにきた」
「話だ?」
「ああ、お前の息子のことでな」
「ちっ。とりあえず上がれ」
俺は典史を自分の部屋にとりあえず通す。
「お前、最近娘を使ってあいつにちょっかいかけてるようだな。
まさかあの頃の意趣返しのつもりか?」
典史が俺と対面して座った瞬間俺は健一郎に娘が近づいてる理由を訊く。
が、
「まさか。娘は関係ない」
と、あくまであの娘は関係ないと言い切る。
「あくまでシラ切るか」
「シラを切る?とんでもない。本当だ」
俺は典史の言い草に若干ムカつきながらも話を進める。
「で、俺に話ってのはまさかアイツをよこせって話か?」
「そうだ。話が早くて助かる」
「なら答えは一つだ。あいつはやらん」
俺は典史に息子のことに関して話はないという意思を示す。
「冷たいなぁ」
「冷たくて結構だ。そもそも何のためにあいつが欲しいんだ」
何の目的
「彼にはうちのタイヤの宣伝をもっとやってもらいたいのでね。
あとはうちの会社の跡取りとしても欲しいんだよ。
うちの娘が彼の心をものにすれば棚からぼたもちで一石二鳥ってわけだ」
「結局てめぇのためじゃねぇか。それならなおさらやれないな」
俺の言葉に典史は
「彼が誰と結婚するか、誰のもとに着くかは彼の勝手だろう?巌が決めることじゃない」
痛いところを。だとしても健一郎は親友の忘れ形見。
あいつをダーティプレイが大好きなこいつのもとにやるわけにはいかない。
「あいつには俺の跡を継いでもらうつもりでな。あいにくだが予約はすでに埋まってる」
「さっき自分で言ったことを覚えてるかい?ブーメラン刺さってるよ」
「そうだな。だとしてもお前みたいな腹ん中がサヨリよか真っ黒なやつには渡す気はない」
俺は典史にはっきりと意思を伝える。
「そうかい。とするとうちの娘と結婚すると彼が言い出したら反対するんだね」
「ああ」
「それが果たして彼の幸せに本当につながるのかな?」
典史が俺にゆさぶりをかけてくる。が、その手は典史がいつも使う手だ。
「じゃあ逆に訊くが、お前の家に健一郎が婿入りすれば本当に幸せか?」
「ああ。うちにはいくらでもレース活動ができる資本があるからね。
そっちはそこまで余裕はないだろう?巌の質問の答えはその時点で明白だ」
こいつの視野の狭さは相変わらずだな。
まぁいい。そこはあえて突っ込まないほうが後々面倒にならない。
「ふん。なら俺がそうではないことを証明してやるよ」
「それは僕に対しての挑戦状かい?いいだろう。受けて立とうじゃないか」
しめた、食いついてきた。
こいつは自分が間違っていると言われると自分の正しさを証明するために簡単に挑発に乗るからな。
教えてやる。お前の考え方とやり方は今の時代には通じないってことを。
「じゃあ今回の勝負は健一郎を娘と結婚させたほうが勝ちってことでいいか?」
「いいよ。それで、条件はどうする?巌が決めていいよ」
典史が俺に条件に付いて聞いてくる。
俺が決めていいならこういう条件にするか。
「俺と典史は直接健一郎に何も手を出してはならない。
それ以外は何でもしていい。これでどうだ。
細かく決めても結局やったやってないの水掛け論になるのは前に見えてるからな。
これくらいシンプルなほうがいいだろう」
「僕としては願ったりかなったりだね。僕もその条件を呑もう」
典史はあっさりと俺の出した条件を呑む。
後悔するなよ、その言葉。
「明日勝負開始としよう。俺の息子は絶対やらんからな」
「何としてでも彼をうちに婿入りさせてみせるよ」
俺と典史はそう言い合った後、
「じゃあ今日はこれで帰ってくれ」
「わかった。それじゃまた」
そう言って典史はうちから去っていった。
まあ十中八九あれで俺の勝ちは確定だ。
典史、この勝負を受けたことをお前は絶対後悔する。
さて、書類の片づけをせねば。
俺は机に積まれた書類のとの格闘をその後も続けた。
誤字・脱字報告はお気軽にしてしてください。
確認次第修正を行います。




